ホンダ・レーシング渡辺社長、本田技研工業 青山専務を中心に2輪選手8名、4輪選手13名による記念撮影
Hondaは12月12日、本田技研工業本社ビル1F「Honda ウエルカムプラザ青山」にて、2023年のモータースポーツ活動計画に関する発表会を開催しました。2輪・4輪の両方に参戦するHondaの詳しい選手・チーム体制をご紹介します。
モータースポーツは人と技術のために必要不可欠!
2023年の参戦体制はこちら
本田技研工業 取締役 執行役専務 青山真二氏
発表会冒頭、本田技研工業の青山真二取締役 執行役専務が「Hondaは、創業者である本田宗一郎が技術で世界一になることを求めて1959年のマン島TTレースに初参戦して以来、世界中のさまざまな2輪・4輪レースに参戦し続けてきました。多くの先人たちが世界を舞台に戦う中で、何度難題にぶつかっても、あきらめずに「挑戦」を続けることでそれを克服し、勝利を積み重ねてきました。モータースポーツにおいては、この姿勢こそが人と技術を磨くためにも必要不可欠であり、その活動の根源にあるものだと言えます」とあいさつをしました。
モータースポーツのカーボンニュートラル化に取り組むと語る本田技研工業 取締役 執行役専務 青山真二氏
また、カーボンニュートラルの実現を命題とし、今後はモータースポーツフィールドを積極的に使い、レース活動においての実用化に向けて取り組みを強化すること、バイクを皮切りに電動車両のレース投入も検討していくそうです。
ホンダ・レーシング(HRC)新体制2年目の年であると語る本田技研工業 取締役 執行役専務 青山真二氏
そして、2022年はホンダ・レーシング(HRC)がこれまでの2輪レース活動機能に加えて4輪レース活動も担う新体制となりました。これも、より強いレースブランドを目指してのこと。2輪と4輪のレース活動を束ねることで、人と技術、両面での交流が可能になり、シナジーを目指した活発な活動ができるようになったと振り返りました。それぞれの分野の技術やノウハウが相互連携することで、レース現場で少しずつ効果が出てきているそうです。
「2023年も世界中のモータースポーツファンの皆様やHondaファンの皆様、そしてお客様のご期待にお応えし、夢や感動をお届けできるよう、Hondaは引き続きモータースポーツ活動に力を注ぎ、チャレンジを続けてまいります」と話を締めました。
ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏
続いてホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏が、2022年シーズンを振り返りながら、今後の展開について語りました。
2022年シーズンを振り返る株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏
「まず、2輪について。2022年のFIMロードレース世界選手権(MotoGP)では未勝利に終わり大変悔しいシーズンとなりました。後半戦では4度目の手術により戦列を離脱していたマルク・マルケス選手が復帰し、表彰台を獲得しました。しかしながら、FIMモトクロス世界選手権(MXGP)ではティム・ガイザー選手が、FIMトライアル世界選手権シリーズ(TrialGP)ではトニー・ボウ選手が、それぞれチャンピオンを獲得しており、MotoGPのタイトル奪還は最重要課題のひとつです」とのこと。
F1の状況について語る株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏
Hondaとしては撤退しているFIAフォーミュラ・ワン世界選手権(F1)においては、レッドブルグループであるScuderia AlphaTauri(スクーデリア・アルファタウリ)とOracle Red Bull Racing(オラクル・レッドブル・レーシング)にパワーユニット(PU)を供給しているRed Bull Powertrains(レッドブル・パワートレインズ)をHRCが支援しており、ドライバー・コンストラクター両部門制覇に貢献したこと、そして2023年も支援を継続すると発表しました。車両にはHondaのロゴも貼られます。
さらに2026年から導入される新PUの製造者登録をしたことを明らかに。ただし、製造者登録がすぐさまF1の再参戦につながるというわけではなく、引き続き頂点であるF1での研究を加速させていくために製造者登録をしたとのことでした。また、今まで製造登録者名が本田技研工業であったのに対し、今回はホンダ・レーシングである点も異なる部分です。
国内モータースポーツについて語る株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏
国内レースでは、SUPER GTのGT500クラスはチーム体制を刷新して3年ぶりとなるタイトル奪還に挑みます。また、2022年シーズンに連覇を達成した全日本スーパーフォーミュラ選手権では、新たにアメリカのホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)のスカラシップを獲得したドライバーが参戦するなど新たなドライバーも迎え、三連覇を狙っていくと渡辺氏。
そのほか、北米のインディカー・シリーズに参戦する6チーム15台に、HPDを通じてエンジンを供給。IMSA ウェザーテック・スポーツカー選手権では、HPDが供給するAcura(アキュラ)ブランドのマシン「ARX-06」で2つのチームを参戦させるようです。
カーボンニュートラルについてより前向きに取り組むとする株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏
バイクでは、国内2輪のMFJ全日本選手権でカーボンニュートラルが始まるなど、ホンダ・レーシングとしてカーボンニュートラル化に一層取り組むことを表明しました。すでにSUPER FORMULAなどで実験が始まっていますが、バイクレースでも開始するのです。
HRCが開発しているCR ELECTRIC PROTO
エンジンの代わりにモーターを搭載する
左側からモーターを見た様子
CR ELECTRIC PROTOの右手側
CR ELECTRIC PROTOの左手側。シフトらしきボタンがある
CR ELECTRIC PROTOの左足部。シフトレバーはない
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また、モトクロス競技ではEV車両を開発。テストとして投入する考えがあることを明かしました。会場にはCR ELECTRIC PROTOが展示され、取材陣の注目を集めていました。
ドライバー育成プログラムについて語る国内モータースポーツについて語る株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏
ドライバー育成にも力を入れるとのことで、「2輪においては、2023年も引き続きMotoGPのMoto2・Moto3クラスに参戦するHonda Team Asiaの活動を継続するとともに、若手育成のプログラムとしてIDEMITSU Asia Talent Cup(イデミツ・アジア・タレント・カップ)を引き続き活用し、世界で活躍できるライダーのさらなる発掘・育成に取り組みます。4輪においては、ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)として、欧州のフォーミュラカテゴリーや、日本のFIA-F4、Super Formula Lightsなどに育成シートを用意し、選手育成の環境をより一層強化します。また、Red Bullとの育成に関する協力関係も継続・強化します。欧州ではFIA-F2に加えて、英国GB3へも日本人ドライバーの育成派遣を共同で行なう計画です」と明かしました。
バイクのワンメイク車両を発売
CBR250RRのレース車両を発売すると発表
一般向けとして、HRCワンメイクレース「CBR250RR Dream Cup」をはじめ、各地で開催されている250㏄クラスのレースに出場可能な「CBR250RRレースベース車両」を3月に発売することを発表しました。
※以下のCBR250RRの写真はすべてサーキット走行に必要な部品を組み込んだもので、実際の販売車両とは異なります。
CBR250RRレースベース車両
CBR250RRレースベース車両のサイドビュー
CBR250RRレースベース車両のリアビュー
クイックシフターを標準装備
左側のブレーキ部
エンデュランスのマフラーが取り付けられていた
ハンドル・メーターまわり
右手ハンドル部
左手ハンドル部
「CBR250RRレースベース車両」は、エンジン出力アップとトラクションコントロール(HSTC)を装備した公道仕様のCBR250RRをベースに、保安部品を取り外し、専用のECUやエキゾーストシステム、さらにクイックシフターやレース用ワイヤーハーネスを標準装備したサーキット走行専用車両になります。
シビック TYPE R(FL5型)用レーシングパーツを開発すると発表!
4輪参加型レースを身近にするアイテムを投入していくという
さらに、ホンダ・レーシングの渡辺社長は今後FL5型シビック TYPE R用レーシングパーツをリリースすると明言。このHRCパーツは、あくまでレース用パーツだそうで、公道向けパーツとしてのリリースの予定はないようです。そして、開発の場として2023年のスーパー耐久シリーズのST-Qクラスに参戦することを発表。ST-Qクラスというと、自動車メーカーがバイオフューエルや水素燃料を使った車両で実証実験をしているクラスですが、その予定に関してはコメントを避けました。
![honda、2023年のバイクとクルマのレース参戦体制を盛りだくさんな内容で発表!](https://cdn.jp.topcarnews.info/wp-content/uploads/2022/12/18204144/8474591563be7cb6f90bc0cf84b04240-167134570413871.jpg)
バイクレースの参戦体制
それでは2輪から来年度のHondaワークス&サポートチームとそのライダー&ドライバーの体制をご紹介しましょう。なお情報は12月12日現在のものです。
Moto GPに参戦する4選手
まずはFIMロードレース選手権。MotoGPはRepsol Honda Teamから#36 ジョアン・ミル、#93 マルク・マルケス。LCR Honda IDEMITSUから#30 中上貴晶、LCR Honda CASTROLから#42 アレックス・リンスが参戦。
Moto 2、Moto3に参戦する4選手
Moto2は、IDEMITSU Honda Team Asiaから#79 小椋 藍、#35 ソムキアット・チャントラ。Moto3はHonda Team Asiaから#72 古里 太陽、#64 マリオ・アジが参戦。
FIMスーパーバイク世界選手権(WSBK)に参戦する4選手
CBR1000RR-R FIREBLADE SPを使うFIMスーパーバイク選手権(WSBK)は、Team HRCから、#7 イケル・レクオーナ、#97 チャビ・ビエルゲ。MIE Racing Honda Teamから#35 ハフィス・シャーリン、TBA エリック・グラナド。CBR600RRを使うWSSPは、MIE MS Racing Honda TeamからTBA タラン・マッケンジー、TBA アダム・ノロディンが参戦。
CBR1000RR-R FIREBLADE SPを使うFIM世界耐久選手権は、#1 F.C.C. TCR Honda Flanceから、ジョシュ・フック/マイク・ディ・メリオ/アラン・テシェの3名が参戦。
FIMモトクロス選手権(MXGP)に参戦する2選手
FIMモトクロス選手権(MXGP)は、Team HRCから#70 ルーベン・フェルナンデス、#243 ティム・ガイザーが参戦。
FIMトライアル世界選手権シリーズ(Trial GP)に参戦する2選手
FIMトライアル世界選手権シリーズ(Trial GP)からは、Repsol Honda Teamから、#1 トニー・ボウ、#38 ガブリエル・マルセリが参戦。
FIM世界ラリーレイド選手権(ダカールラリー2023)に参戦する4選手
ダカールラリーに参戦するCRF450RALLY
CRF450RALLYのペースノート
12月31日にスタートするFIM世界ラリーレイド選手権(ダカールラリー2023)には、Monster Energy Honda Teamから#2リッキー・ブラベック、#7 パブロ・キンタニラ、#11 ホセ・イグナシオ・コルネホ、#42 エイドリアン・ヴァン・ベバレンの4名が参戦。
AMAスーパークロス選手権に参戦する2選手
1月7日から始まるAMAスーパークロス選手権には、Team Honda HRCから#23 チェイス・セクストン、#45 コルト・ニコルズの2名が参戦します。
MFJ全日本ロードレース選手権(JRR)に参戦決定している選手
国内最高峰のJSB1000クラスには、SDG Honda Racingから#15 名越哲平が参戦。
MFJ全日本モトクロス選手権(JMX)のIA1クラスに参戦する2選手
MFJ全日本モトクロス選手権のIA1クラスには、Honda Dream Racing Bellsから#4 大城魁之輔、#6 大倉由揮が参戦。
MFJ全日本トライアル選手権(JTR)のIAスーパー(IAS)に参戦する2選手
MFJ全日本トライアル選手権(JTR)のIAスーパーには、TEAM MITANI Hondaから、#小川友幸、#3氏川政哉が参戦。小川は前人未踏のV12を達成しており、今シーズン国内全カテゴリ最多のV13に挑戦します。
なお、ほかの日本選手権については、後日別途発表するとのことです。
会場には日本人ライダーが集合。意気込みを語りました。
自動車系レースの参戦体制
続いて4輪です。まずは全米INDYCARシリーズから
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気になるのは、インディ500を2度制覇している佐藤琢磨選手。現時点ではチームおよびカーナンバーは未定とのことですが、現在契約の最後の大詰めとのこと。吉報を待ちましょう。
IMSA ウェザーテック・スポーツカー選手権
続いて全米で開催されているIMSA ウェザーテック・スポーツカー選手権。最上位のDPiクラスには、#10 Wayne Taylor Racingからリッキー・テイラー/フィリペ・アルバカーキ組、#60 Meyer Shank Racingからトム・ブロンクビスト/コリン・ブラウン組が戦線。
そして、日本一速い男を決める「全日本スーパーフォーミュラ選手権」は、大きくラインアップが変わりました。
スーパーフォーミュラ参戦ドライバーラインアップ
TEAM MUGENからは、#1 野尻智紀と昨シーズンF2 3位のニュージーランド人#15 リアム・ローソン。DOCOMO TEAM DANDELION RACINGから#5 牧野任祐と昨年の全日本スーパーフォーミュラ・ライツの2位、#6 太田格之進。ThreeBond Drago CORSEから#12 福住仁嶺。B-Max Racingから#50 松下信治と、フォーミュラ・リージョナル・アメリカ・チャンピオンの#26 ラウル・ハイマン。TCS NAKAJIMA RACINGから#64 山本尚貴、#65 佐藤蓮となりました。
リアム・ローソン選手
ラウル・ハイマン選手
注目のリアム・ローソンとラウル・ハイマン。ローソンはF2で3位の実力。F1に近いドライバーです。一方、ラウル・ハウマンは26歳でフォーミュラ・リージョナル・アメリカのチャンピオンです。いずれもステップアップ、武者修行としてSFに参戦してきました。2名ともすでにテストでSFに乗っており、コーナリング速度の高さに驚いていました。
さらなる激震はSUPER GTです。GT500クラスはTeam MUGENがARTAのパートナーとなり、GT500クラスに2台体制で参戦します。
GT500クラスのラインアップ
ARTAは、#8が野尻 智紀/大湯 都史樹組、#16が福住 仁嶺/大津 弘樹組。#17 Astemo REAL RACINGが塚越 広大/松下 信治組。#64 Modulo Nakajima Racingが伊沢 拓也/太田 格之進組。そして#100 TEAM KUNIMITSUが山本 尚貴/牧野 任祐組という布陣。
太田 格之進はGT300の#18 TEAM UPGARAGEからステップアップという形になります。
野尻 智紀/大湯 都史樹組
福住 仁嶺/大津 弘樹組
塚越 広大/松下 信治組
伊沢 拓也/太田 格之進組
山本 尚貴/牧野 任祐組
GT300クラスは、#18TEAM UPGARAGEが小林 崇志とF4チャンピオン小出 峻組が参戦します。
集まった4輪のドライバーたち
会場には4輪ドライバーが終結。昨年スーパーフォーミュラチャンピオンの野尻選手が、中嶋 悟さん以来となる国内トップフォーミュラ3連覇を目指すことを言及。「なかなか挑戦できる人はいないですし、吹っ切って楽しもうと思っています」と語りました。
決意を表す野尻選手
2023年は2輪も4輪も運営するHRC
シナジー効果について語るホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺 康治氏
さて、今シーズンは2輪だけでなく4輪も運営することになったホンダ・レーシング。会見では本田技研工業の青山専務、ホンダ・レーシングの渡辺社長ともに「2輪と4輪のシナジー効果」という言葉が出ていました。それぞれで得たノウハウを投入していくということなのですが、実際の現場ではどうなのでしょうか? その課題について、ホンダ・レーシングの常務取締役で、4輪レース開発部 部長の浅木泰昭氏が胸の内を吐露しました。
ホンダ・レーシング常務取締役 4輪レース開発部 部長 浅木泰昭氏
「我々が今課題と考えているのは、シミュレーションの分野です。それは空力しかり燃焼の分野でもしかりです。2輪のシミュレーションと4輪のシミュレーションのそれぞれを上手く統合していくことで、手玉が増えていくと考えています」。もともと畑が違いだった2輪と4輪がマージしていけば、さらなる強みが出ていくことでしょう。また、F1についての復帰待望論の声も聞こえましたが、これに関しては記事の文頭に書いた通り否定しています。
SUPER GT GT500マシン
来シーズンはMotoGP、SUPER GT/GT500のチャンピオン獲得が必達目標と掲げるHonda陣営。2022年シーズンは終わったばかりですが、今から2023年シーズンのスタートが待ちきれませんね!
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