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フォルクスワーゲン「T-Roc」に今や少数派のハイパフォーマンスモデル「R」が追加

 フォルクスワーゲンのSUVである「T-Roc(ティー・ロック)」が、2022年夏にマイナーチェンジを実施。それに合わせてハイパフォーマンスモデルである「R」を追加しました。今回は、そんな「T-Roc」はどんなクルマなのか? そして、「R」の走りはどのようなものなのかをレポートます。

フォルクスワーゲン「t-roc」に今や少数派のハイパフォーマンスモデル「r」が追加

フォルクスワーゲン「T-Roc R」

意外なほどに小さいSUV「T-Roc」

 フォルクスワーゲンのSUVである「T-Roc」は、2014年に世界初公開され、日本では2017年から発売されました。その発売から5年目となる2022年7月25日に、マイナーチェンジが行なわれ、それに伴ってハイパフォーマンス・グレードとなる「T-Roc R」が追加されました。

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 まずは、フォルクスワーゲンのSUVラインナップから説明しましょう。フォルクスワーゲンは、小さい方から「T-Cross(ティー・クロス)」「T-Roc」「Tiguan(ティグアン)」、そして「Touareg(トゥアレグ)」というSUVを持っています。ところが、「Touareg」の最新モデルの日本導入は見送られました。つまり、現在の日本のフォルクスワーゲンのSUVラインナップは、「T-Cross」「T-Roc」「Tiguan」の3つとなります。「T-Cross」は、1リッターのターボ・エンジンを搭載するフォルクスワーゲンの最小SUVであり、「Tiguan」は全長4.5mほどで、日本車でいえばトヨタの「カローラクロス」に近いサイズ感となります。

 そして、真ん中の「T-Roc」は、寸法が全長4250×全幅1825×全高1590mm。ちょっと幅が大きいけれど、全長だけで言えば「カローラクロス」よりも小さく、「ヤリスクロス」並みのサイズ感となります。つまり、意外と「T-Roc」は小さいのです。

 そんな「T-Roc」に搭載されるのは、最高出力150PS・最大トルク250N・mの1.5リッターガソリンエンジンと、最高出力150PS・最大トルク340N・mの2リッターディーゼルエンジン。さらに今回追加されたハイパフォーマンス・グレード「T-Roc R」には、最高出力300PS・最大トルク400N・mもの2リッターガソリンターボエンジンが搭載されています。

フォルクスワーゲン「t-roc」に今や少数派のハイパフォーマンスモデル「r」が追加

最高出力300PS・最大トルク400N・mの2リッターターボエンジン

 ボディーは小さいのに、エンジンは強力! それが「T-Roc」の特徴の1つです。また、組み合わせるトランスミッションは、すべて7速DSG(一般的にDCTと呼ばれるデュアルクラッチのトラスミッション)。基本がFFで「R」グレードのみ4WDとなります。

 価格は1.5リッターのガソリンエンジン車が「T-Roc TSI Active」で394万3000円、上級の「T-Roc TSI Style」で417万9000円。2リッターディーゼルの「T-Roc TDI Style」で439万3000円、豪華装備の「T-Roc TDI R-Line」で460万9000円。そして最強の「T-Roc R」が626万6000円となります。

マイナーチェンジで

前後バンパーとインテリアが変更に

 2017年の導入から5年目となったマイナーチェンジの内容は、エクステリアとインテリアの変更、そしてハイパフォーマンス・グレード「R」の導入です。エクステリアは、前後バンパーとヘッドライト周りのデザインが新しくなりました。変更点は少ないのですが、フロントグリルの真ん中に左右のヘッドライトを結ぶLEDストリップが追加されており、顔つきはより凛々しくなっています。

フォルクスワーゲン「t-roc」に今や少数派のハイパフォーマンスモデル「r」が追加

 インテリアでは、センターのディスプレイがタブレットのように高く配置されており、全車標準となったデジタルメータークラスターやタッチコントロール式となったエアコンなどもあり、よりモダンな雰囲気となっています。

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 新たに追加された「T-Roc R」は、エンジンがパワフルというだけでなく、4WDシステムの「4MOTION」、アダプティブシャシーコントロール“DCC”、大型ブレーキキャリパー、19インチアルミホイール、4リンクリヤサスペンション、前後バンパー回りの専用デザイン、専用内装など「R」ならではの専用アイテムが数多く採用されています。

高速道路で真価を発揮するディーゼルエンジン

 最初に試乗したのは、2リッターのディーゼルエンジンに、スポーティーな装備を採用する「T-Roc TDI R-Line」(460万9000円)でした。

 インテリアは、最上級のR-Lineということで質感も高く、スポーティーな雰囲気が漂います。センターのディスプレイの視認性も良好です。メーターがフルデジタルになっているのもうれしい部分。ただし、メーターフードが残っているなど、基本的なレイアウトはオーソドックスなものと言えます。

フォルクスワーゲン「t-roc」に今や少数派のハイパフォーマンスモデル「r」が追加

写真はT-Roc R

 SUVといっても、「T-Roc」は「R」以外はすべてFF駆動。そのためか、ハンドル操作は軽く、街中の走りでも軽快さが感じられます。最初は1825mmもある全幅に少々緊張はしましたが、慣れてしまえば別にどうということもありません。停止してのアイドリング時は、ディーゼルエンジンならではの硬質なノイズが聞こえましたが、その音量はごくわずか。走り出してしまえば、ほとんど気になりません。それよりも、ディーゼルエンジンならではの力強いトルクの扱いやすさのほうが印象に残ります。わずか1750RPMも回っていれば、最大トルク340N・mものトルクが発生するのですから街中でキビキビと走ります。

 高速道路に入ると、さらに魅力がはっきりとわかります。巡航中の直進性がよく、安定感、安心感を強く感じることができます。ステアリングの応答は、良い意味で鷹揚。神経質なところがないのでリラックスして走ることができました。100km/hでのエンジン回転数は1000RPMほど。非常に静かで快適です。R-Lineということで、装いはスポーティーですが、走り味自体は過激ではなく、落ち着いたもの。近所の買い物から遠出まで、オールマイティーにこなす優等生的なキャラクターでした。

わかりやすく懐かしいスポーティーさ

 続いてはハイパフォーマンスの「T-Roc R」。インテリでR-Lineと異なるのは、パドルシフトの大きなステアリング、シフトの下にある4MOTIONとDCCのスイッチ、そして青いステッチを施したナッパレザーのシートなど。上質なシートに身を任せて、ステアリングの青い「R」のマークを見ると、誰もがワクワクした気分になることでしょう。エクステリアでは、前後と左右フェンダーにあるRのバッジ、そして青いブレーキキャリパーが目立ちます。また、235/40R19インチの大径ホイール&タイヤも「R」の特徴的な装備です。

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 走り出して、すぐに気づいたのは、意外なことに快適性の良さです。乗り心地が微妙によく、エンジンのノイズや振動も小さいのです。リヤサスペンションが「R」だけ4リンクになっているのが効いています。また、4WDなどで100kgほど重くなっているのも、乗り心地に関して良い影響を与えているのかもしれません。

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 そんな「T-Roc R」の本領が発揮されるのは、300PSを引き出せる高速道路でしょう。まずは高速道路の合流で、アクセル全開を試してみます。アクセルを踏み込むと一瞬のタメの後、300PS&400N・mならではの鋭い加速を見せてくれます。エンジン音もそれなりに大きく、まさに迫力の加速。正直、パワーをもう少し押さえれば、タメ=ターボラグなしでのダイレクトな加速も可能でしょう。

 しかし、逆にそのタメのある加速こそが、ちょっと懐かしいターボらしいフィーリングです。昔を知る昭和のおじさんとしては、これはこれで楽しいというもの。また、高速走行では4WDということで、FFモデルよりも、さらに安定性が高いのも美点。強烈なパワーが、より使いやすいというわけです。

 また、高速道路での巡行走行は、乗り心地が良く、高い安定感がありますから、ディーゼルエンジンモデルと同様のリラックス感が得られます。元気に走っても良いし、ゆったりしたクルージングもお手の物でした。

目新しくはないけれど

熟成された好感度の高いクルマ

 今どきの目線で言えば、「T-Roc」はとりたてて新しいところのないクルマです。パワートレインの電動化もありませんし、インテリアもモダン化されていますが、それでも伝統性の方が強く感じます。しかし、実際にハンドルを握れば、「これぞフォルクスワーゲンの魅力!」というレベルの高い高速での走りを見せてくれました。

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 また、追加された「T-Roc R」は、さらに電動化の時流に反するモデルです。しかし、走らせてみれば高速域の走行性能の高さは秀逸ですし、やっぱり楽しいことは間違いありません。トレンドとは異なりますが、これもまたフォルクスワーゲンの実力のひとつ。そして、こうしたクルマを求める人も、まだまだいるはず。そんな人は、ぜひともディーラーなどで試乗してみることをオススメします。よく走るクルマですよ。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

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 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。

 

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