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CES2024で公開、ソニー・ホンダの「アフィーラ」を深掘りして見えてきた着実な進化に驚き

EVシフトの先にあるのがSDV(Software Difined Vehicle)。ソフトウェアによって性能や機能を制御する、いわば電子機器化したクルマだ。その最先端を走るのが、ソニー・ホンダモビリティ株式会社(SHM)が手掛ける「アフィーラ」。予約開始まであと1年余り、現在の進捗状況が最新のプロトタイプとともにCES2024で報告された。(タイトル写真はプレスカンファレンスでスピーチする川西泉SHM社長とプロトタイプ2024)

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初公開からわずか1年でこの完成度、内外装はほぼこのままで市販車に!?

CES2023での衝撃の初公開から1年、ラスベガスに帰ってきたアフィーラのプロトタイプ2024は、来年春から始まる予約開始に向けてさらに開発スピードを加速させていることを窺わせた。

内外装は、これがほぼ最終仕様と言ってよいだろう。2023年のプロトタイプから一見しただけではわからないブラッシュアップが行われている。

たとえばボディサイズ。2024モデルは全長が100mm伸びて4915mm(2023モデルは4895mm)になった。これは主にデジタルディスプレイを収容するフロントノーズ部のデザインがよりエモーショナルで立体的に改められた影響だ。併せてヘッドランプユニットのデザインも変更されている。

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フロントエンドは100mm延長されてよりエモーショナルで立体的なデザインとなった。

さらにデジタルサイドミラーは、伝統的でスポーティなデザインに変更されている。リアバンパー、トランクリッド開口部の形状、延長されたフロントまわりとのバランスを取るためか微妙に異なるデザインのテールライトも確認できる。

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リアエンドもトランクリッド開口部やバンパーの形状に若干の変更が加えられているようだ。

インテリアも同様。広大なディスプレイが広がるキャビンは、ほぼ前モデルをそのまま継承している。センターコンソールやステアリングホイールに若干のブラッシュアップが施されているが、前年から大きく変更されているところは見当たらない。正式受注の開始時期を考えれば、この先に内外装の大きな変更はないと考えるのが妥当だろう。

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センターコンソールやステアリングホイールに若干のブラッシュアップが窺われるが基本的なデザインは最初のプロトタイプを踏襲している。

今までのクルマの概念では括れない。本格SDVとしてさらに進化する気配

もっともアフィーラは、従来のクルマ的視点=スペックやデザインだけで語ることはできない。なによりも重要なのは、初の本格SDVであること、そしてソフトウェア領域。それが可能にする新たなユーザー体験だ。

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ユーザーがまだ知らないモビリティを体験させてくれるのがアフィーラの真骨頂だ。

アフィーラが最優先しているのは安全性能だ。先端AI技術を駆使したADAS(先進運転支援システム)の実現を目指している。今回の発表では、ADASの一例として「Vision Transformer」による物体認識が挙げられた。センシングデバイスから得られる膨大なデータを超高速処理する必要があるが、それを担当するのが米クァルコム社の「SnapDragon Ride」と名付けられた車載用高性能SoC(System on Chip)だ。

また、前回のCES2023で発表された「Epic Games」との協業についても進捗状況が説明され、リアルとバーチャルを融合したシミュレーターも展示された。車両、歩行者、地形、天候などさまざまな外的環境条件をシミュレートし、AR技術との組み合わせにより、ユーザーは没入感がありながら安全性も向上するという。

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「ARナビゲーション」のデモ画面。肉眼で確認しづらい人・車・障害物を検知してディスプレイに表示することが可能になる。

さらに、インターネット上の情報を重ねた3Dナビゲーションマップも提案。実現すれば、マップデータを利用した新しいエンタテインメント空間やゲーミング感覚を経験することができるようになる。これら車内エンタテインメントの拡張には、Epic GamesのゲーミングエンジンUnreal Engineの最新バージョン「Unreal Engine 5.3」が重要な役割を果たす。OTAによる随時アップデートも予定されている。

マイクロソフトやポリフォニー・デジタルも参加、広がるSDVの未来

社内の知見に頼るだけでなく、社外のクリエーターやデベロッパーが開発に参加する「AFEELA共創プログラム(仮称):AFEELA Co-Creation Program」の進捗も報告された。今回新たに発表されたのは、「Microsoft」そして「ポリフォニー・デジタル」との連携・協業である。

●Microsoftと連携した対話型パーソナルエージェントの開発:Microsoft Azure OpenAI Serviceを活用した専用の対話型パーソナルエージェントの開発:自然言語によるシームレスなコミュニケーションと会話のようなインタラクションを実現する高度な音声対応システムを目指している。

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マイクロソフトと連携して対話型パーソナルエージェントの開発も進めていることを発表。

●ポリフォニー・デジタルと車両開発の協業を開始:ポリフォニー・デジタルのシミュレーション技術とSHMの実車開発技術を融合。人の感性・官能領域でバーチャルとリアルを融合した車両開発を加速する。なお、「グランツーリスモ7」のアップデート版にアフィーラプロトタイプ2024を収録予定。バーチャルな試乗体験ができる。

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「グランツーリスモ7」のアップデート版にアフィーラプロトタイプ2024を収録する予定だという。

「走る」「曲がる」「止まる」。ハードウェアとしてのクルマはすでに完成の域にある。一方、SDVはその概念の一部が実用化されつつあるものの、まだ未知の領域だ。各社さまざまな取組みを発表しているが、これぞSDVと言える実車はまだ世に出ていない。つまり、競争のただ中にある。そのトップランナーが「アフィーラ」だ。今後各社のベンチマークとなることは間違いないだろう。

【主要諸元 アフィーラ プロトタイプ2024】

・全長×全幅×全高:4915×1900×1460mm

・ホイールベース:3000mm

・駆動方式:AWD

・駆動用モーター出力:前180kW/後180kW

・バッテリー種類/容量:リチウムイオン/91kWh

・充電許容量: DC150kW/AC11kW

・サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン/後マルチリンク

・タイヤサイズ:前245/40R21 後275/35R21

【連載】「ソニー・ホンダモビリティの衝撃」世界が注目する一大プロジェクト発進の必然 – スマートモビリティJP

【連載②】「ソニー・ホンダモビリティの衝撃」AFEELAで目指す、まったく新しいモビリティ像とは – スマートモビリティJP

【連載③】「ソニー・ホンダモビリティの衝撃」異業種の協業で何が生み出されるのか – スマートモビリティJP

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