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トヨタとホンダのドライバーを減らしたいと…近藤真彦JRP会長が爆弾発言!【タキ井上の帰ってきたブラックフラッグ】

トヨタとホンダのドライバーを減らしたいと…近藤真彦jrp会長が爆弾発言!【タキ井上の帰ってきたブラックフラッグ】

近藤真彦JRP会長

トヨタとホンダのドライバーを減らしたいと…近藤真彦jrp会長が爆弾発言!【タキ井上の帰ってきたブラックフラッグ】

タキ井上の帰ってきたブラックフラッグ

 先日、具体的には5月12日なのだが、タキ井上がネットサーフィン(死語…汗)をしていたら、とんでもない記事にぶち当たり後ろへひっくり返った。それはmotorsport.comのグローバル・サイトに掲載されていた、“Super Formula boss wants fewer Honda, Toyota juniors in future.(スーパーフォーミュラのボスは、将来的にホンダとトヨタのジュニアを減らすことを望んでいる)”というタイトルの記事である!

 しかし、なぜか知らんけど、この記事は日本語サイトに翻訳されて掲載されていないようで…(汗)。まあ、諸般の事情というヤツなのだろう。「危ない記事」であると日本の編集サイドが判断したものと思われる。

 話を戻すと、このタイトルに続くリードには、“Super Formula chairman Masahiko Kondo says he wants to see Honda and Toyota using fewer of its junior drivers in the series in future seasons.(スーパーフォーミュラの近藤真彦会長は、ホンダとトヨタが将来、このシリーズで自社のジュニアドライバーを使う人数を減らすことを望んでいるという)”と書かれている。

 つまり、近藤JRP(日本レースプロモーション)会長は、トヨタとホンダがカネとモノを供給しているからこそ青息吐息で存続している、全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)の大改革を宣言したものと受け取れる。

 しかし、ぶっちゃけ今のSFはトヨタとホンダのシリーズスポンサードという恩恵を受けているだけでなく、2社がエンジンを供給しているからこそ崖っぷちでギリギリ成立しているシリーズだ。言い換えれば、トヨタとホンダの企業共同イベントレース大会なのである(汗)。

 具体的な話として、トヨタとホンダは自社のエンジンを使ってくれるチームに対して、自社のドライバーを推薦して振り分けている。受け入れてくれればその引き換えとして、自動車メーカーは1シーズン分のエンジンリース代金に相当する約2000万円弱(?)の支払いをチームに要求しない、つまりチャラにする仕組みになっているらしい。

 もっとも、トヨタやホンダのエンジンは手続き上、JRP経由でチームへ供給される形式を採っており、お金の流れもそれに沿っていると思われる。ただし、実際のところトヨタやホンダのエンジンは、JRPを介さず直接チームへ運び込まれる段取りとなっている。

 さて、記事の中で近藤JRP会長はさらに攻めた発言を残している。

 “I want the series to welcome more and more talented foreign drivers. That’s something we also have to request to Honda and Toyota. (シリーズにはより優秀な外国人ドライバーをどんどん迎え入れてほしい。それはホンダにもトヨタにも要望していかなければならない)”と。

 “I don’t want the manufacturers to use Super Formula as a training ground for their young drivers with an eye on the future, rather I want to make the here and now more exciting.(自動車メーカーにはスーパーフォーミュラについて、将来を見据えた自社若手ドライバーの育成の場として使ってもらうのではなく、いまここをもっと盛り上げて行きたいのです)”

 さらには、“I want to make an environment so the manufacturers say, `wouldn’t it be best to sign that foreign driver?’ Maybe that’s not something we can achieve immediately, but I want to do it gradually. (あの外国人ドライバーと契約するのが一番良いのではないか? とメーカーが言うような環境をつくりたい。すぐに実現できることではないのかもしれませんが、少しずつやっていきたいですね)”

 近藤JRP会長自身、SFやスーパーGTでKONDO RACINGの監督/代表を務めており、自動車メーカーの金銭的および物質的な支援が無ければレース活動が成立しない現状を理解しているはずだが、それでも彼が業界へ一石を投じる発言をせざるを得なかった背景に、不肖タキ井上は考えを巡らせてもみた。

 うーん。やっぱり無理筋じゃないかなと僕は結論付けるに至った。まず、SFに参戦可能なくらいの腕を持つ外国人ドライバーは、すでにFIA―F2やFIA―F3に参戦している。あるいは米インディカーシリーズを目指せるシリーズや実際にインディカーシリーズへ参戦している。

 そうした彼らをSFへ振り向かせるには、FIA―F3やFF2を経てF1を目指すドライバーをSFへ誘導するには、国際自動車連盟(FIA)が規定しているF1参戦に必要なスーパーライセンスポイント制度の是正にJRPが尽力しない限り話は始まらない。日本のSFで王座に就いても、単発だけでスーパーライセンス獲得の一条件を満たせないのであれば、全く魅力的ではないからだ。

 現状、SFのスーパーライセンスポイントは欧州のフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FREC)と同等。つまりF2やF3よりも下位に相当する、有象無象が集まる若手ドライバーが参戦しているシリーズと同じと、FIAが判断しているわけだ。せめてインディカーシリーズと同じくシリーズ王座に就けばスーパーライセンス獲得の一条件を満たせるくらいにまで格上げされない限り、近藤JRP会長が言わんとするSFの世界的な地位向上は見込めないだろう。

 しかも、である。F2やF3はブルーノ・ミシェルが率いるフレンチイタリアンのグループが取り仕切る集金装置のシリーズある。彼らは、F1を目指す裕福な若手ドライバーを世界から積極的に呼び込むべく、“F1へ参戦するにはこれらのカテゴリーへ参戦するしかないぜ!”という枠組みを作り、同時にFIAへプッシュしてスーパーライセンスポイントを相対的に優位にした。

 こうした仕組みを作り上げてウハウハのミシェルにしてみれば、極東の島国で開催されているフォーミュラカーレースやその会長が割り込んでくるのは邪魔な雑音でしかない。ミシェルは日本でのこうした動きを全力で排除するだろうし、世界的なレース界における経験が浅い近藤JRP会長が太刀打ちできるとは思えない。

 しかも、トヨタやホンダのSFに対する影響力までそごうとする、彼の考えは危ういとさえ言えるだろう。

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