◆三菱エアトレックターボR
三菱エアトレックターボR
クルマ好きの腕時計投資家の斉藤由貴生です。
これまで、私は「買った値段と同じ額」で売ることを意識した結果、免許を取ってから数十台のクルマを所有してきました。
ロールスロイスから日産マーチまで、数々の中古車を買った経験がある私ですが、三菱車は「買った後の満足度が高い」と思っています。というのも、数十台もクルマを買うと分かってくるのですが、クルマには「当たり外れ」があるという点。クルマに当たり外れがあるというのは、多く知られていますが、数十台買った経験上「ハズレ率」はまあまあ高いと実感しています。
メーカーによってですが、特にモデルチェンジから間もない時期に製造されたクルマのハズレ率は高く、気持ち悪い動きをすることが多々あります。例えば、アクセルを踏んだりハンドルを切った際の伝わり方が「一拍ある」というのは、長く乗っていると大きなストレスとなります。
しかし三菱車の場合、そういったハズレ率が低いのです。私はこれまで、プラウディア(初代)、デボネア(3代目)、コルトプラスラリーアート、パジェロ(4代目)、エアトレックターボRに乗ったことがありますが、その全てが「ハズレ」ではありませんでした。
プラウディアとパジェロ、コルトプラスラリーアートは、デビューした年に製造された個体、いわゆる初期モノだったわけですが、それでも「ハズレ」ではなかったのです。
ですから私は、三菱車はとても優秀だと思っています。
また、三菱車には「コルトラリーアート」や「エアトレックターボR」、「ランサーラリーアート」など、謎のハイパワーグレードが存在。クルマ好き目線では気になる存在が多々あるわけです。
ということで、今回私は、そんな謎の三菱車「エアトレックターボR」を紹介したいと思います。
斉藤由貴生が所有してきた三菱車
◆エアトレックとは
デビューした2001年当初、2リッターの直4エンジン、FFもしくは4WDというラインナップだったのですが、翌年2002年には、直4ターボの「ターボR」が登場。これには、ランサーエボリューションと同型番の4G63ターボが搭載されており、240馬力、トルクは35kgf·mという出力を備えています。
エアトレックというクルマに対して「ハイパワー」という印象はありませんが、そういった車種にもハイパワーエンジンを搭載したというのがツボであります。
さらに興味深いのは、当時の三菱が、この「ターボR」を“上級のハイパワーグレード”として設定したわけではないという点。新車価格は、229万5000円となっており、ノンターボの2リッター4WDモデルに対して、プラス30万円程度で購入可能という価格設定だったのです。
そういったこともあってか、現在中古で販売されているエアトレック7台のうち4台がターボR。また、ディーラー中古車が1台あるといった状態となっています。(11月17日カーセンサー参照)
エアトレックターボRは2002年から2005年頃までに生産された車種。こういった年式の中古車をディーラーが1年保証をつけて販売しているのは「グッとくる」といえます。
SUVながら、全高が1550mm以下のため、立体駐車場に駐車可能
◆エアトレックの印象
エアトレックターボR
私は、最近まで約1年に渡ってエアトレックを所有。実際に所有した経験をもとにした印象をお伝えしたいと思います。
☆速さ
まず、ターボRの速さですが、都内下道の信号ダッシュの印象としては、「そこそこ」といった感覚。同じく三菱のターボエンジン(4G15ターボ)を搭載するコルトプラスラリーアートのほうが、都内信号ダッシュは楽という印象でした。
ただ、高速道路となると、エアトレックほうがコルトラリーアートよりも圧倒的に早く、ランエボと同じエンジンを搭載しているという“所有する喜び”を感じることができたといえます。ランエボよりもデチューンされているとはいえ、トルクが35kgf·m。これは、車重2トン近い大型高級サルーンのプラウディアB仕様と同じ数値(新車価格510万円)。また、2010年式メルセデス・ベンツのS350(新車価格1050万円)とも同等であるのです。
☆操作性
☆乗り心地
乗り心地は非常に固く、不満になるレベル。ちょっとした突起でも「ゴツン」と来る感じがあり、乗り心地は“かなり悪い”といえます。そうであるにも関わらず、首都高といったカーブの多い道では足がビシッとしている感覚がそこまで高くないため、かなり不満でした。
私は、ワンオーナーかつ走行距離が5万キロといった程度の車両を買ったのですが、ショックアブソーバーがだめになっているのか疑ったほど。しかし、ショックアブソーバーといった足回りに問題はありませんでした。新車時のネット掲示板をみても「乗り心地が悪い」という声が多かったため、これが本来の性能なのだと思います。
乗り心地が悪いのにコーナリング性能がそこまで高くないというのは、最も不満なポイントです。ショックアブソーバーを変更したりしてチューニングしたいと思いました。
☆使い勝手
しかし、その一方で乗降性や見晴らし、運転間隔の良さといった“使い勝手”はとても良く、乗っていて快適な部分もあります。
また、エアトレックに限らず、三菱車全体にいえることですが、シートが硬めで疲れないのが良い点。こういった三菱車のシートは、距離や経年劣化によってヘタるということも少なく、優秀だと思います。
そして、4WDは三菱の得意分野。様々な雪道を走りましたが、とても満足した走りでした。
クルマのサイズが全長4500mm程度とコンパクトで、全高も1540mm以下。都内の立体駐車場から、地方の細い道、はたまた雪国まで、どこにでもストレスなく行けるというのがエアトレックの良さだといえます。
ワンオーナー車を購入。下回りはとてもきれいだった。
◆燃費はリッター4km台…
☆居住性
全高が1540mmに抑えられているエアトレックターボRですが、SUVというだけあって車内は広く感じます。特に、天井は高く、フロントガラスも広め。このパッケージで全高が1550mm以下に抑えられているというのは感動モノだと思いました。
さらに、後席の足元はとても広く、リクライニング機能も備えています。エアトレックの後席には何人も人を乗せたことがあるのですが、「広い」と言われたほど。皆さんから、好評でした。
本体価格230万円のクルマという観点では、エアトレックの質感は高め。プラスチック部品のしっかりした感じにも好感が持てますし、ハンドルとシフトノブが本革巻きというのも良い点です。ちなみに、ハンドルが本革巻き仕様多めというのも三菱の良さ。エアトレックに限らず、iといった軽自動車でも本革巻きステアリングを装着している中古車が珍しくありません。
☆収納
後席が広い反面、荷室部分は短め。全長約4500mmのうち、カーゴ部分への割当が低いといえます。そのため、4人乗車して荷物を積むという場合は、ちょっと不安な部分があるかもしれません。ただ、2名乗車時は、リアシートがたためるので、軽い引っ越しができるぐらいの空間になります。
☆燃費
燃費は非常に悪く、これまで私が乗ってきたクルマの中でも最悪の部類。都内下道を走るとリッターあたり4km台を叩き出すということが珍しくありません。それでいてタンクの容量が小さいため、ガソリンスタンドに行く頻度は高めでした。
ロールスロイスのような超高級車であればリッターあたり4kmというのは「仕方がない」と思える部分が多少はあるものの、エアトレックのように“オールラウンダー”というキャラクターを持っている場合、この燃費はかなりストレスが高いポイントになります。
◆エアトレックターボRはおすすめか?
ランエボと同じ4G63ターボエンジン。インタークーラーはエンジン上に配置される。(ランエボは前置き)
エアトレックターボRは、クルマ好き目線では「気になる車種」だといえるでしょう。
では、2023年の今、このクルマはどのような方におすすめなのか?
私は、カーマニアのセカンドカーに最適だと思います。
エアトレックは、約20年落ちという現在の条件でもストレスなく乗ることができるキャラクター。それでいて、オールラウンダーという使い勝手の良さと、ランエボと同じエンジンというような変態性を備えているため、カーマニアにはかなりおすすめな1台だといえます。
例えばですが、メルセデス・ベンツのW124に乗っているけれども雪道に行きたいと思っている方がいたならば、セカンドカーとしてエアトレックターボRはかなり良いと思います。
ディーラーの1年保証付き個体でも、現在、総額約75万円で購入可能。エンジンも2リッターであるため、ハイパワーながら税金も安め。駐車場も選ばないため、セカンドカーとして持つには抜群の条件だといえるでしょう。
【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある