◆カーマニア大賞の栄冠はどのクルマに?
ロシアによるウクライナ侵攻、資源高、円安、物価上昇……。コロナ禍だけでも大変なのに、2022年もいろんなことがありました。サッカーW杯は覚えているけど北京冬季五輪の結果は忘れてしまった人もいるでしょう。日本は金メダルを3個獲得しました。そんな2022年の新車を総括しつつ、カーマニアに刺さったクルマを選んでみました!
渡辺敏史×清水草一
永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
◆清水草一×渡辺敏史「2022年、自動車業界ゆく年くる年」
清水:2022年の自動車業界の流行語大賞は、ズバリ「納車待ち」かな。
渡辺:買いたくても買えないクルマがこんなにたくさん出たなんて、史上初でしたね。
日産・フェアレディZ
清水:新型フェアレディZの素晴らしさには涙が出たけど、発売前に売り切れて買えないんじゃどうにもならない。
渡辺:半導体不足もありますけど、スポーツカーは売れないっていう長年のトラウマで、生産台数を絞りすぎたんでしょうかね。
◆カーマニアの秘孔を突かれた
マツダ・ロードスター 990S
清水:その点、ロードスター990Sは素晴らしい! あれだけの大傑作でありながら、納車待ちがたったの5か月!
渡辺:僕も本気で買おうかと思いました。990Sこそ、軽量・軽快というロードスターの美点を徹底的に煮詰めた、究極のグレードでしょう。
渡辺:崇高ですよね。
清水:軽さを優先するために、ナビも付けられないんだから。フェラーリやポルシェの新車に、何百万円もオプションを付けてる富裕層に、990Sの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ!
渡辺:990Sこそ、2022年のカーマニア大賞ですね。
◆<庶民大賞>
トヨタ・シエンタ
清水:続いて庶民大賞。オレはシエンタを推すよ。あれ1台で近所のお買い物から車中泊までこなせる。デザインもかわいいし燃費もいい。コスパ最高!
渡辺:僕はアルトですね。値上げが当たり前の世の中で、ナビを付けて100万円切りの価格設定にシビレました。スズキの清貧力は健在です。
清水:アルトは究極の庶民派だけど、人間、あそこまで悟れるもんじゃない。庶民だからこそ、いろいろ盛りたくなるんだから。
◆あえてアルトに乗るのは…
スズキ・アルト
渡辺:まあ確かに、あえてアルトに乗るのは、こじらせ切った世捨て人かもです。
清水:アルトは、庶民にはちょっと高尚すぎる!
渡辺:じゃあ、庶民大賞はシエンタでいいです(笑)。
◆<セレブ大賞>
清水:最後にセレブ部門を。オレはレンジローバーだな。
渡辺:あのデザインの美しさはすごいですね。
清水:乗り心地もパワーも最高でしょ? レンジローバーがあれば、もはやロールスロイスはいらない!
渡辺:僕はフェラーリ・プロサングエです。
清水:そう来たか!
フェラーリ・プロサングエ
渡辺:フェラーリの純V12ニューモデルは、あれが最後になるかもしれません。
清水:まさかV12オンリーで出すとは思わなかった。しかも生産台数を絞って、世界中のセレブたちの飢餓感を煽りまくってる。
渡辺:ポルシェやランボルギーニのSUVみたいにバカバカ売らずに、ひたすらプレミアム性を高める戦術でしょう。
◆驚いたのは…
清水:なによりも驚いたのは、日本向けの価格がメチャ安かったこと! たったの4760万円とはビックリ!
渡辺:本国価格が39万ユーロですから、確かに安いですね。
清水:本国で5600万円くらいするのに、日本はそれより1000万円近く安いんだから信じられない!
渡辺:実はiPhoneも、日本が世界で一番安いんですけど、それと似てますね。
清水:日本は貧乏国になったけど、長年フェラーリのお得意さまだから、優遇してくれたのかな?
渡辺:落ちぶれた馴染み客に安く飲ませてくれるスナックみたいですね。
渡辺:世も末な感じがいいですね。
清水:それにしても2022年は、出るクルマ出るクルマ、いいクルマばっかりで褒め疲れた。2023年はダメグルマの登場に期待しよう!
渡辺:いいクルマばっかりだと、メリハリがないですからね、ウフフ~。
◆▼カーマニア大賞
日産・フェアレディZ vs マツダ・ロードスター 990S(Win)
新型フェアレディZ(524万~696万円)は、発売1か月以上前の予約段階で数年分(?)が売り切れ受注停止に。一方ロードスターは、軽量スポーツバージョンの990S(295万円)を追加。これが大傑作だった
◆▼庶民大賞
(Win)トヨタ・シエンタ vs スズキ・アルト
コンパクトミニバンのシエンタ(195万~310万円)は広さ、走り、燃費、すべてのバランスがよく発売即大ヒット。アルト(94万~137万円)も安くて性能は十分だが、清貧すぎて庶民はついていけず?
◆▼セレブ大賞
ランドローバー・レンジローバー vs フェラーリ・プロサングエ(Win)
レンジローバー(1687万~3222万円)の超絶高級車ぶりに驚嘆。しかしフェラーリ・プロサングエの日本向け価格設定(4760万円)にはもっと驚嘆。フェラーリ本社が何を考えているかは完全に謎
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com