ポルシェみずからパリ・ダカールラリーのサポートカーを製作
先のロサンゼルスオートショー2022でポルシェがお披露目した「911ダカール」。このニュースを機にあらためてフォーカスされたのが、ポルシェがかつてパリ・ダカールラリーに投入した「959」でした。
パリ・ダカールラリーの“サポートカー”として、ポルシェの自社工場でフォルクスワーゲンのトランスポーター(T3)をベースとするコンプリートカーが製作された(C)Porsche Centrum Gelderland
1981年から極秘に開発が進められていた959は、翌1982年に国際自動車連盟(FIA)がスポーツカーレースとラリーの両方にグループBカテゴリーを導入すること見越したマシンでした。
グループ4とグループ5に代わり、革新的なテクノロジーを搭載した驚異的なコンペティションマシンの誕生につながるグループBのホモロゲーション(公認)対象は、「連続する12か月間に200台製造された車両」という内容でした。グループBマシンのホモロゲーションモデル生産コストは自動車メーカーにとって莫大なものでしたが、スポーツカーレースとラリーの黄金時代には多数の伝説的なマシンが誕生しています。
アウディ「スポーツクワトロS1」、フォード「RS200」、フェラーリ「288 GTO」、プジョー「205ターボ16」、MG「メトロ6R4」、オペル「マンタ400」、ランチア「デルタS4」など、そうそうたるモデルが登場しています。そして、モータースポーツの世界を一変させるような新型ポルシェの開発もおこわれていました。それが959です。
●ポルシェ謹製のトランスポーターは単なる改造車にあらず
パリ・ダカールラリーの“サポートカー”として、フォルクスワーゲン「トランスポーター(T3)」をベースとするコンプリートカーが、ポルシェの自社工場で製造されたのです。
ドライバーやコ・ドライバーが959で爆走する中、サポートカーの移動も可能な限り速いほうがいい……という考えにより、当時の「911カレラ」が搭載していた3.2リッター水平対向6気筒エンジンをT3に搭載したのです。
YouTubeにて「VW BUS PORSCHE」というキーワードで検索すると、さまざまな年代のフォルクスワーゲン トランスポーターにポルシェエンジンを搭載した改造車が出てきます。なかには4WDシステムを移植したものまで! でも、トランスポーターへのポルシェエンジンの移植って、ポルシェみずからが最初に手がけたものだったのですね。ということは、元祖で、本家で……何度もいいますが、さらには改造車でなく“ポルシェ車”なのです。
そのうちの1台が、なんとオランダのポルシェ正規ディーラー「Porsche Centrum Gelderland」で販売されています。多くの方がご想像されたかと思いますが、価格はかなりお高め。ズバリ、36万4900ユーロ(約5280万円)です。
なおこの車両は、パリ・ダカールラリーに用いられたモデルではなく、当時、ポルシェのCEO(最高経営責任者)だったペーター・シュルツ氏のためにつくられた1台だそうです。
某人気Webサイトには、T3 B32は11台が生産されたと記されていますが、当該物件を販売するオランダのポルシェ正規ディーラーのホームページには“7台”とうたわれています。人気Webサイトの情報を信じるか、ポルシェ正規ディーラーの物件情報を信じるかは貴方次第です。