横一文字のライトは「ワイド&ロー」と「先進性」に貢献
最近、見る機会が増えてきたフロントの横一文字ライト。
近年になって採用するクルマが増えてきたその背景にはどのような事情があるのでしょうか。
なぜフロントの横一文字ライトが増えたのか?
なぜフロントの横一文字ライトが増えたのか?
国産車ではトヨタ「クラウンクロスオーバー」がその代表例です。
【画像】「えっ!」 なにこれ? 「斬新顔ミニバン」が凄すぎる! それがこれです!
輸入車では、メルセデス・ベンツの「EQ」シリーズが横一文字のライトをアイコンとしているほか、ヒョンデではミニバン「スターリア」や、2023年秋にも日本導入予定のヒョンデ「コナ・エレクトリック」も水平基調のライトがフロントのアクセントとなっています。
ひとつは、クルマにとって理想的とされる「ワイド&ロー」を演出するのに一役買うという点です。
クラウン クロスオーバーを見ると、ドライバーの視点の高さよりもかなり低い位置に横一文字のライトがあることがわかります。
その結果、実際には一般的なセダンよりも全高が高いクラウンクロスオーバーであるにもかかわらず、低くスポーティな印象を与えています。
もうひとつは、先進的なイメージを与えることができるという点です。
メルセデス・ベンツやヒョンデが横一文字のライトをBEVに対して積極的に用いているのは、こうした狙いがあると見られます。
一方、「ワイド&ロー」や先進的なイメージが好まれるのはいまにはじまった話ではありません。
実際、リアに横一文字のライトを採用することで、そうしたイメージを演出しているクルマは少なくありません。
しかし、フロントマスクに横一文字のライトが見られるようになったのは、せいぜいこの1、2年のことです。
その背景には、フロントのライトにおける規制が大きく関係しています。
ただ、欧州の一部の国などでは「デイタイム・ランニング・ライト(DRL)」と呼ばれる補助灯を常時点灯することが義務化されていたこともあり、2016年より日本でもDRLが解禁されることになりました。
日本語では「昼間走行灯」と表現されるDRLには、昼夜問わず視認性の高いLEDランプがおもに採用されています。
LEDランプはデザイン上の自由度も高いことから、フロントマスクにおけるアクセントとしての役割も果たし、多くのメーカーがアイコンとして活用するようになりました。
「熱」の問題をクリアすることで採用が増える?
フロントマスクにおける灯火類の規制緩和によってさまざまなデザインのDRLが登場するようになった一方で、横一文字のものを採用するためにはもうひとつのハードルがありました。
それは、「熱」の問題です。
LEDランプで大きな光量を得るためには、多くのLEDを集積させる必要があります。
しかし、フロント部はエンジンの熱をダイレクトに受けることが多く、熱に弱いLEDランプにとっては過酷な環境です。
特に、フロントマスクに横一文字のLEDを配置すると、より強い耐熱性や放熱性が求められることになります。
これまでは、技術面やコスト面からそうした設計を行なうことは容易ではありませんでした。
韓国・ヒュンダイが発売した「スターリア プレミアム」
韓国・ヒュンダイが発売した「スターリア プレミアム」
たとえば、ヒョンデ「スターリア」に採用されている横一文字のDRLは、LEDランプの集合体ではなく、内部で光を反射させることで一本の光の線を演出しています。
光源の数を最小限にすることによってコストも低減できるうえ、耐熱・放熱の面でも有利となります。
こうした技術は、横一文字のDRLを備えるほかのモデルにも採用されています。
つまり、このような技術の進歩によって、横一文字のDRLを見ることができるようになったと言えます。
※ ※ ※
技術面やコスト面での課題がクリアしつつあることから、横一文字のDRLは今後多くのクルマに採用されていくと考えられます。
ただ、これはあくまでDRLの話であり、横一文字のヘッドライトが登場するにはコストや耐熱性、照射範囲や光量の観点からまだまだ多くのハードルがあるようです。