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走行距離わずか70kmのスバル「インプレッサ22B STi」がオークションに登場! 2017年に落札された個体が6年間で3倍の価格に

当時わずか2日間で完売した超絶人気の限定車

 1998年に発売され、400台が瞬時に完売したスバル「インプレッサ 22B-STiバージョン」。そのプロトタイプとされる個体がアメリカのオークションに出品されました。

走行距離わずか70kmのスバル「インプレッサ22b sti」がオークションに登場! 2017年に落札された個体が6年間で3倍の価格に

アメリカのオークションに出品されたスバル「インプレッサ 22B-STiバージョン」のプロトタイプ(C)Bonhams

【画像】オークションに登場した新車同然のスバル「インプレッサ22B-STiバージョン」を写真で見る(12枚)

 1980年代、スバルは海外において比較的“地味”な存在でした。しかし、国際ラリーシーンでの活躍により、その知名度は一気に高まります。

 スバルが初めて世界の舞台に立ったのは、1980年のサファリラリー。マシンのベースとなったのは、当時の主力モデルである「レオーネ」でした。

 そして1990年には、イギリス・プロドライブ社とのパートナーシップにより、国際的なラリーにフル参戦を果たします。それでも勝利を収めるまでには一筋縄にはいきませんでした。プロドライブのワークスチームにはフィンランド人のマルク・アレンが在籍していましたが、なかなかの苦戦を強いられました。

 スバルの活躍が目立つようになったのは1993年から。この年に投入された「インプレッサ」が“ハマり”ました。同年8月のニュージーランドラリーでコリン・マクレー/デレク・リンガーが優勝を飾ります。

 翌シーズンは、マクレーが2勝、カルロス・サインツが1勝と、WRC(世界ラリー選手権)で3勝を獲得。続く1995年、ついに念願の世界選手権完全制覇を達成します。

 この年、マクレーとサインツは8戦中5勝を挙げ、ドライバーズ選手権は安定した走りを見せたマクレーに軍配。スバルはマニュファクチャラーズタイトルも獲得し、この偉業は1996年と1997年も繰り返されたのです。

 インプレッサ22Bが登場したのは、1998年3月のことでした。WRCで3連覇を達成した「インプレッサ・ワールドラリーカー’97」のイメージを忠実に再現したロードモデル、かつスバル創立40周年記念車として、400台が限定発売されました。

 販売価格は当時の価格で500万円。カタログモデルである「インプレッサ WRXタイプR STiバージョンIV」が約300万円だったので、当時としては割高な設定だったといえます。

 ところがこのインプレッサ22B、希少性と高性能スペックが話題になり、発売後わずか2日間で完売したのでした。

●ラリーマシンをイメージした専用のワイドボディ

 インプレッサ22Bは、STiがチューニングを施した専用エンジン(排気量2212cc)を搭載。当時は自主規制があるため最高出力は280psに抑えられましたが、インプレッサの弱点だった低中速トルクが大幅に改善されていました。

 車体はクーペボディがベース。ラリーマシンをイメージした専用デザインの前後フェンダー、前後バンパー、リアウイングなどを装備しています。ワイドフェンダー化にともない、全幅は1690mmから1770mmへと拡大され、ノーマルとは異なるスパルタンな雰囲気を醸し出していました。

 トランスミッションにはセラミック/メタル・クラッチを備え、アイバッハ製スプリング、ビルシュタイン製ダンパー、4ポットブレーキキャリパー、BBS製鍛造ホイールなどが採用されました。

 ワイドなフロントエアダム、トランクリッドに取りつけられたスポイラーなど、エアロダイナミクスを追求したボディワークは、当時、プロドライブなどのコンサルタントとして活躍していたイギリスの著名な車両デザイナー、ピーター・スティーブンスが手がけたものでした。

プロトタイプは5台のみ。今回の個体は走行距離わずか70km

 インプレッサ22Bは本生産される前に、プロトタイプが5台生産され、コリン・マクレーやニッキー・グリストなど関係者に贈られたそうです。

 そのうちの1台が、先ごろアメリカ・カリフォルニア州で開催された自動車の祭典「モントレー・カー・ウィーク」にて併催されたボナムズのオークションに出品されました。プロドライブのデビッド・ラップワースに贈られた個体でした。

走行距離わずか70kmのスバル「インプレッサ22b sti」がオークションに登場! 2017年に落札された個体が6年間で3倍の価格に

インプレッサ22Bのボディサイズは全長4365mm、全幅1770mm、全高1390mm。C)Bonhams

 シャシー番号061819の個体はスバルからプロドライブへと贈られ、現在のオーナーの手元に渡るまで20年間、日本人のコレクターが所有してきたものだそうです。一度も登録されたことはありませんが、油脂類の循環のためにエンジンは定期的にかけられ、メンテナンスも施されてきたそうです。

 それでいて新車時の状態が保たれていて、タイヤも新車時のまま。走行距離はわずか70kmだといいます。

 2017年にオークションに出品された履歴があり、やはりボナムズがイギリス・グッドウッドで開催したオークションで落札されていました。当時の価格は11万3500ポンド(約2000万円)でした。

●イギリスのオークションでは出品取り消しに

 そんな個体が今回、どれだけ高値で落札されるのか注目されていました。ボナムズによる予想落札価格はなんと45万~55万ドル(約6500~8000万円)とされていました。

「6年で3~4倍になるって、どんな投資商品よりも利回りがいいのでは?」と思っていましたが、残念ながら落札には至りませんでした。

 モントレー・カー・ウィークでの結果を受けてか否かは分かりませんが、2023年8月26日にイギリスのシルバーストーン・オークションズに出品予定だったコリン・マクレーが所有していたインプレッサ22Bプロトタイプ(予想落札価格は40万~50万ポンド/約7350~9200万円)は出品取り消しとなりました。

 昨今、日本の絶版スポーツカーの高騰ぶりは、名だたるスポーツカーメーカーも驚くほどです。今回のオークション結果が今後の相場に影響を及ぼすのか否か、しばし注視していきたいと思います。

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