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FIA、F1マシンのウエット対策を諦めず。次回テストでは大型ホイールカバーをテストへ

 FIAはF1における雨天時の視界問題を解決すべく、これまでよりもアグレッシブなソリューションをテストする予定のようだ。

 F1はかねてより、ウエットコンディションでレースをする上で最大の問題となっている視界の悪化について、マシンから上がる水煙を減らす方法を模索している。

 7月にシルバーストンで行なわれた最初のトライアルでは、スプレーガードと呼ばれるプロトタイプがテストされたが、期待されたような結果は得られなかった。

 F1の上層部はウエットコンディションで水しぶきが上がるのを抑制し、走行中の視界を改善する上で、より大きなステップを踏む必要があることを理解している。

 FIAのシングルシーター担当ディレクターであるニコラス・トンバジスは、シルバーストンでのテストを分析した上で、次のテストではかなり異なるデザインのデバイスを採用すると説明している。

「パーツを製作したメルセデスと(フィードバックを得るためにマシンを走らせた)マクラーレンの協力を得て、シルバーストンで行なわれたテストは、おそらく楽観的すぎる実験だった」とトンバジスはmotorsport.comに語っている。

「スプレーガードはホイールをほとんどカバーしなかった。私はそれにかなり懐疑的で、重要な結果は得られないだろうと想像していた」

「次のテストでは、ホイールを完全にカバーするテストを行なう予定だ。水しぶきが形成される閾(しきい)値を理解するために何が必要なのか、どのような道を取るべきかを決めることになる」

fia、f1マシンのウエット対策を諦めず。次回テストでは大型ホイールカバーをテストへ

Liam Lawson, AlphaTauri AT04

Photo by: Red Bull Content Pool

 トンバジスは、F1マシン後方に上がる水しぶきが様々な要因によって引き起こされることから、解決策を見つけることがいかに複雑な問題であるかを説明する。

「ひとつ目は、タイヤからまき上げられた水が上方に噴射されること。ふたつ目として、タイヤがまき上げた水がディフューザーに吸い込まれること。そして路面に滞留した水がディフューザーの圧力で吸い上げられ、排出されることだ」

「我々は、ホイールからの水しぶきは全体の約40%に相当すると考えられる」

「この現象を抑えることができれば、ドライバーの視界が完全に確保されるわけではないが、大幅な改善が見られることは明らかだ」

 トンバジス曰く、FIAは安全性を確保するために、市販車で雨天時のシミュレーションに使用されているツールを調査しているという。

「我々はいくつかのシミュレーションを行なっている。市販車業界でよく使われているツール(例えば、バックミラーの視認性のチェックなど)がある。しかし、良い相関関係を得るためには、これらのツールは十分にキャリブレーション(シミュレーション結果と実走状況の効果を揃えること)されていなければならない」

「自動車メーカーは非常に広範なキャリブレーションを行なっており、テストの制限もなく、制約を課すFIAに対処する必要もないため、自由に行動することができる」

「我々は頻繁にテストを実施することができないため、限られた活動の中で正しいキャリブレーションを見つけるのは容易ではない」

 ホイールカバーの大型化によって、空力面に与える影響は大きくなるだろう。FIAは空力面への影響について注意を払っているが、最終的にはどのチームも条件は同じだとトンバジスは語った。

「ダウンフォースは大きく変わる可能性がある。我々が試したいくつかの構成ではそれがほぼゼロだったが、風洞でテストした最も極端なソリューションでは最大80ポイントの損失が見られた」

「しかし正直なところ、我々はパフォーマンスの影響についてはそれほど気にしていない。シルバーストンでテストされたソリューションは、空力への影響を可能な限り抑えたものだったがね」

 F1のCEOであるステファノ・ドメニカリは最近、水しぶきを減らすために検討されているもうひとつのアイデアは、ディフューザーから吐き出される水量を制限することだと示唆した。

 しかしトンバジスは、タイヤが生む水しぶきがかかるエリアのデザインに干渉する可能性を否定している。

「そうなればチームには大変な労力がかかる」と、トンバジスは語った。

「理想を言えば、年に1度か2度、モンスーンのような雨が来たときだけ着脱するようなソリューションで介入したい」

「マシンに触れる必要がないことを望んでいる。 2026年のレギュレーション策定に向けて、他のアイデアも開発されるかもしれない」

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