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変わったのは大胆マスクだけじゃなかった! BMW新型「7シリーズ」は快適性や走り味も激変 “BMWらしさ”は残っているか?

新型7シリーズが個性的なフロントマスクを採用した背景

「なんともすごい顔つきだなぁ」。BMWの新型「7シリーズ」のフロントデザインを見た人の多くは、そう感じるかもしれません。

 7シリーズはBMWの最上級サルーンで、メルセデス・ベンツ「Sクラス」やレクサス「LS」などがライバル。全長は5mを優に超え、車両価格は1000万円オーバーという、いわゆるハイエンドセダンです。

【画像】革新的な進化を遂げつつも“らしさ”はしっかり継承されているBMW新型「7シリーズ」を写真で見る(40枚)

 過去、このクラスのモデルは保守的な印象が強かったものですが、新型7シリーズはなぜこれほどまでに個性的なフロントマスクを採用してきたのでしょうか? 日本での発売から1年あまり。新型7シリーズの革新性に改めてフォーカスします。

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大胆なフロントマスクやシアター感覚のリアシート空間に目を奪われるが、しっかりとBMWらしい心地よい走りは継承している新型「7シリーズ」

 新型7シリーズのフロントマスクの秘密。事情通の人の中には「中国市場の影響」と指摘する人もいるでしょう。それも確かに大きな理由のひとつです。

 いまや中国は世界最大の自動車マーケットであり、単に販売台数だけでなく、高級車の売れ行きも世界ナンバーワンの市場となっています。富裕層が多く存在し、高級車が売れまくるため、BMWなど高級車ブランドの商品企画も自ずと中国を重視する形となります。

 中国のような巨大マーケットを重視するのはビジネスとしては当然のこと。そのため、中国の人の嗜好に合わせ、新型7シリーズがアクの強いフロントマスクとなったのも理解できます。

●最大のライバル「Sクラス」との関係性も大きく影響

 しかし、BMWが大胆なデザインを採用してきた理由は、それだけではありません。大きく影響しているのは、最大のライバルであるSクラスとの関係性でしょう。

 メルセデス・ベンツのSクラスは、新型7シリーズにとって最大のライバルであると同時に、ハイエンドセダンのセグメントにおけるトップセラーです。つまりこのセグメントは、世界中どこへ行ってもSクラスを中心に回っているといえます。

 そんな状況を打ち破るべく、7シリーズの存在感を高めるにはどうすればいいか? BMWは自問したはずです。Sクラスと同じ方向性では埋もれてしまいます。そのため彼らはフルモデルチェンジに際し、Sクラスとは違う方向にかじを切り、存在感を際立たせる道を選んだのです。

 そんなねらいが新型7シリーズのデザインにつながったと考えれば、個性的なデザインに込められた意図が見えてきます。

4枚のスイングドアすべてが電動で開閉する

 そんな新型7シリーズの見どころは、デザインだけにとどまりません。乗り込もうとすると、誰もがドアの動きに驚くことでしょう。なんと4枚とも電動で開閉するのです。

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 確かに日本は、世界で最も電動開閉式ドアの普及率が高い国です。ただし、日本で普及している電動ドアはスライドタイプ。しかし、新型7シリーズはスライド式ではなく、一般的なスイング式ドアを電動化しています。これは驚かずにはいられません。

 乗り降りする際はボタンに触れれば作動する仕組みで、ただただスマート。スイング式ドアが電動で作動するのは、ほかではロールス・ロイスのごく一部のモデルに採用されているくらいで、一般的な量産車では見たことがありません。

 なかには「もし車両の側方に障害物があったら接触するのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、心配は杞憂です。ドアが開く際にはボディサイドの周辺をソナーで検知。接触の恐れがある場合、接触しない位置までしか開かない仕組みとなっています。ちなみにソナーは超音波で、位置の計測はとても正確です。

●移動時間に映画などを見て過ごせるリアシート空間

 新型7シリーズのもうひとつのハイライトは、リアシート空間です。今回の試乗車にはルーフに吊り下げ式のワイドモニターが格納されていて、そのサイズは日本のミニバンでもちょっと見たことがない巨大サイズ。セダンのリアシート空間に31インチのモニターが備わっている姿は圧巻です。

 このモニターは通常、天井部分に格納されており、スイッチひとつで展開。開閉スイッチはドアのアームレストにあるタッチパネル等でおこないます。

 画面が展開されると同時にリアシートの横と後方のブラインドが下がり、映像を見やすい環境にしてくれるのもさすがです。目的地に到着するまでの移動時間を、映画などを見ながら過ごすことができる。新型7シリーズのリアシートはそんな贅沢な空間なのです。

 もちろんモニターの巨大さは、飛行機のファーストクラスどころの話ではありません。大画面、しかも8Kという高解像度。さらに臨場感あふれるサウンド……。新型7シリーズのリアシート空間は、まさに動くシアターといった印象です。おまけにAmazon Prime Videoなどに接続できるので、コンテンツが尽きることもありません。

快適な乗り心地の秘密はサスペンションにあり

 新型7シリーズの“方向性の変化”を実感できるのは、デザインやリアシート空間だけではありません。なんとドライブフィールの方向性も変貌を遂げていたのです。

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 シートの感触がソフトなのに加えて、とても乗り心地がいいのです。もちろん先代の7シリーズも乗り心地は良好でしたが、新型はさらに極上。その素晴らしいなめらかさは、極端にいうと「BMWらしくない」と思えるほどです。

 そんな快適な乗り心地の秘密は、サスペンションにあります。電子制御サスペンションの「コンフォート」モードの味つけが、従来モデルと比べて激変していたのです。

 とにかくソフトでひたすらコンフォートなその味つけには驚くばかりです。全席の乗員に対して抜群の快適性をもたらしてくれます。

●「スポーツ」モード時の走り味はまごうことなきBMW

 一方、「コンフォート」モードでは高速道路や峠道を走る際に減衰力が足りず、車体が船のように揺れてしまうこともあります。しかし、心配は無用。そんなときは「スポーツ」モードに切り替えればサスペンションが引き締まって車体を安定させ、BMWらしい走りを味わわせてくれます。

 日常領域や大切な人をリアシートに乗せる際には「コンフォート」モードで乗り心地を重視し、高速道路や峠道を走る際には「スポーツ」モードにする。大胆に“キャラ変”する電子制御サスペンションの味つけは、従来の7シリーズでは考えられなかったものです。

 しかし実は、昨今はメルセデス・ベンツの電子制御サスペンションもそういった味つけになっています。BMWもその動きに追従したということは、これが今後、プレミアムブランドのスタンダードとなる可能性が高そうです。

やはり7シリーズは出来のいいドライバーズカー

 そうした「コンフォート」モードの変化は、乗り心地以外の面でも感じられます。「コンフォート」モードはサスペンションがソフトなだけでなく、ステアリングの操作フィールも軽く、かつてのBMWからの変化を強く感じます。従来モデルから乗り換えた人は、BMWらしくないと感じるかもしれません。

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 しかし、それはあくまで「コンフォート」モードに限った話。「スポーツ」モードに入れるとシートのサイドサポートが体をしっかり支えてくれると同時にステアリングも重くなり、排気音はスポーティな響きになり、スポーツカーのような雰囲気へと変身します。

 そんな「スポーツ」モードの際のドライビングフィールは、まごうことなきBMWのそれであり、7シリーズらしいもの。大きくて重いにも関わらずキビキビとしたフットワークを見せてくれるため、ボディがひと回り小さく感じられます。

 さらに、エンジンもスポーティ感あふれるもので、5000rpmを超えてからの伸びと快音がもたらす高揚感は、走りを楽しめるクルマであることを実感します。

 やはり7シリーズは出来のいいドライバーズカー……メルセデス・ベンツのSクラスでは味わえないBMWの7シリーズならではの世界観がそこにはあります。

* * *

 個性的な顔つきに、自動ドアや後席シアターといったSクラスを超える装備、そしてソフトな乗り心地……。そんな新型7シリーズに関して、口の悪い人は「BMWは日和った」というかもしれません。

 しかし、走りの楽しさを知るドライバーなら、「スポーツ」モードの際の走りに別の印象を抱くことでしょう。大型サルーンなのにドライビングが楽しいという本来の7シリーズの世界観です。「やっぱり7シリーズは7シリーズだ」と実感するに違いありません。

 その革新性に驚かされる新型7シリーズですが、歴代モデルの美点はしっかりと受け継がれているのです。

●BMW 740i M Sports

 BMW 740i Mスポーツ

・価格(消費税込):1588万円

・全長:5390mm

・全幅:1950mm

・全高:1545mm

・ホイールベース:3215mm

・車両重量:2160kg

・エンジン形式:直列6気筒DOHCターボ

・排気量:2997cc

・変速機:8速AT

・エンジン最高出力:381ps/5500rpm

・エンジン最大トルク:520Nm/1850〜5000rpm

・モーター最高出力:18ps/2000rpm

・モーター最大トルク:200Nm/0〜500rpm

・サスペンション:(前)ダブルウイッシュボーン式、(後)マルチリンク式

・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ベンチレーテッドディスク

・タイヤ:(前)255/45R20、(後)285/40R20

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