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不動車のホンダ「ベンリイC92」をエンジンのプロがレストア!? まずはベンリイC92のエンジン特性から時代背景を徹底解説【vol.1】

前オーナーの思い入れが詰まったオプション装着車

 前オーナーが若い頃に乗っていて、いつかまた乗ろうと大事に保管してきたものの、そのまま40年以上が経ってしまい、体力的にもう乗れないとの事情で自分のところにやって来たホンダ「C92」。

 乗らなくなって暫くは、たまにエンジンをかけていたそうですが、それが原因でマフラーに水がたまり、穴が開いてしまったとのことで、現在は不動車です。

【画像】不動車となったホンダ「C92」をレストアを見る(11枚)

 そんな年季の入ったベンリイC92のレストアを通して、まずは歴代エンジンの特性をご紹介します。

不動車のホンダ「ベンリイc92」をエンジンのプロがレストア!? まずはベンリイc92のエンジン特性から時代背景を徹底解説【vol.1】

レストアを行う不動のホンダ「ベンリイC92」

レストアを行う不動のホンダ「ベンリイC92」

 今回レストアする事になったベンリイC92は1961年頃の車両で、排気量は125㏄の2気筒エンジン、電装は6Vでミッションは4速ロータリー。リアサスや外装類のデザイン的な特徴から「神社仏閣」と呼ばれ、発売当初はプレスハンドルだったのがモデルチェンジしてパイプハンドルに変わった時期のもの。

 普及型スポーツタイプのベンリイCS92と同形状のダブルシートやレッグシールド、リアキャリア等のオプションパーツが取り付けられています。

 特徴的な装備としては別体式のストップランプで、6Vで暗いストップランプは夜の信号待ちで気付かれず追突される事故が多かったのだそうです。

不動車のホンダ「ベンリイc92」をエンジンのプロがレストア!? まずはベンリイc92のエンジン特性から時代背景を徹底解説【vol.1】

レストアをおこなうホンダ「ベンリイC92」と同年代にラインナップされていた「ベンリイCB92 スーパースポーツ」

レストアをおこなうホンダ「ベンリイC92」と同年代にラインナップされていた「ベンリイCB92 スーパースポーツ」

 同時期にはアップマフラーの「ベンリイCS92」や、「ベンリイCB92スーパースポーツ」などがラインナップされていました。

 そんなベンリイCB92は一見すると外装以外、ベンリイC92と大して変わらない様に見えますが、市販レーサーとしての役割も担っていたこともあってエンジンは、より高回転に対応する為にクランクが2点支持ではなく3点支持の別物となっており、4速ミッションでありながら最高速度は130km/hという高性能ぶり。

 何よりホンダの代名詞とも言えるCBという名称が、初めて採用された歴史的なモデルです。

 そしてベンリイCB92は1964年に「ベンリイCB125」へとモデルチェンジされ、センターカムチェーン&4点支持クランクにツインキャブを組み合わせた新設計エンジンが採用されましたが、ベンリイC92は1966年に「CD125」にモデルチェンジされてもエンジンは従前のサイドカムチェーンのままで、主にヘッド周りのみが変更されました。

 また、意外な事に、このタイミングで行われたベンリイCB125へのモデルチェンジでは、ベンリイCD125と共通の腰下にツインキャブが組み合せられた物に戻されたのです。

 そこには125㏄というカテゴリの市場規模は他と比べて小さく、そのクラスに同じ形式のエンジンを2種類製造する事がコスト的に困難というメーカーの事情と技術者の葛藤が観て取れます。

 その後ベンリイCB125はシリンダーの前傾角が起こされたり、ミッションを5速化したりと改良を受けながら、1977年に再度センターカムチェーン採用の新設計エンジンとなる「ベンリイCB125T」に引き継がれるまで生産され続けました。

現代の道路事情に合わせてC92をモディファイ

 ベンリイC92は北米にもCA92という名称で輸出されていましたが、1961年当時の日本にはバイパスなどは無く、至る所に未舗装の砂利道があったため巡行スピードが低かったのに対し、国土が広く道路整備の進んだアメリカでそのまま同じ車両を使用すると、耐久性や信頼性に懸念が出ることは想像に難くありません。

 高い巡航速度での連続走行に対応する必要があった為、北米版のエンジンはCB92と同じ3点支持クランクでした。

不動車のホンダ「ベンリイc92」をエンジンのプロがレストア!? まずはベンリイc92のエンジン特性から時代背景を徹底解説【vol.1】

不動のホンダ「ベンリイC92」のモディファイには「ベンリイCD125」のヘッドを利用

不動のホンダ「ベンリイC92」のモディファイには「ベンリイCD125」のヘッドを利用

 同様に現代日本の道路事情は当時とはまるで違っており、C92をそのまま再生しても交通の流れに乗って走らせるには耐久性に懸念があります。

 そこで今回のベンリイC92のモディファイは、後年式のエンジンのいいとこ取りをする事により、ミッションの5速化、シリンダーのアルミバレル化、ベンリイCD125のヘッドを利用してのビッグバルブ化と高性能キャブレターのマウントを行ったうえで、12V化したエンジンを作っていきます。

 とはいえ、このベンリイC92というバイクは60年も前の車両なので、当然メーカーからの部品などが手に入る筈もありません。

 しかし、現在タイで大人気になっているらしく、ありがたい事に色々なリプロパーツが作られ、日本でも入手可能です。そういったリプロパーツも上手く利用しつつ、これから年代に見合ったオリジナリティのある外観にレストアカスタムを行っていきたいと思います。

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