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「2022年に日本で一番売れたクルマ」HondaのN-BOXに乗ってわかったその理由

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N-BOX Custom(取材車は199万8700円)

 日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会によると、2022年の国内新車販売台数の総計は前年比5.6%減の420万1321台。4年連続のマイナスとなりました。では、その中で最も売れたクルマは? というとHondaの「N-BOX」です。その数は20万2197台で、日本全体での販売台数の5%を占めます。

 ちなみに乗用車の首位はTOYOTAのヤリスシリーズ(16万8557台)ですが、ヤリスが前年に比べて販売台数が落ちているのに対して、N-BOXは前年比107%と好調。そこで2022年に一番売れたクルマに触れてみることにしました。

19種類というコーディネートの多さも人気の秘訣

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N-BOXの販売台数の推移 ※https://www.honda.co.jp/news/2023/4230111a.html

 確かにN-BOXを見かけない日はありません。というのも、フルモデルチェンジをした2017年から軽自動車の売り上げNo.1の座に就き続けているのです。四輪全体を見ても、2021年を除いて売り上げNo.1。気づけば230万台を売っているわけで、それは見ない日はないのも当然といえます。

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N-BOX(左)とN-BOX Custom

 ということで、HondaにN-BOXをお借りしようとしたところ、「どれにしますか?」と候補がいくつか。N-BOXは、大まかに「N-BOX」と「N-BOX Custom」の2種類があり、その中でFFと4WDという駆動方式の違い、自然吸気エンジンとターボエンジンの違い、さらにコーディネートスタイルをはじめとした仕様違いあるとのこと。その数なんと19種類!

 もちろん、そのすべてが用意されているわけではないのですが、それでもいくつかの名前があって、もはや何が何やら。とりあえず「Customというのが一番よさそう」という根拠なき理由から、「N-BOX Custom L・コーディネートスタイル」をお借りしました。こちらは自然吸気エンジンのFFで、お値段199万8700円(税込)となります。

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 CustomとノーマルN-BOXとの価格差は約20万円。その違いは多岐にわたりますが、目を惹くのはフロントバンパーとヘッドライトまわりでしょう。ノーマルの愛くるしい表情もイイですが、つり上がった目にメッキ加飾、そして専用色(ミッドナイトブルービーム。メタリック&シルバー)と相まって、イマドキのミニバンみたいな「ドヤ感」が魅力的。このドヤ感、嫌いじゃありません。

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パワースライドドアを開けた様子

 N-BOXは、後席にスライドドアを装備する、軽スーパーハイトワゴンと呼ばれるジャンルのクルマ。スズキ、ダイハツ、三菱、日産からも魅力あふれるクルマが投入されているレッドオーシャンです。その中でN-BOXが2012年以来高い支持を受け続けているのはどうしてなのか? というのが本稿のテーマだったりします。

ハイトワゴンらしい広々とした車内

荷物もたっぷり載る!

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 まず、大きなテールゲートを開けて荷室を見てみましょう。まず地面から47cmという床面の低さが印象的。これは大きな荷物を積載する際に実に重宝します。広さに関しては、後席全体が前に19mm可動できるのですが、日産&三菱連合の方がさらに可動域が広く、そちらを見ると「ちょっと狭いかな」と思ったりも。ですが、後席を倒してしまえばどちらも同じ印象で、自転車だって積むことができます。つまり不満ナシ。個人的には荷室に12Vアクセサリーソケットがあれば、運転中にキャンプなどで便利なポータブルバッテリーが充電できるようになるので、さらにうれしかったりもしますが……。

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 ですが実際に使ってみると、意外とテールゲートを開けることがなかったりします。というのも、買い物をした際、テールゲートが大きいがゆえに、駐車場によっては後部が狭くて開けることができない時が多々あったのです。つまり現実的には後席に荷物を載せることが圧倒的に多いのです。

 そのような荷物を載せる際に便利なのが、後席座面を跳ね上げる(チップアップ)です。これはFITなどにも用意されている機能ですが、後席=荷室として使う際、一気に使い勝手がよくなるのです。「座面に荷物を置けばイイ」という声も聞こえそうですが、汚れた荷物とか座面に置きたくないですからね。

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 さらにフラットな床面と高い天井が、実にありがたいのです。荷物をガンガン積んでくれ、といわんばかり。実はお借りしている時に園芸店に立ち寄り、高騰する食費対策のためレモンの苗木を購入したのですが、高さ1mをゆうに超える8号(約24cm)鉢の苗木も、枝を折ることなく収納できたのです! 足元が狭く、そして天井の低いコンパクトカーやセダン、SUVではこの芸当は難しいでしょう。帰路の車内は天然の芳香剤でよい香りでしたし、高い苗木の送料を払わずに済みました。

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 単に後席に荷物が載るだけなら、ほかの軽ハイトワゴンでもできることかもしれません。ですが、本来後席は人が座るための場所。N-BOXは、その面においても抜かりはありません。運転席と助手席の背もたれにはテーブル、窓にはプライバシーシェードがあり、オットマンや足置き場があれば新幹線のグリーン車よりも快適な空間といえるかも。

 さらに床面が低く、ドアの開口部が広いので、お年寄りや子どもが乗るのに好適なのです。実際に母の通院に使ったのですが、母は乗降しやすいと喜び、ちょっとだけ親孝行をした気分に浸りました。

使い勝手を優先して考えられた運転席

収納もインフォメーションも使いやすく配置

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 運転席まわりはシンプルそのもの。メーターパネルは奥にあり、その手前に小物を収納するスペースが用意されています。写真はハンドタオルが入っていますが、こちらは財布などを入れるのに便利。メーターパネルはシフトポジションと燃料計を中心に左に速度計、右にエンジン回転計を配置。エンジン回転計の左側にインフォメーションディスプレイが置かれています。インフォメーションとしては、ナビやクルーズコントロールの設定画面が出るのですが、これらはメーターパネル中央にあった方が便利だと感じました。

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 運転席右側に目を向けると、パワーボタンのほか、パワースライドドアの開閉、車線監視機能のオン/オフなどのスイッチが並びます。ドアの内張にはウッド調の小さな加飾パーツが配置されているのですが、これが良いアクセント。チープな印象を払拭しています。

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 バイザーの裏側にはミラーがありますが、フタはイマドキのクルマに多いスライド式ではなく跳ね上げ式。ルームミラーの上には室内灯のみ。SOSボタンは用意されていませんでした。ここら辺に2017年フルモデルチェンジの古さを感じました。

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 右手の操作系に目を向けましょう。パーキングブレーキは電子式で、その隣にはECONと呼ぶエコモードやオートブレーキホールドの切り替えスイッチが並びます。シフトはレバー式。近年のHondaは、エンジン車はレバー式、ハイブリッド(e:HEV)はボタン式で、スティック式はFREEDのみかなと思います。

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 助手席側にはトレイがあり、そこにはUSB Type-Aのレセプタクルが3系統も! スマホのほか、モバイルバッテリーが充電できますし、トレイなのでその上にスマホたちが置けるのは実に便利この上ナシ! エアコン操作パネルは直感的でわかりやすいもの。その下には車内で出たゴミなどを入れるのに便利な、小物入れが用意されていました。

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 取材車の8インチ純正ナビゲーションはApple CarPlayのみに対応。Android AUTOには非対応で、Androidユーザーが音楽を聴く場合はBluetooth通信のみ、となりそう。ちなみに最近9インチのナビが発売され、こちらはAndroid AUTOに対応しているとのことです。

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 視界は広く、ダッシュボードの面積が少ないので、映り込みも少ないのが美質。助手席側のAピラーにミラーがあり、左のタイヤ側などが見えます。最初「これイラナイんじゃない?」と思ったのですが、あるとあるで、車庫入れなどで便利だなと実感。ということで、実際に運転してみましょう。

自然吸気エンジンなのでトルクフル

背の高さのわりにフラつかないのもGood

 まず思うのが、意外にも静かということ。相応にエンジンやらエキゾーストの音は聴こえるのですが、それが低く力強さを感じますから、踏み込んでも耳障りな感じを受けづらいのです。

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 自然吸気エンジンなのにトルクフルであることも美質。もちろん相応に踏む必要があって、発進時は5000回転まで上がりますし、そのくらいは踏まないと、街乗りだと流れに乗らないところはあります。ですが、「いかんともしがたい」ほどではありません。

 ビックリしたのは、安定感の高さと乗り心地のよさ。「重心が高くてフラフラしそう」と思っていたのですが、全然そのようなことはなく。意外と重心は低く、細かな振動は綺麗に吸収する足とコンパクトさと相まって、実に運転しやすいのです。

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 さらに驚いたのは高速道路。法定速度域なら全然余裕ですし、車線・車間監視の運転支援がついているのでラク! しかも静か。視界の広さ、足の良さ、運転姿勢の良さもあって、疲れが少ないのです。軽ハイトワゴンは街乗りのクルマと勝手に思っていたので、これは意外でした。

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 高速道路8割、市街地2割の走行でリッター19kmという燃費の良さ。最近のハイブリッドユニットを搭載するコンパクトカーには劣りますが、この数字は立派でしょう。ただ、都心部などストップ&ゴーを繰り返す場所では燃費は悪くなる傾向にあります。その場合はターボモデルを検討した方がいいかもしれません。逆に信号が少ない地域がメインなら、自然吸気エンジンがいいかも。

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 峠をガンガン走るクルマでもないですし、グランドツーリングを楽しむクルマでもありません。ですが「普段乗りのクルマは、コレで十分じゃないか」と思ってしまうほど、大きな不満を抱かせないところがN-BOXの魅力。「不満がないことが不満」なくらいです。この取材と前後して、N-BOXが6台も買える価格のクルマをいくつか試乗したのですが、それらのステアリングを握りながら「確かにイイけれど、使い勝手を考えたらN-BOXかな」と思ってしまったことを正直に告白します。

 なるほど、売れる理由は「コレで十分」と思わせる完成度であり、それがクチコミや「みんなが乗っているから、N-BOXにすれば間違いない」という安心感や支持を受けているのでしょう。

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