マツダ/MX-30 Rotary-EV
マツダは9月14日、ロータリーエンジンを発電機とするプラグインハイブリッド「MX-30 Rotary-EV」(エムエックス サーティー ロータリー イーブイ)の予約を開始するとともに、11月に発売することを発表しました。価格は423万5000円~491万7000円。ASCII.jpでは、今秋、話題を集めること間違いナシのMX-30 Rotary-EVを最速でチェックしていきます!
◆ロータリーエンジンは完全新設計の1ローター仕様
MX-30 Rotary-EV
MX-30 Rotary-EVのドアを開いた様子
MX-30 Rotary-EVのベースモデルとなる「MX-30」はマツダの新世代商品群の第3弾として位置づけられているハイブリッドクロスオーバーSUV。全長4395mm、全幅1795mm、全高1565mmのサイズで、観音開きのフリースタイルドアを特徴としています。同社としては初の女性主査を起用し「わたしらしく生きる」という、従来のマツダではあまり掲げることのなかったコンセプトと、マツダにおける「電動化技術」のベースモデルとして2020年10月に販売開始しました。
当初はマイルドハイブリッドモデルのみでしたが、2021年1月に同社初の量産電気自動車(EV)として「MX-30 EV」をラインアップに追加。そのMX-30 EVの発表会でマツダは「ロータリーエンジンを搭載したハイブリッド車を出す」と明言し、初のBEVとともに大きな話題を巻き起こしました。あれから2年、待望にして本命といえるプラグインハイブリッド仕様がラインアップに加わりました。
エンジンフードを開けた様子
8C型ロータリーエンジンを搭載したPHEVユニット
オイルクーラーは上側に配置
8C型ロータリーエンジン
写真のエンジンのシリアル番号は00001。本社工場で保管されるとのこと
それではロータリーエンジンを用いたプラグインハイブリッドユニットについてご紹介しましょう。ロータリーエンジンは完全新設計の8C型で、その名の通り総排気量は830cc。税法上の排気量区分は実排気量の1.5倍(排気量換算係数)を掛けたものとなるため、1245ccとなります。ちなみに、RX-8などに採用されている有名な13B型は、排気量654ccの2ローターで1300ccですので、かなりコンパクトなエンジンです。
8Cの主要部品
上が8C、下が13Bのローター
左が8C、右が13Bのローター
ローターの厚みは13Bに比べて4mm薄いものの、レシプロエンジンにあたる創成半径(三角形の頂点の中心からの距離)は13Bの105mmから大幅に拡大した120mmへと拡大。これを1ローターで構成します。この8Cを発電用のジェネレーターを挟んで、最高出力125kWを発生する高出力モーターに同軸に配置。マツダのロータリーエンジン車としては初となる横置きでマウントされます。
◆ロータリーを採用したのはレシプロエンジンが入らなかったから
発電機にロータリーエンジンを用いた理由を尋ねると、最初からロータリーありき、ではなく「スペース的な制約により、レシプロエンジンが入らなかったから」なのだそう。この新ユニット8Cについては、別の記事でEV時代に復活させた理由と生産技術を含めて詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
充電ポートを開けた様子
ACとDCの充電ポートが用意されている
反対側に設けられた給油口。ちなみにレギュラーガソリン対応
PHEVであるMX-30 Rotary-EVには、通常充電のほか急速充電ポート(CHAdeMO)を用意。PHEVの輸入車の多くは急速充電非対応が多い中、MX-30 Rotary-EVが用意したのは、現時点での日本(特に貸駐車場)における通常充電環境の少なさに考慮したものと思われます。なお、本車両は輸出もされるとのことで、そちらも急速充電ポートが用意されます。
パワーユニットは、駆動のすべてはモーターで行ない、ロータリーエンジンは発電のみに徹する「シリーズハイブリッド」構成。類似の方式としては日産のe-POWERに近く、思えばあちらも排気量は1200cc。ジェネレーターを動かすには、そのくらいの排気量が必要になるのでしょう。モーター部の最高出力は125kWで、床面に置かれた17.8kWhのリチウムイオンバッテリーにより、EV走行距離107kmを実現。
ちなみにMX-30EVのバッテリー容量は35.5kWhで、1回の充電走行距離が256kmですから、MX-30 Rotary-EVのバッテリー容量はMX-30EVのちょうど半分となります。その余ったスペースに、50リットルの燃料タンクを設置。気になるハイブリッド燃料消費率はWLTCモードで15.4km/Lとのことで、これは1.5リットルのハイブリッドSUVにはちょっと届かない程度。
シフトレバー近傍にモード切替を用意
走行モードは、エンジンをあまり駆動させないEVモードのほか、発電電力との組み合わせるノーマルモード、そして充電をするチャージモードの3種類。これはほかのPHEV車両と同じといえます。
◆V2Hにも対応するので家庭用電源としても使える
室内の様子
ブラックのシートにグレーのステッチが入る
フロアーカーペット
ハンドルまわり
スピードメーター。中央にガソリン燃費のほか、電費を表示
メーターパネル
左が蓄電残量、右がガソリン残量

パワー計
センターコンソール
アームレスト近傍に小物入れを配置
リアシート
MX-30およびMX-30EVのインテリアは白系とブラウン系でしたが、MX-30 Rotary-EVでは新たにブラックにグレーのアクセントを加えた「Naturak Monotone」を追加。これは遠くまでスポーティーに走れる、というメッセージが込めているとのこと。
PHEV専用のセンターディスプレイ表示画面
ACコンセントを用意
またセンターディスプレイにはPHEV専用としてロータリーエンジンの動作状態が表示されるほか、センターコンソールには150WのACコンセントを設置。ノートPCなどの充電に重宝することでしょう。
ラゲッジスペース
背もたれを倒した様子
ほぼフルフラットを実現
充電ケーブル入れ
ラゲッジドアは電動式
ACコンセント
荷室は基本的にMX-30、MX-30EVと同様。ですが、こちらにも1500WのACコンセントも用意。ハンディ蓄電池やキャンプでの電熱調理器具の利用などに好適です。また V2H(Vehicle to Home)にも対応しているため、対応の充放電機器を使えば、車両が搭載する17.8kWhのバッテリーを電源として利用可能。50リットルのガソリンを使って充電すれば、一般家庭で最大9.1日分の電力を賄うことができます。なお、ガソリンエンジンを始動させている状態での放電はできないようです。
専用ホイール

ボディーサイドにはгѓгѓјг‚їгѓЄгѓјгЃЁeг‚’жЋ›гЃ‘еђ€г‚ЏгЃ›гЃџе°‚з”ЁгЃ®г‚Ёгѓігѓ–гѓ¬гѓ
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シャークフィンを採用
従来モデルとのエクステリアの違いは、ロータリーエンジンのローターを模したボディーサイドのエンブレムと、バックドア付近に設けたRotary-EVのバッジ。そして専用のホイールとシャークフィンのみ。「もっとロータリーをアピールしてもよいのでは?」と思ったのですが、きちんと用意されていました。ロータリー全面推しの特別仕様車が!
◆ロータリー復活の狼煙! 特別仕様車「Edition R」
MX-30 Rotary-EV「Edition R」
MX-30 Rotary-EVの発売を記念した台数限定の特別仕様車「Edition R」はロータリーエンジンの復活、すなわち「Return」の意味を込めたもので、あちらこちらに「マツダ」や「ロータリー」を意識させるモデルに仕上げられています。専用のボディー色として、マローンルージュメタリックを採用。この色はマツダ初の市販車である「R360クーペ」のルーフ色を復刻したもの。2020年に発売した100周年特別記念車にも採用されています。この特別色をルーフサイドに採用。そのほかの部分をブラックとすることで、引き締まった印象を与えてくれます。
専用フロアーマット
タブに入るライン幅はアペックスシールと同じ2.6mm
フロアーマットには「Edition R」専用のものを用意。オレンジのタグや専用のバッジでスペシャリティを演出しています。このオレンジタグに入る1本のラインは、8Cのローターアペックス(三角形の頂点部分)と同じ2.6mmでデザインされているというこだわりっぷり!
「Edition R」の運転席・助手席の様子
ヘッドレストに専用のエンボス加工
運転席、助手席のヘッドレストには、MX-30 Rotary-EV専用バッジを模したマークと「Edition R」ロゴのエンボス加工が施されて、ロータリーエンジン車であることをアピール。
「Edition R」専用のリモコン
「Edition R」専用リモコンとローター
リモコンキーの側面形状が、ローターの曲面とアペックスシールの溝と完全一致!
そしてデザイナーのコダワリが相当つまっているのが専用のリモコンキー。「ロータリーエンジンを実際に触ることができませんから、普段触るリモコンキーにロータリーエンジンを感じてほしい」という特別なキーで、サイドの形状がローターの曲面と同じカーブを描く一品。さらにキーシェルのサイド面もローターアペックスと同じ2.6mm幅にしているとのこと。「この曲面は実際のCADデータから引っ張ってきたので、間違いありません」だそう。この特別仕様車のためだけに金型を興したというから脱帽です。
◆MX-30 Rotary-EVの生産が始まった6月22日は特別な日
生産されるMX-30 Rotary-EV
今年6月22日から生産がスタートしているMX-30 Rotary-EV。奇しくも6月22日は、1991年にマツダ787Bが日本車として初めてルマン24時間レースを制覇した第59回大会のスタート日であり、11年前にロータリーエンジン搭載の市販車「RX-8」がラインオフした日でもありました。意図してこの日からスタートしたわけではない、とのことですが、関係者はロータリーが紡ぐ縁を感じている様子。生産ラインは本社工場で、ロードスターなどと混合で生産され、結構手間がかかるためか、ゆったりとした時の中で作られているようです。なお、1991年のルマンを制した787Bにはアスキー(当時)の雑誌「LOGIN」のロゴが貼ってありました。そんなロータリーエンジンの復活を取材できるとは、ASCII.jp的にも不思議な縁を感じます。
RX-8の生産が終了してから11年。再びロータリーエンジンに火が入ったことを素直に喜ぼうではありませんか。MX-30 Rotary-EVの試乗車が用意され次第、ASCII.jpでは取材を予定しています。
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