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eMAXIS SlimとeMAXIS、eMAXIS Neoの違いは?どこで買うのがおすすめ?

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(画像=MONEY TIMES編集部)

eMAXISとeMAXIS Slimの大きな違いは「手数料」と「販売チャネル」である。手数料はeMAXIS Slimのほうが安い。また販売チャネルはeMAXIS Slimがインターネットのみであるのに対して、eMAXISは対面でも購入可能だ。eMAXIS NeoはAIなど革新的なテーマに関連した銘柄に投資できる投資信託で、他のeMAXISシリーズとは組入銘柄が大きく異なる。

eMAXIS Slimを購入する場合にはSBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券の大手ネット証券がおすすめだ。4社とも、eMAXIS Slimシリーズ9本をすべて取り扱っている。

■eMAXIS SlimとeMAXIS、eMAXIS Neoの違いは?

eMAXIS SlimはeMAXISシリーズのうちの1つで、低コストを意識した商品として投資家たちから人気を得ている。

楽天証券が毎週更新している投資信託のうち、積立銘柄を対象とした2023年5月9日時点のランキングではeMAXIS Slimシリーズから次の4本がTOP10に入っている。

・全世界株式(オールカントリー)

・米国株式(S&P500)

・先進国株式インデックス

・全世界株式(除く日本)

出典:楽天証券

さらにTOP20の中には、「バランス(8資産均等型)」、「新興国株式インデックス」を加えた計6件がランクインしている。

もともとeMAXISには「Slim」が付かない、「eMAXIS」というベーシックなプランもあるが、SlimはeMAXISシリーズの中でも特にコストにこだわったプランだ。ベーシックなeMAXISと、Slimのコスト(信託報酬)の違いを見てみよう(以下、SlimやNeo、プラスでない銘柄については、eMAXISシリーズの総称と区別して「ベーシックなeMAXIS」と呼称する)。

・eMAXIS SlimとeMAXIS無印のコスト比較

eMAXIS Slim全世界株式

eMAXIS Slim米国株式

(除く日本)

全世界株式(除く日本)

0.1144%

eMAXIS バランス

eMAXIS Slim新興国

eMAXIS 新興国

投資先 eMAXIS Slim eMAXIS無印

全世界株式

(オールカントリー)

該当商品なし

0.1144%

(0.1133%)

米国株式

(S&P500)

eMAXIS S&P500クオリティ

高配当インデックス

0.09372% 0.330%
先進国株式

eMAXIS Slim

先進国株式インデックス

eMAXIS 先進国

株式インデックス

0.1023%

(009889%)

0.660%

eMAXIS 全世界株式

インデックス

0.660%

バランス

(8資産均等型)

eMAXIS Slimバランス

(8資産均等型)

0.154%

(0.143%)

0.550%
新興国株式

0.1870%

(0.1859%)

0.660%

※( )内の信託報酬は2023年5月11日以降の信託報酬

※出典:ファンド一覧|eMAXIS

eMAXISシリーズの特徴として、すべてインデックスタイプの投資信託であることと、同じインデックスタイプの中でも手数料(信託報酬)が非常に低いことが挙げられますが、なかでもeMAXIS SlimシリーズはeMAXIS無印よりもさらにコストが低くなっています。

●そもそも「eMAXIS」とは?

eMAXISとは、三菱UFJ国際投信が設定・運用する投資信託ラインアップの総称である。三菱UFJ国際投信は、三菱UFJフィナンシャルグループ・三菱UFJ信託銀行の子会社にあたり、同グループの資産運用の中核会社である。

三菱UFJ国際投信は投信専業の会社であり、代表的な商品は次のとおりだ。

・「eMAXIS」シリーズ

・「eMAXIS Slim」シリーズ

・上場投資信託(ETF)の「MAXIS」シリーズ

・サイバーセキュリティ関連企業の株式に投資を行う「サイバーセキュリティ株式オープン」シリーズなど

eMAXIS関連シリーズ全体の商品は59本で、すべてノーロードのインデックスファンドである。投資対象地域は国内のみならず先進国・新興国あるいは全世界で、投資対象資産についても各ファンドによって株式・債券・REIT、複数の資産を組み合わせたバランス型と幅広い。

「ノーロード」のファンドとは?

販売手数料がかからない投資信託(ファンド)のこと。

「インデックスファンド」とは?

投資信託の基準価額が日経平均やS&P500などの経済指標(インデックス)と同じ値動きを目指す運用をする投資信託のこと。一般的に指標を超える値動きを目指す運用を行うアクティブファンドに比べ、運用管理を行うファンドマネージャーの負担が少ないこともあり、信託報酬が低く設定されている。

たとえば、eMAXISファンドと同じく三菱UFJ国際投信が組成するアクティブファンドである「日本配当追求株ファンド(価格変動抑制型)(愛称:はいとう日本)」の信託報酬は年率0.9240%であり、eMAXIS Slimシリーズが軒並み0.1%台であるのと比較するとかなり大きな差があります。

つまり、ノーロードのインデックスファンドとは、数ある投資信託の中で最も手数料が低い商品の種類と言える。

eMAXISは販売手数料がかからず特定の指数に連動する投資成果をめざすタイプの商品をラインアップしており、初心者にも運用方針や組み入れ銘柄が分かりやすいのが魅力です。また「業界最低水準」の運用コストを目指しており、たびたび信託報酬の引き下げを行っています。

直近では2023年4月25日よりeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の信託報酬引き下げが実施され、年率0.0968%から0.09372%となった。5月11日にはeMAXIS Slimシリーズのうち、8ファンドの信託報酬が引き下げられている。

出典:三菱UFJ国際投信『月次レポート(2023年3月31日)』

eMAXISシリーズは2009年10月に設定開始し、順調に合計純資産残高を伸ばしている。2019年12月には5,000億円に到達し、2021年1月には1兆円を突破、2023年5月9日時点での純資産合計は4兆8,054億円に達している。

●eMAXIS SlimはeMAXISシリーズのうちの1つ

eMAXISは次のとおり4種に分けられる。

• ベーシックな「eMAXIS」

• より低コストを意識した「eMAXIS Slim」

• コモディティなどハイリスク商品を対象とした「eMAXISプラス」

• 宇宙開発・ロボット・自動運転などテーマ投資ができる「eMAXIS Neo」

eMAXIS Slimは13商品を展開しているシリーズです。そのうち6本が「投信ブロガーが選ぶFund of the year 2022」の20位以内を占め、5年連続でeMAXIS Slimのファンドが1位に輝いています。

「投信ブロガーが選ぶFund of the year 2022」にランクインしたeMAXIS Slimシリーズ

1位 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(2019年 – 2022年1位)

3位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

5位 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(2018年1位)

17位 eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)

19位 eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)

20位 eMAXIS Slim 新興国株式インデックス

出典:三菱UFJ国際投信『eMAXIS Slim』

eMAXIS Slimシリーズは9本がつみたてNISAの対象商品です。つみたてNISAは年間40万円まで、かつ最長20年間は投資で得た利益に税金がかからない制度ですが、同シリーズは信託報酬が安いことから長期間運用しても低コストで済む点が評価され、人気を集めています。

ちなみにベーシックなeMAXISは、前段で述べたとおりeMAXIS Slimよりも信託報酬が高めだが、その分商品の種類が豊富で、新興国債券インデックスなどにも投資できる。また対面証券会社でも購入でき、店頭で紙の資料を見ながら商品の説明を受けることができる。

eMAXISプラスとは?

eMAXISプラスは世界の商品(コモディティ)市況の値動きに連動した投資成果を目指す商品で、農業品や原油、貴金属などに投資ができる。

近年、日本でも食品やエネルギー価格が高騰し、商品価格について意識する投資家も増えているだろう。こうした食品やエネルギー価格高騰を利益につなげる手段としても同商品は有効と言える。

eMAXIS Neoとは?

eMAXIS Neoは宇宙開発・ロボット・自動運転など13種類の革新的なテーマに関連した企業に投資ができるシリーズだ。

具体的にはAI(人工知能)が企業の開示資料などを自動で学習させ、テーマに関連する言葉の有無を自動で判断して銘柄を選定する。どの商品も中小型株の組入割合が大きいため、S&P500などを対象とするインデックスファンドに比べると値動きが大きく、信託報酬も各ファンド最大で年率0.792%と高めだ。

eMAXIS Neoが取り扱うテーマ

自動運転

ウェアラブル

フィンテック

ナノテクノロジー

バーチャルリアリティ

ドローン

宇宙開発

ロボット

遺伝子工学

クリーンテック

電気自動車

水素エコノミー

コミュニケーションDX

出典:投資のインフラに“革新”をプラス。ノーロード・インデックスファンドeMAXIS Neo(イーマクシス ネオ)

●eMAXIS各種の利回りは?分配金は?

eMAXIS各種の中でも、eMAXIS Slimシリーズは米国株式を中心に好調です。とくに「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は米国株式の好業績を受けて販売数を伸ばしており、設定来の利回(トータルリターン)でもシリーズトップです。

三菱UFJ国際投信が発表している最新のレポート(2023年3月31日)によると1年リターンは▲2.6%、設定来のリターンは+91.7%だ。米国では金融引き締めによる景気減速懸念からやや低調気味だが、設定来で見るとeMAXIS Slimシリーズの中でも最も大きなリターンとなっている。

eMAXIS Slimシリーズのうち販売額が大きい5銘柄の設定来トータルリターンをチャート上で比較した。

またeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に次いで、設定来のリターンが大きい「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」は1年で▲1.1%に落ち込んでいるものの、3年で+94.5%、「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」は1年で▲1.4%、3年で+72.1%のリターンという結果だ。

なおeMAXIS Slimシリーズはいずれも分配金の支払いを行わないファンドで、収益は全て再投資にまわされる方針だ。再投資することで複利の効果を得ることが長期的なパフォーマンス向上につながるという考えからだろう。

インデックス投信という性質上、短期間に大きな収益が得にくい事情があるのかもしれません。分配金の有無は基準価額水準、市況環境などを考慮した上で決定するので、将来的には分配金を支払う可能性もありえるでしょう。

1つだけリターンが控えめなのは「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」だ。株式以外の資産が半分以上を占めるため、米国株式市場の好調に乗り切れなかった事情がある。

一方で「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、2022年に入ってからの株式市場の落ち込みの影響が限定的という側面もあります。

続いてeMAXIS NeoとeMAXISプラスのリターンについても紹介する。

eMAXIS Neoの中で最も買い付け額が大きいeMAXIS Neo自動運転の過去1年のリターンは▲26.6%、設定来で+118.3%のリターン、eMAXIS Neo宇宙開発の過去1年のリターンは+5.5%、設定来で+60.9%である。

eMAXISプラスシリーズは、現状販売されているのはeMAXISプラスコモディティインデックスのみだ。同ファンドの過去1年のリターンは▲8.0%、設定来で+9.7%だ。

●eMAXISに似た投資信託もある

eMAXISシリーズに似た投資信託は他社からも販売されている。例として、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)と同じインデックスをターゲットにしている各社の商品について、信託報酬や過去のリターン、純資産総額を比較してみよう。

(オール・カントリー)

たわらノーロード

【全世界株式】

ファンド名

運用会社

純資産総額

(億円)

信託報酬

過去1年の

リターン

設定来

三菱UFJ国際

投信株式会社

10481.46 0.11325% ▲1.2% +70.8%

SBI・全世界株式

インデックス・ファンド

SBIアセット

マネジメント株式会社

1038.54 0.1102% ▲1.34% +61.41%

アセットマネジメント

One株式会社

55.2 0.1133% ▲1.21%

+85.7%

(3年)

※出典:三菱UFJ国際投信株式会社、SBIアセットマネジメント株式会社、アセットマネジメントOne株式会社

それぞれ設定日が異なるため設定来リターンには違いが見られるが、直近1年についてはいずれもほぼ同等だ。しかし純資産総額についてはeMAXIS Slimが圧倒的に大きく、市場が急変した際などにもよりターゲットの動きに沿った運用が行えると考えられる。信託報酬はいずれも0.11%台だ。

■eMAXISとeMAXIS Slim、eMAXIS Neo、eMAXISプラスの違いは?

eMAXISとeMAXIS Slimとは名前も類似し、同じような指標のインデックスファンドを扱っているため混同されがちだが、「手数料」「販売チャネル」などの点が異なる。また、eMAXIS・eMAXIS SlimシリーズとeMAXIS Neo、eMAXIS プラスは、組み込まれている商品が大きく異なる。

●eMAXISとeMAXIS Slimの違い

eMAXIS Slimシリーズは、NYダウやNASDAQなどポピュラーな指標に連動した運用成果を目指すファンドに絞っているが、eMAXISは、eMAXIS Slimに比べて全体的に商品ラインアップが幅広い。

また信託報酬という面でもeMAXISよりもeMAXIS Slimのほうが割安だ。さらに両者は販売チャネルが若干異なっており、eMAXIS Slimはインターネットのみでの販売である。

eMAXIS eMAXIS Slim
投資対象

JPX日経400、新興国債券インデックスなど

eMAXIS Slimより幅広い商品ラインアップ

NYダウ、S&P、

NASDAQなど人気分野に特化

ファンド数 39 13
信託報酬

eMAXIS Slimに比べると高い

0.33~0.66%

比較的安い

0.09372~0.22%

出典:三菱UFJ国際投信のインデックスファンド・シリーズ eMAXIS(イーマクシス)

●eMAXIS・eMAXIS SlimシリーズとeMAXIS Neo・eMAXIS プラスの違い

eMAXIS・eMAXIS SlimシリーズとeMAXIS Neo、eMAXIS プラスは投資先に大きな違いがある。

eMAXISとeMAXIS Slimは企業や債券、不動産などに投資をするが、eMAXISプラスは、原油や貴金属、農業品といったコモディティを主な投資先としている。

またeMAXIS Neoは宇宙開発・ロボット・自動運転など、今後成長が見込めそうな「テーマ」を切り口にAIが選定した銘柄で構成された指標に連動した運用成果を目指す点が従来のeMAXISシリーズと異なる。

に比べると高い

eMAXIS eMAXIS Slim

Neo

プラス

投資対象

NYダウ、日経225、

JPX日経400等

豊富な投資先

NASDAQなど人気

分野に特化

テーマを切り口に、

AIが選定した銘柄で

構成された指標

コモディティ

(商品)

ファンド数 39 13 13 1
信託報酬

従来のeMAXIS

シリーズに比べる

と高一律0.792%

eMAXISシリーズ

の中で最も高い

0.9%

●eMAXIS Slim、eMAXIS、eMAXIS Neo、eMAXISプラスのつみたてNISA対応状況

eMAXIS Slim、eMAXIS、eMAXIS Neo、eMAXISプラスのうち、つみたてNISAに対応しているのはeMAXIS SlimとeMAXIS の一部銘柄のみで、プラスとNeoはいずれも対象外だ。eMAXIS SlimシリーズとeMAXISシリーズのつみたてNISA対象商品を投資先ごとにマッピングした。

米国株式(S&P500)

eMAXIS NYダウ

eMAXIS 全世界

(3地域均等型)

新興国株式インデックス

eMAXIS TOPIX

eMAXIS 日経225

eMAXIS JPX日経400

バランス(8資産均等型)

(4資産均等型)

(マイ ストライカー)

(マイ ディフェンダー)

(マイ フォワード)

(マイ ミッドフィルダー)

1980s

1990s

投資先

シリーズ

eMAXIS

先進国株式
全世界株式

eMAXIS Slim 全世界株式

(オール・カントリー)

新興国株式
国内株式

国内株式(TOPIX) eMAXIS Slim

国内株式(日経平均)

バランス型

eMAXIS 最適化バランス

(マイ ゴールキーパー)

eMAXIS マイマネージャー

1970s

※楽天証券のサイトより著者作成(2023年5月11日現在)

eMAXIS Slimシリーズは全13銘柄を展開しており、そのうち9銘柄がつみたてNISAに採用されています。また、eMAXISシリーズには全部で39種類の商品があり、そのうち17銘柄がつみたてNISAに採用されています。

投資対象が債券のみあるいはREIT(不動産投資信託)のみの商品もありますが、それらは株式が含まれていないためつみたてNISAの対象とはなっていません。

上の表のように、eMAXIS Slimシリーズからは外国株式に投資する銘柄が多数採用されている。eMAXISシリーズからは株式や債券、REITなど複数の資産に投資するバランス型と呼ばれる銘柄が対象だ。中でも「マイマネージャー」を名前に含むシリーズのように、運用期間が進むごとに投資割合が変化する「ターゲットイヤー型」と呼ばれるバランス型ファンドの存在が目立つ。

●手数料(信託報酬)……eMAXIS SlimシリーズのほうがeMAXISシリーズよりも安く、Neoやプラスは相対的に高め

両シリーズの大きな違いはコストです。販売手数料が無料なのは共通していますが、保有中に発生する信託報酬はeMAXIS Slimシリーズのほうが低めです。

試しに同じインデックス(指標)をベンチマークとする投資信託がeMAXIS SlimシリーズとeMAXISシリーズとではどう違うのか比較してみよう(2023年5月10日を基準日とする)。

【先進国株式で比較】

<eMAXIS Slim先進国株式>

基準価額:2万1,022円

純資産総額:4,385.62億円

信託報酬:年率0.09889%(税抜 年率0.08990%)以内※

<eMAXIS先進国株式>

基準価額:4万6,642

純資産総額:674.17円

信託報酬:年率0.66%(税抜 年率0.6%)以内

いずれも日本を除く先進国の株価動向を示す「MSCIコクサイ・インデックス」と連動する投資成果をめざすファンドだが、信託報酬はeMAXIS Slimの方が低く、0.5%以上の開きがある。基準価額はeMAXISのほうが高いが、運用成績については大きな差はない。

<eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)>

基準価額:1万7,748円

純資産総額:2403.55億円

信託報酬:年率0.1133%(税抜 年率0.1030%)以内※

<eMAXIS 全世界株式インデックス>

基準価額:4万4,122円

純資産総額:259.15億円

いずれも日本を除く先進国、及び新興国の株価動向を示す「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」と連動する投資成果を目指すファンドだ。やはり信託報酬はeMAXIS Slimの方が低く、推移に関してはeMAXIS、eMAXIS Slimいずれも好調だ。

【8資産均等】

<eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)>

基準価額:1万3,845円

純資産総額:1916.17億円

信託報酬:年率0.143%(税抜 年率0.130%)以内※

<eMAXIS バランス(8資産均等型)>

基準価額:2万5,139円

純資産総額:441.43億円

信託報酬:年率0.55%(税抜 年率0.5%)以内

※2023年5月11日以降の信託報酬を使用

いずれも各投資対象資産の指数を均等比率で組み合わせた合成ベンチマークと連動する投資成果を目指すファンドだ。eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)はバランスファンドである分、ここまでに紹介したSlimの2銘柄より信託報酬が高めだが、それでもeMAXIS バランス(8資産均等型)よりもかなり低く抑えられている。

これらのファンドは各資産に分散投資ができるメリットがあるものの、ここ1年、基準価格は横ばい傾向にある。なお、各投資対象資産が採用している指数は以下のとおりだ。

【主要投資対象と運用目標および基本投資割合】

MSCIコクサイ・

S&P先進国REIT

主要投資対象 主要投資対象

東証株価指数

(TOPIX)

国内株式 12.5%
先進国株式 12.5%

MSCIエマージング・

マーケット・インデックス

新興国株式 12.5%
NOMURA-BPI総合 国内債券 12.5%
FTSE世界国債インデックス 先進国債券 12.5%

JPモルガンGBI-EMグローバル・

ダイバーシファイド

新興国債券 12.5%
東証REIT指数 国内不動産投資信託証券 12.5%
先進国不動産投資信託証券 12.5%

※出典:三菱UFJ国際投信株式会社

両シリーズの比較で注目すべきは信託報酬の差です。先進国株式、全世界株式に至っては0.5%以上の開きがあります。

投資金額100万円、運用期間5年でシミュレーションすると、信託報酬の年率の違いが支払うコストに与えるインパクトは大きい。

下表は、投資金額100万円・運用期間5年で、eMAXISおよびeMAXIS Slimの各銘柄に投資した場合の信託報酬の比較表である。

【信託報酬比較】(上段:信託報酬年率、下段:コスト)

投資先 eMAXIS Slim eMAXIS
先進国株式 0.1023%(0.09889%) 0.66%
4,945円 3万3,000円
全世界株式(除く日本) 0.1144%(0.1133%) 0.66%
5,665円 3万3,000円
バランス(8資産均等型) 0.154%(0.143%) 0.55%
7,150円 2万7,500円

※信託報酬はうるう年を考慮していない

※( )内は2023年5月11日以降の信託報酬

上記のようにeMAXISのほうがeMAXIS Slimよりもコストが約2~3万円弱高い。

インデックス投資は個別株投資ほどのハイリターンが見込める投資法ではないため、ひかえめな収益を目減りさせる手数料はできる限り少ないほうが良いでしょう。コストを重視するならeMAXIS Slimを選ぶのが賢明です。

同じ指標に連動するような投資成果を目指すファンドなのに、これだけ信託報酬に差がある理由は、昨今のインデックスファンドの信託報酬の引き下げにある。

そもそもインデックスファンドは目標とする指標「インデックス」に連動した運用を目指すので、同じ指標を目標とする場合、ファンドごとにリターンの差が出にくいのである。リターンに差が出ないのならば、投資家としては少しでも信託報酬の低いファンドを買いたくなるだろう。

しかし、昔から販売しているeMAXISシリーズの信託報酬をいきなり下げるのは、販売コストなどの面から難しい。

そこで登場したのがeMAXIS Slimという新シリーズである。この商品は後述するように販売チャネルを限定し、信託報酬を非常に低く抑えている。結果、高い競争力を持つのだ。

eMAXIS NeoとeMAXISプラスの信託報酬

先に述べたとおり、eMAXIS NeoやeMAXISプラスは他のシリーズとは異なり、テーマ別の株式やコモディティに投資するファンドだ。

Neoやプラスのようなタイプの商品はeMAXISやeMAXIS Slimのようなインデックスファンドと比べると、相対的に信託報酬が高額な傾向にある。eMAXIS Neoの信託報酬は各ファンド最大で年率0.792%、現在eMAXISプラスシリーズ唯一の商品であるeMAXIS プラス コモディティインデックスの場合は0.8998%だ。

●eMAXIS Slimシリーズを取り扱う金融機関は31社、eMAXISシリーズは107社

eMAXIS Slimがここまで低コストを実現できるのは販売チャネルを絞っているからだろう。

eMAXISシリーズの販売会社は銀行と証券会社合わせて107社であるのに対し、eMAXIS Slimシリーズは31社です。

出典:三菱UFJ国際投信『eMAXISシリーズ』

eMAXIS Slimシリーズを扱うのはいずれもネット証券または銀行のインターネット専用販売に限られる。

信託報酬は販売会社にも支払われるので、信託報酬が低いファンドを扱うことに同意が得られる金融機関が少ないことも一因にあるでしょう。

なお、ファンドの種類が異なるため単純な上のようにコストと関連付けた比較を行うことは難しいが、eMAXIS Slimシリーズを取り扱う販売会社は22社、eMAXISプラスを取り扱うのは32社だ。

■eMAXIS Slimシリーズの取り扱いがある金融機関とつみたてNISA(積立NISA)対象銘柄

eMAXIS Slimシリーズは楽天証券、SBI証券などを中心に31社で購入可能だ。該当する金融機関と、つみたてNISA対象銘柄の取扱状況について見ていこう。

●eMAXIS Slimシリーズの取り扱いがある金融機関

eMAXIS Slimシリーズの取り扱いがある31社は以下だ。ただし販売会社によっては、取り扱わないファンドがある。

全種取り扱いのある金融機関 一部のみ取り扱いのある金融機関
楽天証券 auカブコム証券
SBI証券 GMOクリック証券
松井証券 LINE証券
マネックス証券 千葉銀行
SMBC日興証券 岩井コスモ証券
岡三オンライン証券 あおぞら銀行
三菱UFJ銀行

大和コネクト証券

(旧CONNECT)

三菱UFJ国際投信 フィデリティ証券
三菱UFJ信託銀行 ほくほくTT証券
東京スター銀行 水戸証券
PayPay銀行 FFG証券
北國銀行 熊本銀行
三十三銀行
静岡銀行
七十七銀行
十八親和銀行
CHEER銀行
福岡銀行
PayPay証券

(三菱UFJ国際投信のホームページより引用)

eMAXIS Slimシリーズを一部取り扱っている11機関における各商品の取扱状況を以下にまとめた。

【eMAXIS Slimを一部取り扱っている金融機関】

国内株式

(日経平均)

先進国株式

新興国株式

国内債券

先進国債券

国内リート

先進国リート

auカブコム証券 GMOクリック証券 LINE証券 千葉銀行 岩井コスモ証券 あおぞら銀行 フィデリティ証券 ほくほくTT証券 水戸証券 FFG証券 熊本銀行 三十三銀行 静岡銀行 七十七銀行 十八親和銀行 CHEER銀行 福岡銀行 PayPay証券
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●積立NISA対象のeMAXIS Slimシリーズは9銘柄

つみたてNISAの対象商品になるには、金融庁から長期安定的な積立投資に適していると認める条件をクリアする必要がある。

つみたてNISAの投資対象商品

長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託

○例えば公募株式投資信託の場合、以下の要件をすべて満たすもの

・販売手数料はゼロ(ノーロード)

・信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定

・顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること

・信託契約期間が無期限または20年以上であること

・分配頻度が毎月でないこと

・ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと

出典:金融庁『つみたてNISAの対象商品』

もともとeMAXIS SlimシリーズはつみたてNISA向きの評価の高さで業績を伸ばしてきた背景もあり、商品のほとんどが長期積立向きである。実際にeMAXIS Slimシリーズは13銘柄中9銘柄がつみたてNISA対象商品だ。

ちなみに、eMAXIS Slimのうち以下4つはつみたてNISAの対象には入っていない。

つみたてNISA対象ではないeMAXIS Slim銘柄

・eMAXIS Slim 国内リートインデックス

・eMAXIS Slim 先進国リートインデックス

・eMAXIS Slim 国内債券インデックス

・eMAXIS Slim 先進国債券インデックス

●eMAXISとeMAXIS Slim、eMAXIS Neo、eMAXISはどれがおすすめ?

長期・積立・分散投資を前提とした投資をするなら、信託報酬が安いeMAXIS Slimがおすすめです。

先の例で紹介した通りeMAXISとeMAXIS Slimの商品を比較すると、5年で約2~3万円のコスト差(信託報酬)が生じる。運用期間が20~30年となればさらにその差は大きくなるため、基本的にはeMAXIS Slimを選ぶほうが効率よく投資を行える。

また投資初心者であれば、投資のリスクを抑えて安定したリターンを出すために、長期・積立・分散投資を目指すべきだ。そのため、始めのうちは投資先が限定されているeMAXIS NeoやeMAXISプラスは避けたほうが無難だろう。

■eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)はどこで買うのがおすすめ?

eMAXIS SlimをつみたてNISA口座で始めるなら、つみたて頻度や引き落とし方法などを細かく設定できるSBI証券や楽天証券がおすすめだ。

つみたてNISA対象のeMAXIS Slimシリーズの商品は、全部で9本ある(2023年5月10日時点)。

SBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券の大手ネット証券では、すべての証券会社においてeMAXIS Slimシリーズ9本を取り扱っています。

その他、大手証券会社ならeMAXIS、eMAXIS Neo、eMAXIS プラスいずれも取り扱っており、品ぞろえが豊富だ。

【証券会社別取扱いファンド数】

eMAXIS S&P500

SBI証券 楽天証券 松井証券 マネックス証券
eMAXIS 38本(17) 38本(17) 38本(17) 37本(17)
eMAXIS Slim 13 本(9) 13 本(9) 13 本(9) 13 本(9)
eMAXIS Neo 13本(0) 13本(0) 13本(0) 13本(0)
eMAXIS プラス 1本(0) 1本(0) 1本(0) 1本(0)

取り扱って

いない商品

eMAXIS S&P500 eMAXIS S&P500

eMAXIS 日経アジア300

インベスタブル

※( )内はつみたてNISAの対象

※SBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券の公式ホームページより著者作成(2023年5月10日時点)

つみたてNISA対象の全227本のうち、4社とも160本以上の取り扱いがあります。対象商品は各社随時変更されて、トップがいつ入れ替わるか分からない状態です。

●積立頻度や引落方法の種類の多さならSBI証券か楽天証券

積立頻度と引き落とし方法について総合的に見ると、SBI証券と楽天証券がおすすめです。積立頻度については、SBI証券と松井証券が毎日・毎週・毎月に対応しているため、柔軟な投資が可能です。また、引き落とし方法は楽天証券がもっとも豊富です。

【大手4社の積立頻度比較】

SBI証券 楽天証券 松井証券 マネックス証券
毎日・毎週・毎月

毎月

つみたてNISAのみ毎日

毎日・毎週・毎月 毎月・毎日

毎日コースは土日祝を除く毎営業日に買付をおこなうため、究極の時間分散と言えるでしょう。頻度が高くなっても手数料はかかりません。

SBI証券は、投資信託の積立金の支払い方法も多彩だ。証券口座、銀行口座だけでなく、クレジットカード決済で支払うこともでき、原則証券口座からの引き落としにしか対応していない松井証券、マネックス証券とは対照的だ。投資信託を選択して購入金額(100円~5万円)を設定すれば、自動的に積立が始まる。口座の残高不足や入金漏れの心配がなく、クレジットカード決済によるポイントも獲得可能だ。

楽天証券も投信の積立資金の支払い方法が豊富で、証券口座、銀行口座、クレジットカードから選べます。

楽天カードを持っていれば積立でポイントが貯まり、ポイントを積立資金に使うこともできる。

●使い勝手のいいアプリで投資をしたいなら松井証券

松井証券の「投信アプリ」は、取引や資産管理はもちろん、ロボアドバイザーによる投資信託の提案やシミュレーションがおこなえる。スマホアプリでここまでできるのは珍しい。口座を持っている人なら無料で使える。

ユーザーからの評価も高く、たとえばSBI証券の株取引アプリはApp Store評価が2.4であるのに対し、松井証券の日本株アプリは4.4の評価を得ている(いずれも2023年6月現在)。

普段パソコンをあまり利用せず、スマートフォンだけで取引を完結させたい人にとっては、松井証券がおすすめだ。

●ポイントプログラムが充実しているのはマネックス証券か楽天証券

ポイントを有効活用したいならマネックス証券か楽天証券が良いでしょう。

【大手4社のポイントプログラム比較】

SBI証券 楽天証券 松井証券 マネックス証券

ポイントの

貯まる取引

・Tポイント、Vポイント、

Pontaポイント、dポイント、

JALマイル

(それぞれポイントが

貯まる取引が異なる)

・クレジットカードに

よる投資信託の積立

・株式取引

・楽天キャッシュ

(電子マネー)に

よる投信積立

・クレジットカード

による投信積立

全保有銘柄の

月間平均保有

金額から計算

・投資信託の保有

・株式の取引

ポイント付与率

【Vポイントを選択して、

投資信託を保有した場合】

月間平均保有金額×

0.10~0.25%

・株式取引手数料の

1%をキャッシュバック

・楽天カードからの

チャージ額に対して

一律0.5%(月5万円まで)

・積立金額の

0.5~1.0%(月5万円まで)

【ポイント還元の場合】

(月間平均保有金額)×

{(販売会社が受け取る

信託報酬率(税抜))-

0.3%)×

ポイント増量分110%}×1/12

【現金還元の場合】

0.3%)}×1/12

【投資信託の保有】

投信の月内平均

保有金額の最大0.08%の

マネックスポイント

(iDeCoなど一部

対象外のものがある)

【株式手数料充当ポイント】

一日定額手数料

コース×日計り取引

ポイントの使い道

【Vポイントの場合】

・1ポイント1円分として

ポイント投資が可能

・投資信託、国内株、

米国株等のl購入代金等に

利用可能

(すべて1ポイント1円)

・商品やギフトカードとの交換

・投資信託の購入

【マネックスポイントの場合】

・1マネックスポイント

1円相当で他社ポイントや

商品券に交換可能

・1,000マネックス

ポイントで250マイルに

交換可能

【株式手数料充当ポイントの場合】

・片道分の手数料が

実質無料

・月間手数料総額が

30万円以上の場合、

半額還元

マネックス証券は投資信託を保有しているだけで保有残高に対し年率最大0.08%のポイントが付与されます。

対象となる商品は取扱銘柄のおよそ8割で、例えば付与率最大の商品をある月中に平均200万円保有していた場合、それだけで134ポイントを獲得できる。つみたてNISAは長期保有が前提の制度なので、保有期間中ずっとポイントが得られるのはメリットが大きい。貯めたポイントは手数料や暗号資産にあてられるほか、dポイントやTポイント、Amazonギフト券、航空機マイルなどに交換できる。

楽天証券は保有しているだけでつくポイントこそないが、先ほども紹介した通り、投信積立の購入金をクレジットカードで支払うことによって楽天ポイントが得られる。

100円に対して1ポイントなので、たとえばつみたてNISAの年間投資枠である40万円の投資枠すべて使った場合4,000ポイント(つみたて投資枠の場合は年間120万円の投資枠で1万2,000ポイント)、つまり4,000円分(または1万2,000円分)の買い物ができます。

■eMAXIS Slimシリーズはどんな人におすすめ?

eMAXIS Slimシリーズはオールマイティなファンドで、特定の層をターゲットとしているわけではないが、特に堅実にローコストで投資を始めたい初心者におすすめだ。

eMAXIS Slimシリーズがおすすめな人

・できるだけコストをかけたくない人

・初心者でどんな投資信託を選んだらいいか分からない人

・知名度が高く人気のファンドを選びたい人

●できるだけコストをかけたくない人

投資信託の信託報酬(コスト)をなるべく抑えたい人はeMAXIS Slimがおすすめだ。

運用利回りが同じファンドに投資した場合、コスト(信託報酬)が低いファンドのほうがパフォーマンスは当然高くなります。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬は0.0968%であったが、2023年4月25日から0.09372%に引き下げられた。これは低コストで有名なiシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンドの信託報酬0.0938%を明らかに意識したものと言えるだろう。

たとえばeMAXIS Slim先進国株式の手数料も2023年5月11日に0.9889%まで引き下げられ、競合のたわらノーロード 先進国株式と同等に揃えられている。

eMAXIS Slimシリーズは業界最低水準の運用コストを目指しており、自社よりもコストが低い他社類似ファンドがあると可能な限り引き下げる方針を示しています。それだけ同シリーズは投資信託のコストにこだわっているのです。

eMAXIS Slimと同じインデックスをターゲットにした他社の投信について、信託報酬を比較してみよう。

【S&P500(信託報酬順)】

eMAXIS Slim 米国株式

iシェアーズ 米国株式(S&P500)

日興アセットマネジメント

農林中金全共連アセット

ファンド名 運用会社 信託報酬

三菱UFJ国際投信

株式会社

19976.5 0.09372%

ブラックロック・ファンド・

アドバイザーズ

183.88 0.0938%

TracersS&P500配当貴族

インデックス(米国株式)

75.94 0.1155%
つみたて米国株式(S&P500) 99.22 0.22%
NZAM・ベータ S&P500 3.79 0.22%

※三菱UFJ国際投信株式会社、ブラックロック・ファンド・アドバイザーズ、日興アセットマネジメント株式会社、三菱UFJ国際投信株式会社、農林中金全共連アセットマネジメント株式会社をもとに筆者作成

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は2023年5月に信託報酬の引き下げが行われ、これによりiシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンドをわずかに下回っている。

●初心者でどんな投資信託を選んだらいいか分からない人

投資でリスクを抑えて安定したリターンを得るためには、長期・積立・分散投資が有効というのは先に述べた通りだ。

自分自身で個別株式の選定や、債券、REITなど様々な資産クラスの商品を選択することも可能だが、各商品のリスクやリターン値動きの特徴等を把握するのはかなり骨が折れる作業になるだろう。初心者であればなおさらである。

しかし「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は日本を含む先進国および新興国すべての中大型株を対象とする投資信託だ。また「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、先進国や新興国の株式・債券・REITと、地域だけでなく資産カテゴリーの分散もできる。

こうした投資信託が、全投資信託を見渡してもトップクラスの信託報酬で購入できる点は、eMAXIS Slimの大きなメリットと言えるでしょう。

●知名度が高く投資家からの支持が厚いファンドを選びたい人

eMAXIS Slimを含めたeMAXISシリーズはインデックスファンドシリーズの中で群を抜いて純資産残高が大きい。

たとえば、つみたてNISAの対象となっている投資信託を純資産残高で並べると、上位5ファンドの中にeMAXIS Slimが2つランクインしている。かつ1位はeMAXIS Slim米国株式(S&P)、3位がeMAXIS Slime全世界株式(オール・カントリー)だ。

純資産残高が小さいファンドは、リバランスの際に売る必要が無い銘柄まで売却しなければならないケースがあり、思い切った売却がしにくく運用成績にも影響が出る。また運用成果が出せないまま純資産総額が減少すると、繰上げ償還となり、運用が途中で終わってしまう可能性がある。たとえば2023年3月に繰上償還が行われた日興のグローバルCoCo債ファンド 先進国高金利通貨コースは、償還時点での純資産残高が1億8,100万円で、効率的な運用が極めて難しい状態だった。

純資産残高が大きいファンドのほうがリバランスを柔軟に行えて、運用が途中で終わるリスクが比較的少ないため安心です。

ただしファンドの善し悪しは、純資産残高だけで決まるわけではない。あくまでも目安の一つとして考えておくと良いだろう。

■eMAXIS Slimシリーズを初心者が買うメリット・デメリット

eMAXIS Slimシリーズはコストが低く用意に分散投資が行えるのがメリットだが、販売チャネルが少ない点は気になる人もいるだろう。

●eMAXIS Slimシリーズのメリット

eMAXIS Slimシリーズは、コストが低く、分散投資を行いやすい商品が多いメリットがあるため、初心者が買うのに適した投資信託といえます。

eMAXIS Slimシリーズはいずれもインデックスファンドであり、日本株全体や全世界の株式、特定の条件を満たした500銘柄など、一つの銘柄に投資するだけで多くの商品に分散投資を行うことができる。

それだけなら他のインデックスファンドと同様だが、eMAXIS Slimはそうした競合の中でもコストを低く抑えやすいのがメリットだといえる。

そもそもeMAXIS Slimシリーズは、前述のように販売チャネルをネット証券や銀行のインターネット専用販売に絞ることで、信託報酬を低く抑えている。幅広い金融機関で販売する商品に比べ、主に人件費がかからないことが手数料を低く抑えられる要因だ。

さらに「業界最低水準の運用コストを、将来にわたって目指し続けるファンド」を運用の目標として掲げている。これは、他社の類似ファンドの信託報酬がeMAXIS Slimシリーズを下回る場合、ファンドが継続できる範囲で信託報酬率を引き下げることを基本とする方針である。

これはあくまで目標であって業界最低水準の信託報酬を保証するものではないが、実際に本シリーズの信託報酬は発売開始以降たびたび下げられている。

しかし他社も黙ってはいない。各社の主力ファンドの信託報酬競争は熾烈だ。

例えばeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の信託報酬は2023年4月25日から0.09372%に引き下げられており、競合のiシェアーズ米国株式(S&P500)インデックス・ファンドの信託報酬0.0938%と肉薄している。

またeMAXIS Slim先進国株式インデックスの信託報酬も2023年5月11日に0.9889%まで引き下げられているが、競合のたわらノーロード先進国株式も0.09889%だ。

明らかにお互いを意識した信託報酬設定となっているのが、お分かりいただけるだろう。今後も信託報酬の引き下げ競争は続くと考えられる。

つみたてNISAの対象商品となるには、一定水準以下の信託報酬、信託契約期間が無期限または20年以上、分配頻度が毎月でないことなど細かな条件をクリアする必要がある。いずれも長期安定的な運用に不可欠な要素だ。

初心者にとって難易度が高い「銘柄選び」と「売買のタイミング」が、eMAXIS Slimシリーズに積立投資をすることによって容易になるでしょう。

●eMAXIS Slimシリーズのデメリット

eMAXIS Slimシリーズは対面証券での取り扱いがない点がデメリットです。

徐々に増えてきているとはいえ販売会社はインターネット専用の31社のみだ。対面で投資信託を販売している金融機関では店頭でeMAXIS Slimシリーズは購入できない。

eMAXIS Slimは投資の中でも比較的リスクが低い商品であるが、元本割れリスクはある。ネット証券では自分自身で商品を選ばなければならないため、投資初心者の中には不安に感じる人もいるだろう。対面販売であれば、投資は最終的には自己責任ではあるが、納得いくまで担当者のアドバイスを仰ぐこともできる。

またeMAXIS Slimシリーズを取り扱うすべての会社が、全13商品のラインアップをそろえているわけではない点にも注意が必要だ。

■よくあるQ&A

Q.eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)とは?

A.eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)は、三菱UFJ国際投信が運用を手がけているインデックスファンドシリーズである。eMAXISの同等ファンドに比べると、販売チャネルが限定されているかわりに信託報酬が安い特徴がある。

Q.eMAXIS SlimシリーズとeMAXISシリーズの販売手数料に違いはある?

A.どちらも販売手数料は無料で、ノーロード投信と呼ばれている。

Q.eMAXIS SlimシリーズとeMAXISシリーズの信託報酬での違いは?

A.信託報酬に差がある。保有中に発生する信託報酬はeMAXIS Slimシリーズのほうが低めで、約0.5%以上の開きがある。

Q.eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)シリーズを初心者が買うメリットとは?

A.eMAXIS Slimシリーズのメリットは信託報酬などの手数料が安いこと、また市場全体に投資するインデックス型が中心となっているため、地域や資産を幅広く分散投資できることだ。安定性が高く、つみたてNISAにも対応していることから、初心者にもおすすめできる。

Q.eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)シリーズを初心者が買うデメリットとは?

A.取り扱っている会社はインターネッ専業の証券会社23社のみで、対面で投資信託を販売している金融機関では購入できない点が挙げられる。

Q.eMAXISシリーズとは何ですか?

A.eMAXISシリーズとは三菱UFJ国際投信が運用・指図をするノーロード・インデックスファンドシリーズのこと。様々な資産クラスを含んだインデックスファンドやバランスファンドを取り揃えている。対面・インターネットで購入できるベーシックな「eMAXIS」、インターネット経由のみで購入可能で、コストにこだわった「eMAXIS Slim」、コモディティに投資ができる「eMAXIS プラス」、宇宙開発やAIなど、革新的なテーマに投資ができる「eMAXIS Neo」の4つのシリーズがある。

Q.eMAXISとeMAXIS Slimの違いはなんですか?

A.いずれもノーロード・インデックスファンドであるが、eMAXIS Slimのほうが信託報酬が安い傾向にある。またeMAXISは対面・インターネットいずれかで購入できるが、eMAXIS Slimはインターネット経由のみで購入可能だ。

Q.eMAXIS Slim 国内株式とは何ですか?

A.国内企業を投資先とするインデックスファンドのこと。東証株価指数(TOPIX)、あるいは日経平均に値動きに連動する投資成果を目指すタイプの2種類がある。

Q.eMAXIS Slimの先進国株式と全世界株式(オールカントリー)はどっちがおすすめ?

A.リターンは先進国株式のほうが高い傾向にあるが、よりリスクを抑えてリターンを安定させたい人は、多くの国に分散投資をしている全世界株式(オールカントリー)がおすすめだ。ちなみにeMAXIS Slimの先進国株式は欧米を中心とした先進国の企業に投資をするファンドであり、オールカントリーは約9割を先進国に、残りをインドや中国といった新興国に投資する。

Q.eMAXIS Slimはなんて読むの?

A.イーマクシス・スリムと読む。

執筆・金子賢司

立教大学法学部卒業後、東証一部上場企業に入社。その後、保険業界に転身し、ファイナンシャル・プランナー(FP)として活動を開始。FPの最上級資格CFP資格を取得し、個人・法人のお金に関する相談を受けながら、北海道のテレビ番組のコメンテーターなどとしても活動している。

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