ホンダのグローバル・モデルである「アコード」。その最新モデルである11代目が3月8日から発売となりました。どのようなクルマなのか? その走りは? など実際に試乗したレポートをします。
世界市場で人気のホンダを支える大きな柱
ホンダからミッドサイズ・セダンの新型アコードが発売されました。1976年誕生の初代から数えること11代目。「レジェンド」なき今、ホンダのセダンのフラッグシップとなるモデルです。
ちなみに日本におけるセダン市場は非常に小さくなり、ホンダが売るセダンは、この新しいアコードと「シビック」(ハイブリッドとタイプRを含む)の2車種のみという寂しい状況です。しかも、シビックの月間の販売目標はわずか1300台(シビックが1000台、シビックハイブリッドが300台)。新しいアコードも、その販売目標は月間200台とごく少数。
シビックもアコードも歴史あるモデルですが、日本における現在の存在感は、残念ながらとても小さなものなっています。
しかし、世界市場に目をやれば、見える風景はまったく異なります。最新のアコードは、2023年より北米市場で先んじて発売されていますが、その販売は順調です。具体的に数字を挙げればアコード(ハイブリッド)は2023年に9万6323台を売り上げました。2023年にアメリカで最も数多く売れたハイブリッドとなる「CR-V」(19万7317台)にアコード(ハイブリッド)をあわせると、ホンダ・ブランドの販売台数の1/4以上になるとか。
ざっくり言えば、アメリカにおけるホンダの販売台数の1/12がアコード(ハイブリッド)なのです。
また、新型アコードは、北米だけでなく中国やASEANでも販売されています。中国やASEANでは、日本と違ってセダンは今も人気ですから、当然、アコードは日本よりもたくさん売れています。
つまり、日本における存在感こそ小さいものの、ホンダにとってアコードは非常に重要なモデルとなるのです。ちなみに、日本で発売されるアコードは、タイで生産されたものが輸入されます。日本での販売価格は、モノグレード(単一モデル)構成で、FFのハイブリッドが544万9400円となります。
伸びやかで堂々としたスタイルとクリーンなインテリア
実物の新型アコードを目にした最初の印象は「存在感が強い」というものでした。ファストバックでクーペ風の伸びやかなフォルムに、シンプルだけど強い意志を感じさせる顔つき。かなりワイドで大柄です。
最初にミッドサイズ・セダンだと説明しましたが、昨今のクルマの大型化もあり、新型アコードのサイズは、全長4975×全幅1860×全高1450mmもあります。ちょっと前のラージクラス・セダンと言えるほどのサイズ感です。500万円を超す、フラッグシップにふさわしい堂々としたルックスと言えるでしょう。
インテリアは、インパネを網目のような構造が左右に走るデザイン。これはシビックに通じる雰囲気があります。12.3インチのセンターディスプレイと、10.2インチのデジタルグラフィックメーター、11.5インチの大型ヘッドアップディスプレイという構成は、今どきの最新モデルとしては、オーソドックスなスタイルと言えます。シートはフラッグシップならではの本革で、ホールド性も良くスポーティーなしつらえです。
内外装デザインは全体として「端正で洗練されている」という印象です。ただし、きらびやかさや派手さ、豪華さはありません。
エンジンのビートをバックに軽快な走り
走り出して、とにかく驚きました。何がどうしたかと言えば、「まるでエンジン車のよう」だったからです。ボリュームは小さいものの、しっかりと4気筒エンジンの粒の揃ったサウンドが耳に届きます。しかも、アクセルの操作にあわせてエンジン回転が高まり、シフトアップやキックダウンのような音の変化もあります。ステアリングの裏にあるパドルを操作すれば、まるでシフトダウンをしたような減速もできます!
しかし、新型アコードはハイブリッド車なのです。しかも、搭載される「e:HEV」というシステムは、走行シーンの大多数をモーターで走行します。エンジンの力を直接に使うのは、高速域などごく一部。ほとんどの領域においてエンジンは発電に徹しているはずなのです。
つまり、アクセル操作にあわせてエンジン回転数を細かく変化させる必要はないし、シフトアップやキックダウンを模すような回転変化をさせることも本来はありえません。
ところが、ホンダは新型アコードのために、あえてエンジン車風の味付けをしていたのです。2022年に発売された「シビック ハイブリッド」でも、同様の味付けをしていましたが、新型アコードでは、ハイブリッドシステムを進化させ、さらにエンジン車風の味付けを濃くしてきたのです。これには驚きました。
また、パドルシフトは回生ブレーキの効き目を変化させるものですが、新型アコードでは、より減速力を高め、効き目の段数も6段へと増やしています。このことで、まるでAT車のエンジン・ブレーキのように使うことができるのです。
コーナーをクリアするたびに感じる楽しさ
新型アコードに使われる駆動用モーターは、最高出力135kW(184馬力)・最大トルク335Nm。主に発電を行ない、一部で駆動と駆動アシストを行う2リッターのエンジンの最高出力は108kW(147馬力)・最大トルク182Nm。ミドルセダンとしては、そこそこのスペックですが、とりたてて高性能というわけではありません。
とはいえ、その走りはなかなかに楽しいものでした。ハンドリングは素直で狙ったラインを気持ち良くトレースします。そのとき、アクセル操作に対して生み出されるパワーが、エンジン音としてフィードバックされます。コーナーをひとつクリアするたびに、車体の大柄さを忘れる一体感を感じることができました。
また、シフトボタンの後ろにはドライブモード・スイッチがあって、スポーツからノーマル、コンフォート、エコなどを選ぶことができます。モードによってステアリングのしっかり感や、サスペンションの硬さなどが変化します。ただし、変化の幅はそれほど大きいものではありませんでした。
グーグルのサービスが車内で使用可能に!
進化したホンダセンシングをはじめ充実の最新機能
新型アコードの最後のトピックは先進機能の充実です。
そのひとつが、ホンダ初となるグーグルサービスの搭載です。Googleアシスタント、Googleマップ、Google Playを車内で使用できます。普段使っているスマートフォンと同様にナビや音楽の再生などができるようになりました。
また、ADAS(先進運転支援システム)も進化しています。それが「ホンダセンシング360」の採用です。これは、フロントカメラと5台のミリ波レーダー(フロントと、クルマの四隅)を装備することで、クルマの全周囲360度をセンシングするという技術です。従来からのホンダセンシングに加え、前方交差車両警報や車線変更支援機能などが加わっています。もちろん、国内のホンダ車としては、最も進んいる充実した機能となります。
ホンダらしいスポーティさとフラッグシップの貫禄
新型「アコード」を試乗してみて思ったのは「ホンダらしいクルマだな」ということです。フラッグシップらしく、堂々としたスタイルがあり、最新機能も充実しています。しかし、華美にならず端正さが前面に出るというのはホンダならではでしょう。
また、ハイブリッド車であり、進化した電動車でありながらも、エンジンの価値を重視して、スポーティで楽しい走りを実現しているのも、ホンダらしい部分なのではないでしょうか。
セダン好きで、ファンな運転が好きだという人にオススメしたいクルマです。
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