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3列シートのSUVは「ポスト ミニバン」になり得るのか?最新の2台で考察してみた

2022年11月、マツダの3列シート SUV「CX-8」が大幅商品改良された。ほぼ同時期に、ステランティス ジャパンは3列シート SUVのニューモデル「ジープ コマンダー」を日本に導入した。ここでは2台を比較するわけではないが、3列シートのSUVについて考察してみたい。

3列シートのsuvは「ポスト ミニバン」になり得るのか?最新の2台で考察してみた

CX-8の購入者は、3列目シートの安全性を重視している

マツダの3列シート SUV「CX-8」は、2017年に「ミニバンに代わる、マツダの新しい多人数乗用車」として発表された。CX-8が登場する少し前に、マツダはミニバンの製造販売を終了していた。CX-8は「多人数乗用車=ミニバン」という概念を打ち破り、SKYACTIVや魂動デザインによる新世代商品として、デザインや質感、走りにこだわったモデルとして登場した。

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CX-8の特別仕様車「グランドジャーニー」は、19インチのアルミホイールやルーフレールなどを専用装備。駆動方式も4WDのみとなる。

それから5年。商品改良を進めてきたCX-8は月平均1200台ほどをコンスタントに販売している。ユーザー層は40代以下で既婚・子どもありという、いわゆるファミリー層が中心だ。そしてユーザーの半数以上は5名以上で乗車する機会が多く、2列目はもちろん3列目の乗り心地も重視しているという。

今回の一部改良では、アウトドア志向のファミリー層に向けた「グランドジャーニー」や、スポーティなイメージを強調した「スポーツ アピアランス」といった特別仕様車を設定し、最上級グレードの「エクスクルーシブ モード」は装備を進化させるなど、そのラインナップの魅力を増幅している。

また、CX-8の購入者は、他車に比べて安全重視の割合が高いという。それは3列シートの安全性にもつながるのだが、マツダでは法規に加えて独自の基準を追加して開発している。日本国内の法規では、50km/hのフルラップ追突で、燃料漏れがなければ良いとされている。だがマツダでは、80km/hの70%オフセット追突で、燃料漏れがないことはもちろん、最後席の生存空間を確保し、非衝突側の後席ドアが人力で開くことを基準としている。

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気兼ねなく使える、合成皮革とファブリックのシート。3列目も思ったより閉塞感はなく、しかも安全性能を確保している。

この基準をクリアするため、CX-8ではリアフレームをまっすぐに配置した「ストレートフレーム構造」や、Cピラー下の二又構造を採用して、乗員空間をしっかりと守っている。もちろん、この安全性は今回の改良から採用されたものではなく、従来までのCX-8にも採用されている。

3列目シートの居住性は、Lサイズ ミニバンにはかなわないが、おとなが座っても思ったほど狭くはなく、子どもなら十分にくつろげる。2.2Lのトルクフルなディーゼルターボによるドライビングの楽しさは、ミニバンの比ではない。マツダの目論みどおり、CX-8はマツダ ユーザーにとってポスト ミニバンとなったようだ。

インポートSUVでも、リーズナブルな3列シート車を!

さて、輸入車ではラージサイズのSUVも多く日本に導入されており、その余裕のサイズから3列シートを採用しているモデルはけっこうある。だが、いずれも1000万円前後(もしくは、それ以上)のプライスタグが付けられている高級モデルが多い。扱いやすいサイズのモデルとしてはメルセデス・ベンツ GLB(およびEQB)があるが、安全上の理由から3列目シートの対応身長はGLBが168cm以下、EQBが165cm以下となっている。

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日本仕様のコマンダーは「リミテッド」のみのモノグレードだが、サンルーフやパールコートがオプション設定されている。

ジープのラインナップでもグランドチェロキーLは3列シートを採用しているが、全長は5.2mもあるし、車両価格はヨーロッパ製の高級SUVより安いとはいえ、800万円オーバーとなる。

2021年末でチェロキーの日本仕様は生産を終了したため、その後継モデルとして日本に導入されたのが、「コマンダー」だ。サイズ的にはCX-8より全長とホイールベースは15cmほど短いが、全幅と全高はほぼ同じ。日本の街中でも比較的扱いやすいサイズで、3列シートの7人乗りを採用している。

しかも、パワーユニットはジープ ブランドでは初採用のディーゼルエンジン。コマンダーはコンパスのプラットフォームを延長して誕生した、横置きFFベースの4WD(この成り立ちはCX-8と似ている)となっている。排気量は2Lだが1750rpmから最大トルクの350Nmを発生し、電子制御9速ATにアイドリングストップ機構も備えるから、経済性はかなり高そうだ。

エクステリアはグランドチェロキーの弟分といった、SUVらしい力強さを感じさせるもの。インテリアもメーターパネルはマルチビューディスプレイやスマホ対応のタッチパネルモニターを備えるなど、グランドチェロキーと似た雰囲気だ。

3列シートのsuvは「ポスト ミニバン」になり得るのか?最新の2台で考察してみた

3列目はおとなが座ると、少し「体育座り」的なポジションとなるが、スペース的にはCX-8とほとんど変わらない。

CX-8のトップグレードよりも100万円近く高いが、大型インポートSUVに比べれば価格差は小さい。3列目シートの広さも、CX-8とほぼ同じレベルだ。しかもリクライニング機構も備わっている。「一生もの」とは言わないけれど、永く付き合えそうだから、ちょっと無理して手に入れても満足度は高いだろう。

ジープのスタイリングや悪路走破性、そしてそのフィロソフィ「Go Anywhere. Do Anything.(どこにでも行ける。何でもできる)」が気に入って、いつかは・・・と思っていたけれど、結婚して家族が増えてミニバンしか選択肢がなかった、なんて嘆いていた人には、コマンダーは格好の1台かもしれない。

主要諸元とアルバム

3列シートのsuvは「ポスト ミニバン」になり得るのか?最新の2台で考察してみた

アウトドア志向のファミリー層に向けたCX-8の特別仕様車「グランドジャーニー」。

マツダ CX-8 XD グランドジャーニー 主要諸元

●全長×全幅×全高:4925×1845×1730mm

●ホイールベース:2930mm

●車両重量:1930kg

●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ

●総排気量:2188cc

●最高出力:147kW(200ps)/4000rpm

●最大トルク:450Nm(45.9kgm)/2000rpm

●トランスミッション:6速AT

●駆動方式:フロント横置き4WD

●燃料・タンク容量:軽油・74L

●WLTCモード燃費:15.4km/L

●タイヤサイズ:225/55R19

●車両価格(税込):457万8200円

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チェロキーの後継モデルとして日本に導入された、ジープ コマンダー。

ジープ コマンダー リミテッド 主要諸元

●全長×全幅×全高:4770×1860×1730mm

●ホイールベース:2780mm

●車両重量:1870kg

●総排気量:1956cc

●最高出力:125kW(170ps)/3750rpm

●最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1750-2500rpm

●トランスミッション:9速AT

●燃料・タンク容量:軽油・60L

●WLTCモード燃費:13.9km/L

●タイヤサイズ:235/55R18

●車両価格(税込):597万円

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