(ブルームバーグ): 米3大自動車メーカー(ビッグスリー)に迫るストライキの脅威により、バイデン大統領はグリーンカー産業構築と労働者復活という2つの看板政策の間でジレンマに陥っている。しかも、今回の問題でバイデン氏が与える影響力は限られている。
全米自動車労組(UAW)は14日夜までに合意が得られなければスト突入の構えを見せている。大幅な賃上げなどを求める労組と会社側との隔たりはなお大きいが、政治的に痛みの大きいストの回避に向けてバイデン氏にできることは双方をなだめることくらいだ。
ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ステランティスで操業停止が長期化すれば、ミシガン州など民主、共和両党の勢力が拮抗(きっこう)する激戦州がリセッション(景気後退)に陥るリスクがある。また自動車価格も再び高騰しかねない。バイデン氏にとっては、重要な支持母体を対立させることにもなる。
バイデン氏が掲げるグリーンエネルギーへの移行には自動車大手の協力が不可欠で、バイデン氏はメーカーに多額の連邦資金を振り向けている。一方で、バイデン政権は労働者の権利強化への取り組みもアピールしている。だが、UAWは電気自動車(EV)計画を全面的には支持していない。テスラのような労組を認めない企業を優遇し、労組結成を制限する南部の州に生産拠点の移管が進みかねず、雇用削減や賃下げにつながりかねないと警戒しているためだ。
そのため、バイデン氏は難しい舵取りを迫られている。ストを回避できた昨年の貨物鉄道業界の労使対立とは異なり、今回の交渉が決裂した場合、大統領には自動車生産を継続させる法的権限がない。大統領は双方に「公正な合意」を呼びかけた。2024年の大統領選を前に、まだバイデン氏への支持を表明していない主要労組はUAWなどごくわずかだ。
–取材協力:Raeedah Wahid、Keith Naughton、David Welch.
More stories like this are available on bloomberg.com
©2023 Bloomberg L.P.