世界限定500台、日本向けは165台のみという限られた台数で、2010年12月から2年間ほど生産された2シーターのスーパーカー、レクサス「LFA」。レクサスのスポーツモデル「F」の頂点に君臨するクルマとして、生産終了から11年が経ったいまも、レクサスのホームページに掲載されています。後にも先にもこれ以外に存在しないであろう、唯一無二の国産スーパーカーLFAをご紹介します。
■3750万円という価格にも関わらず、受注殺到
レクサスのラグジュアリーサルーン「LS」の1500万円を遥かに上回る、3750万円という怒涛の価格で登場した「LFA」。世界のラグジュアリーブランドと戦っていくため、レクサスが作ったのはまさに予算度外視のスーパーカーでした。
驚異的な価格にもかかわらず、予約枠はすぐに埋まり、予定よりも早く受注は終了に。今では手に入れようとも不可能な奇跡のマシンとして、レクサスの歴史に花を添えています。

フロントミッドシップに搭載されたエンジンは、既存のV8エンジンよりも小型・軽量化した排気量4.8リッターのV型10気筒エンジンです。アルミニウム合金やマグネシウム合金、チタン合金などの軽量素材を使用しており、レッドゾーン9000rpmまで途切れることなく回転するこのエンジンは、最高出力412kW(560ps)/8700rpm、最大トルク480Nm/6800rpmを発生。CFPR製の車体骨格などを採用した超軽量ボディ(1480kg)によって、パワーウェイトレシオは2.64kg/PSという卓越したレベルでした。
LFAの真骨頂はサウンド。V10エンジンのサウンドのチューニングは、楽器で有名なヤマハが担当。エンジン回転数の高まりとともに、吸気音が重なっていく、美しい和音を狙っていた
ただ、なんといっても、LFAの真骨頂は、徹底してつくりこまれた「サウンド」にあります。至高のV10サウンドのチューニングは、楽器で有名なヤマハが担当。エンジン回転数の高まりとともに、吸気音が重なっていく、美しい和音を狙っており、V10時代の官能的だったころのF1に近い澄んだサウンドは、クルマ好きにとっては非常に心地よいものでした。
■贅沢な素材を集め、最高の調理がなされた
LFAは、重量バランスも突き詰められていました。エンジンはフロントに縦置きしていますが、リヤトランスアクスル(トランスミッションをリヤセクションへ置くパッケージング、R35 GT-Rと同じ方式)を採用し、センタートンネルの幅を狭めたことで、ドライバーを前後車軸間の中心かつ左右中央寄りに座らせ、車両重心のすぐ傍に座るようにパッケージング。

また、エンジンやトランスミッションなどの重量物をホイールベース内側へ配置したうえで、軽量かつ長寿命のCCM(カーボンセラミックマテリアル)製ブレーキディスクを採用するなど、車両慣性モーメントを低減する工夫もされており、エンジン重心が徹底的に下げられていることで、車両重心を下げることにも貢献。優れた運動性能と高い安定性を達成しつつ、ドライバーが車両挙動を直感的に感じやすくなるよう、つくりこまれていました。
駆動方式はフロントエンジン・リヤ駆動とし、限界領域での高いコントロール性と直進安定性を確保しながら、コーナリングとトラクション性能を高めるため、前後重量配分はフロント48:リヤ52に設定されています。
ちなみに、同じ時代のスーパーカー、ニッサンGT-R(R35)の前後重量配分は、55:45とかなりのフロントヘビーです。贅沢な素材を集め、最高の調理がなされたLFAは、唯一無二の存在といえるでしょう。
■中古のLFAはなんと1億円以上にも!
いまLFAを手に入れようとすれば、当然中古車を探すことになりますが、LFAの中古車といえば、以前に海外の中古車オークションで、LFAニュルパッケージが約1億7500万円で落札されたことがニュースとなりました。国内でも165台という希少なモデルながら、現在2台ほど流通はしているものの、どちらも価格応談ということで価格は不明。おそらく、新車価格の3倍に近い1億円に届いているものと考えられます。
センタートンネルの幅を狭めたことで、ドライバーを前後車軸間の中心かつ、左右中央寄りに座らせ、車両重心のすぐ傍に座るようにパッケージング
次期型LFAが登場するといった噂は何度か立ち上がりましたが、未だその姿を見ることはできません。今秋開催の東京モビリティショーでは、このLFAのような、人の五感を刺激する官能的なサウンドを奏でるクルマが登場するのか? 非常に楽しみです。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:LEXUS
Edit:Takashi Ogiyama