BMW i7は現在、販売されている電気自動車(EV)の中で最も優れたクルマといえる。 今回は、先月試乗した「i7 XDrive60エクセレンス」というBMWフラッグシップ・モデルを評価しよう。
ロールスロイスの次ぐらいに優れているにもかかわらず、その顔は決して美しいとは言えない。僕が好めないのは、モンスターグリルと2分割ヘッドライトを備えた真正面からのビューだ。正直なところ、同車はエンジンがないEVなので、(ラジエーターに風を通す)グリルの必要はない。
でも、どのカーメーカーも、やはりブランドイメージ向上とアイデンティティ強化を目指しているので、最近はより目立つグリルのデザインに夢中のようだ。最初、運転した時にふと思った。前方の車のドライバーがルームミラーでi7のグリルをパッと見たら、怖くて退きたくなるだろう。
BMW i7は世界で最も優れた電気自動車だけど……。
いっぽう、i7の側面はかなり平坦で、21インチのホイール、銀と紺色のツートーンボディ色、キューっと引き締まったテールの部分は気に入っているけどね。だから、真横から見れば、不快な思いをしないで済むだろう。
ただ、100kWh超の電力量をもつバッテリーは、今の日本の充電インフラだと短時間では80〜100km分しかチャージされないし、ある意味で小型EVより購入のハードルは高い。テスラ・モデルSほどは速くないけど、0−100km/hの加速は4秒超なので、決して遅くはない。でも、まあまあ速いだけではなく、乗り心地もしなやかだし、とにかく静か。また、ステアリングは軽いけど、ちゃんと路面からのフィードバックを拾っているので、高速コーナーであまりロールしないのは気持ちがいい。
でも、皆はそのコワい顔とか走りや性能より知りたいのは、豪華なインテリアだろう。いつもだと運転席から話を始めるけど、今回の目玉は後部席なので、そこからスタートしよう。
ドアハンドルのところに埋まっている小型タッチスクリーンの「展開」ボタンを押すと、巨大な天井スクリーンが動き出す。
まず、ハンス・ジマーが作曲したユニークな効果音が流れ、サイドウィンドウ、リアウィンドウ、ガラスサンルーフのブラインドが静かに閉じると、天井に取り付けられた31.3インチの8Kタッチスクリーンが視界にすべり込む。
ドアノブの液晶からディスプレイの開閉を操作する。
ディスプレイが開いている状態。
また、スクリーンを「展開」すると、ドライバーはバックミラーからの視界を完全に奪われる。奇妙なことに、BMWはバーチャルミラーを装着しないことを選択したが、その理由がわからない。(ただし、将来的に装着する可能性があることを非公式だが示唆している)。
さらに、Amazon Fire TVの機能を搭載しているため、ゲームやNetflixやYouTubeなどの人気アプリを使った番組や映画の視聴が可能で、オンボード5G接続を利用した圧倒的な美しさに驚く。
iシリーズの大型一枚パネルとシンプルで高貴な印象のインテリア。
後部シートは文句なしの広さ。
ところが、後部席(運転席もそう!)に乗るのに、電動ドアのため、ボタンを押さない限り、ドアを開けられない。最初は「凄い!」と思うけど、10回ぐらい乗り降りしていると、めんどくさくなる。シートに座ったまま、ドアの「展開」ボタンを押して、ドア内のモーターが動き出して、ドアが開く。これで、このクルマは究極へのEV車のような存在だと思った。
電動ドアと大型スクリーンは技術的には素晴らしいし、友達に見せると自慢話ができるけど、しばらくすると飽きてくる。ボタンを押すとドアが電動で開く冷蔵庫を想像してみて欲しい。最初のうちは「オー!」と感動するけど、少し経ったら自分でササッと開けたくならないか?
この究極のBMWは、技術的なショーケースとしては最高で、高級車としては姉妹会社のロールスロイスに勝るとも劣らず、EVとしては未来のショーケースとして説得力がある。ただ、その顔だけ何とかして欲しかった。