マツダの上級シフトをけん引する人気の3列シートSUV
マツダの3列シートSUV「CX-8」が先ごろマイナーチェンジを受けた。その内容をひと言で表すとしたら“多様化”という言葉がふさわしい。
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CX-8は人気SUVである「CX-5」の全長とホイールベースを伸ばしたモデルといえるが、2017年12月の発売以来、マツダの想定を超える勢いでヒットを記録。「3列シート車が欲しいけれどミニバンはイヤ」というユーザー層を巧みに取り込み、広く受け入れられた。
3列シートを備える国産SUVはいくつか存在するが、トヨタの「ランドクルーザー」や「ランドクルーザープラド」は本格オフローダーのためキャラクターが異なるし、先代のレクサス「RX」は価格差が大きすぎた。また、日産「エクストレイル」や三菱「アウトランダー」にも3列シート仕様があるが、2列目/3列目シートの居住性ではCX-8が大きくリードしている。ミニバンをラインナップから外す決断を下したマツダながら、3列シートSUVのジャンルではしっかりと成功を収めたのである。
2022年に市場投入されたニューモデル「CX-60」を見ても明らかなように、ここへ来てマツダは明確に上級シフトを打ち出している。そうしたブランドの変化を語る上で外せないモデルが、このCX-8といえる。
まるでリムジンのようなインテリアは好評を博し、エクスクルーシブモードは高価格ながら大ヒットを記録。マツダの開発陣に「より上級仕様を求めるニーズがある」という自信を植えつけると同時に、CX-8はラグジュアリーという新たな世界観を身につけた。
このように、従来のCX-8は高級路線が際立っていたが、今回のマイナーチェンジではそこに新たな価値観をプラスした。
たとえば、フェンダーのタイヤ回りや車体下部の樹脂パーツをツヤのあるブラック塗装仕上げとし、赤いシート表皮も選べるようにした新グレード「スポーツアピアランス」は、CX-8にスポーティなキャラクターをプラスしている。
ボディの樹脂パーツをツヤのあるブラック塗装仕上げとし、赤いシート表皮も選べるようにしたマツダ「CX-8 スポーツアピアランス」
一方、アウトドアの雰囲気を強調した「グランドジャーニー」は、CX-8にとって新たなる挑戦ともいえるグレードだ。車体下にシルバーのガーニッシュを組み合わせるとともに、ルーフレールもシルバーに。インテリアはグレージュの色合いでコーディネートし、高級感ではなくアクティブな印象に仕立てている。
CX-8グランドジャーニーとCX-5フィールドジャーニーとの違い
ところで気になるのは、「CX-5」に設定される同様のグレードが「フィールドジャーニー」を名乗るのに対し、CX-8ではグランドジャーニーという名称となることだ。
アクティブな印象に仕立てられたマツダ「CX-8 グランドジャーニー」
ともに駆動方式は4WDのみの設定で、カジュアルかつタフさを想起させるエクステリアやインテリアを採用したり、走行モードに「オフロードモード」を追加したりと共通点が多い。
その一方、CX-5フィールドジャーニーが内外装に採用するライムグリーンのアクセントがCX-8グランドジャーニーにはなく、専用のサスペンションやオールシーズンタイヤが装着されるのもCX-5フィールドジャーニーのみ。こうして見比べると、CX-5フィールドジャーニーの方がよりアウトドアに特化したキャラクターだといえる。
「CX-5のフィールドジャーニーがキャンプ向けだとすれば、CX-8のグランドジャーニーはグランピング向け、といったところでしょうか。その分、グランドジャーニーの方が、レジャードライブを気軽に楽しんでいただけるモデルに仕上がっています」と、CX-8の開発陣は2台の違いを説明する。
●ヘッドライトやフロントバンパーはCX-5と同じデザインに
今回のマイナーチェンジでは、もちろんデザインや各種装備のアップデートもおこなわれている。
まずエクステリアでは、ヘッドライトやフロントバンパーが最新のCX-5と共通のデザインに変更された(フロントグリルはCX-8専用)。これだけでグッと若返った印象だ。
対するインテリアでは、シートの内部構造が変更された。これにより、骨盤の立った姿勢で安定して座れるようになり、ドライブ時に感じる疲労感を抑制。また、本革シートを採用するモデルでは、座面の表皮の張り方も一新されている。
このほか、ワイヤレスでのApple CarPlayへの対応や、USBポートのType-C化(フロントシートのみ)など、スマホ環境のアップデートが図られたのもうれしいところ。そのほか、高速道路の走行時に車線中央をトレースするようハンドル操作をアシストする機能が、よりなめらかな走行ラインをとれるようになったのもトピックといえるだろう。
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マツダは今後、CX-8よりひと回り大きな3列シートSUV「CX-80」の市場投入を計画している。しかし今回、CX-8に施された改良の内容を見る限り、CX-80登場後もCX-8は継続して販売されることになるだろう。
マツダの企業規模を考えると、3列シートSUVを2モデルも展開するなんて贅沢に思えるが、それもSUVの定番化を背景とする“ラインナップの多様化”といえるかもしれない。