電気自動車(EV)の普及がいよいよ本格化し、ほぼすべての自動車メーカーが10年後までにラインアップの50%以上をEVに切り替えると発表している。しかし、この大きな変革には1つの大きな問題がある。それはEVの高価格でもなく、航続距離の不安や電欠の恐れでもない。それは、既存の充電ネットワークが不十分なことに関係している。
予想外の動きだったが、先月、アメリカで、フォード社はテスラ社の広範なスーパーチャージャー・ネットワークに統合するための両社提携を発表した。2025年から、フォードは次世代電気自動車に、現在北米充電規格(NACS)として知られているテスラ・プラグを採用する予定。実は、このニュースは日本にも関係している。詳細は後程、お伝えしよう。
実は昨年、北米での業界標準とするために、テスラ社は独自の充電コネクタを開放してテスラ以外のブランドにも使わせることを決定。フォードとの契約は、この後に行われた。この発表は当初、業界で懐疑的な目で見られたが、今回のフォードとの提携は、テスラの戦略が功を奏する可能性を示唆している。来年から、フォードEVのオーナーは、米国とカナダで12000基以上のテスラ・スーパーチャージャーを利用できるようになるという。
アラスカにあるスーパーチャージャー。米では広く普及するテスラのインフラ。
フォードがテスラの充電技術を採用したことで、EV充電の未来をめぐる戦いが劇的にエスカレートしている。これはライトニング対USB-C、VHS対ベータマックスのような標準化戦争に匹敵する戦いになぞらえられる。EVの充電が、ガソリン車の給油と同じように簡単にできるようにならないと、EVは主流にならないからだ。
そのとおり。EV環境が問題だ。ここから話が難しくなっていくだろうと思った読者もいるかもしれないけど、ここでは話を思い切りシンプルにしよう。問題は充電環境。つまり、充電の「速度」だ。どう見てもテスラは業界でダントツのリーダーになっている。同社が独自に整備している急速充電インフラである「スーパーチャージャー」は、最大出力250kWで充電ができる。
先日、テスラの日本プレス担当に聞いたところ、現在、欧米でテスラは同社の車以外のEVにも、スーパーチャージャーを使わせようという動きは始まっているけど、「近々、日本でも日本車もドイツ車のEVなども、テスラのスーパーチャージャーが使えるようになります」という。現在、日本全国にスーパーチャージャーが70か所にあって、トータルで300基以上ある。
静岡県焼津にあるスーパーチャージャー
正直なところ、現在、多くの日本のEVは満充電の場合、WLTCモードで400kmぐらいしか走らない。しかし、テスラのモデル3は業界リーダーだ。ベース仕様でも、同モードで565kmが出るし、パフォーマンス仕様は605kmは走れる。しかも、ロングレンジ仕様なら689km。モデル3は、とても高く評価しているし、この価格帯ではベストだけれど、強いて言えば、これは重い車重なのでブレーキを強化して欲しいところ。
高い評価を受けるテスラ「モデル3」
やはり、EVが主流になるには、充電環境がグーンと進歩しなければならないだけでなく、EV自体も現在のガソリン車ユーザーの期待に答えなければならない。つまり、普通のガソリン車は満タンで500km以上は走行できる。EVも500km以上にならないと、多くのガソリン車のユーザーはEVに見向きもしないのではないか。
最後に価格の比較をしよう。公称470kmが出る2輪駆動の日産アリアのベース仕様は540万円。対して、テスラのモデル3のベース仕様も全く同様の540万円。でも、モデル3はアリアより100km以上の565km走る。もちろん、リアルワールドでは航続距離が1割以上少ないことが普通だ。さて、あなたはどちらにしますか?