近年は自動運転に始まりAI搭載などクルマの進化が著しい。よく耳にする真夏の車室内置き去り問題をテクノロジーの力で解決できる可能性も出てきた。ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市、CESの様子を見ていこう。
※本稿は2024年1月のものです
文/鈴木直也、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2024年2月26日号
【画像ギャラリー】2024年も見てきました!! 鈴木直也がアメリカを行く!! ラスベガスCES探訪記(12枚)
■元気な日系サプライヤー!! 2024年の日本は明るい!
2024年1月9~12日にかけて、ラスベガスで開催されたCES。鈴木直也氏が今回も訪れた
CESの魅力はいろいろあるけど、ぼくにとっていちばん面白いのは、なんといっても最新の技術トレンドが実感できること。
いま熱いのは、もちろんAI。ChatGPTの大ブレークで、クルマだけじゃなくいろんな業界でAIの現実的な活用がテーマになっている。
これまでも、クルマにアバター的なエージェントを載せてくる例はあったけど、ChatGPTによってそれが一気に進化したわけだ。
一方、数年前まであちこちでデモが行われていた自動運転は、もはやビジネスに直結していないと判断されたのか、あまり注目されなくなってきた。
また、BEVブームも一段落で、中国系BEVメーカーのシャオペンなんかBEVを「空飛ぶクルマ」にアレンジして展示。こうでもしないと注目してくれなくなったってことだね。
夢を実現するにはしっかりした技術の裏付けが要る。次項で紹介する技術展示は、どちらかというと地味めだけど、コスト、信頼性、量産性などが求められるクルマ用の新技術は、こういう地道なサプライヤーによって支えられているんだよね。
そういう意味で、2024年のCESで嬉しかったのは、日系のサプライヤーが元気だったこと。2024年の日本のクルマ業界の展望は、意外に明るいんじゃないかと思ったよ。
●VALEO
「いま何が必要か」という見極めが鋭いフランスのValeo。非接触充電もLiDARも手堅く押さえている
Valeoはフランス系のサプライヤーだけど、「いま何が必要か」という見極めが鋭い。
たとえば、非接触充電だったら最高出力を狙わずコストと使い勝手重視の低速型。LiDARもコストと性能のバランスでメーカーが採用しやすいもの。こういうコンセプトが徹底しているから、現実の採用例が多い。フランスっぽいよね。
・鈴木直也もビックリ度:★★☆☆☆
■これからはタイヤメーカーもソフトで勝負する時代に
●BRIDGESTONE&SUMITOMO
ブリヂストンのブース。これからはタイヤのマネジメントもウリにする時代だ
ブリヂストンと住友ゴムがよく似た提案を行っていた。多数のトラックを保有する運輸業者を対象に、そのタイヤ状態をセンサーで監視。それをクラウドで一元管理してトラブルを未然に防ぐというもの。
タイヤを売るだけではなく、トータルなタイヤマネジメントを売るのが、これからのタイヤビジネスみたい。
■バックミラーをセンサーの一等地として活用
●GENTEX
電子ミラーの世界シェア95%というGENTEXのブース
GENTEXは電子ミラーでは世界シェア95%という企業だが、もはや守備範囲はミラーにとどまらない。
・鈴木直也もビックリ度:★★★★☆
■住宅用蓄電池のECOFLOWはおしゃれデザインがウリ
●ECOFLOW
住宅用蓄電池のトップブランド、ECOFLOW。EV用車載電池を割安に調達できる中国系メーカーに勢いがある
北米では住宅用蓄電池の市場が大きく、EV用車載電池を割安に調達できる中国系メーカーの勢いが凄い。
なかでもECOFLOWはトップブランドといってよく、デザインのまとまりもいいしユニークな機能も満載。パワーコンディショナーの下に電池パックを積み重ねて増設可能で、最大90kWhまで拡張できるのは凄い。
・鈴木直也もビックリ度:★★★☆☆
■まるで人間相手に話しているみたい!? クルマへのAI導入がトレンド
●CERENCE
CERENCEは音声認識のトップメーカー。音声コマンドをテキスト化してクラウドのAIに送信し、ほとんど人間と対話しているような高度なやりとりを披露していた
音声認識のトップメーカーCERENCEは、音声コマンドをテキスト化してクラウドのAIに渡すことで、ほとんど人間と対話しているような高度なやりとりをデモ。
反応遅れ、コスト、不適切ワードのフィルタリングなど、いろいろ課題はあるにせよ、本格的な音声コマンド時代がもうすぐ来ることは間違いなさそうです。
■水素にも目配りを忘れないBOSCHのしたたかな戦略
●BOSCH
ちょっと前はBEV一辺倒だったドイツ系サプライヤーだが、今年のBOSCHは水素関連技術にも力を入れている。
FCスタックをはじめ、水素関連補機類をまとめた展示モデルが注目だった。BEVは着実に数を増やしているけど、ビジネスとしてソレ一点張りでは不安。個人的には、そんな印象でしたね。
■自動運転でレース。着実に進化してるんです
●INDY AUTONOMOUS CHALLENGE
あまりのクオリティの低さに一度はボツになった自動運転車でのレースも、少しずつ進化を見せているようだった
自動運転レーシングカーは、最初フォーミュラEの前座として開催が予定されていたが、あまりに完成度が低くボツ。イチから出直しでインディカーベースのマシン(ダラーラ製)を作り、ワンメイクでレースを構想するところまで漕ぎ着けている。
いちおう、ラスベガスやモンツアで実際に走ってるんで着実に前進してますね。
■大学生まれの不整地走行用車両。アメリカのいいところが出ている
●Clemson University
大学から生まれた不整地走行用自動運転車両。ベンチャービジネスにも適切に資金が流れてモノづくりが進むのはアメリカの長所だ
Clemson Universityという大学から生まれた不整地走行用自動運転車両。アメリカのいいところは、こういうベンチャービジネスにきちんとお金が流れて、実際のモノづくりが進むこと。
災害時などの用途を考えているみたいだけど、能登半島地震の直後だけに考えさせられるものがあるよね。
■自動車メーカーの温度感はどんなもの?
いまやモーターショーよりも注目度が高いCES。日本勢にも継続参加を期待したい
ホンダ“ゼロ”の発表でわかるように「なにか新しいことを発表するのならばCESが一番アピール効果が高い」というのが共通認識。以前はモーターショーだったが、CESが取って代わった感がある。
欧米勢はレギュラーが多いし、韓国中国勢も元気がいい。今後も目の離せないイベントであることは間違いないから、日本勢もネタがある時だけじゃなく、継続参加が好ましいね。