昭和感ある? クルマの「押しがけ」
かつてはバッテリー上がりなどでエンジンがかからなくなった際の対処方法として「押しがけ」と呼ばれる緊急手段がありました。
最近ではあまり見かける機会が少なくなりましたが、現在のMT車でも押しがけができるのでしょうか。
かつて見かけたMT車での押しがけ。現在のMT車では押しがけしてもいいの?
かつて見かけたMT車での押しがけ。現在のMT車では押しがけしてもいいの?
バッテリー上がりはライト類や室内灯の消し忘れ、バッテリー自体の性能低下などが原因となり発生します。
また、たまにしかクルマに乗らないという人がバッテリー上がりを起こし、いざという時にクルマに乗れないということもあります。
昔からバッテリー上がりを起こした際に、エンジンをかける緊急手段として「押しがけ」という方法があります。
押しがけとは、エンジンを始動するセルモーター(スターターモーター)の代用として、人力でクルマを押しつつ、タイヤからの回転を利用してエンジンを始動させる方法です。
エンジンが始動すれば、オルタネーター(発電機)が電気を作り出すため、バッテリーの電圧が低い場合でも、エンジンが回転し続けることができます。
押しがけの手順は、まず運転手が運転席に座り、キーを「ON」にしクラッチを踏みます。
そして、ギアを2速に入れた状態でもう1人にクルマを後ろから押してもらいます。人がはや歩きするくらいの速度まで加速したらクラッチペダルを離します。
なお、下り坂などで重力を利用してクルマを動かせる状況でも同様に押しがけができます。
また、クルマのシステム上、押しがけはMT車でなければ実施できず、AT車ではできません。
AT車に押しがけができない理由としては、動力を伝達するトルクコンバーターが関係しており、エンジンと車軸(ドライブシャフト・プロペラシャフト)が直結しないと不可能な作業になるためです。
押しがけは今のMT車でもできる?
それでは、最近のMT車では押しがけができるのでしょうか。過去にとある国産メーカーの担当者は次のように話していました。
「昔はイグニッションスイッチを、エンジンキーを挿して回すタイプでしたが、現在のモデルはボタンひとつでエンジンを始動するプッシュスタート式のスイッチがほとんどのため、現行モデルの乗用車ではほとんどできないと思います。
トラックなどのMT車にも取り扱い説明書にはしないでくださいと記載しています」
また、別メーカーの担当者は「取り扱い説明書ベースの回答になりますが、現行車では押しがけできません」と話しています。
基本的にクルマのトラブルはロードサービスなどを呼んで対処してもらうのが望ましい
また押しがけ可能なひと昔前のクルマにおいても、押しがけ自体は危険な作業となり、エンジンが停止している状態でクルマを動かすため、ブレーキの倍力装置やパワーステアリングが正常に作動しないリスクがあります。
また、エンジンがかかってもすぐにクラッチを切らなければクルマが進み続けてしまうなどの危険もあります。
そのため、もし自分のMT車がバッテリー上がりにより走行不能となった場合には押しがけせずに、他のクルマに救援してもらい、ブースターケーブルを使用して電力を供給してもらうのが良いでしょう。
もし、自分ではどうしようもできない状況であれば、ロードサービスや任意保険のサービスの利用を検討してみましょう。
リスクを最小限に抑えつつ、安全にクルマの復旧作業を行うことが重要なポイントです。
※ ※ ※
現行のMT車でも押しがけによりエンジンがかかる可能性はありますが、取扱説明書やオーナーズマニュアルには、押しがけ作業自体を禁止もしくはNG行為としています。