自動車

話題

自動車産業をメタバースがけん引? 開発とデザインが革新されるワケ

急速に変化を遂げるデジタル技術

 モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などを含むデジタル技術の進歩はめざましく、私たちの身の回りにあるさまざまなものが、急速に変化を遂げている。

【画像】えっ…! これがトヨタの「年収」です(8枚)

 もちろん自動車も例外ではない。10年前には比較的珍しかったセーフティサポートも、近年では高級車種でもない車にも当たり前のように搭載されている。今は一部の高級車種にしか搭載されていない機能も、やがて一般的な車にも搭載され、私たちの生活に浸透していくのだろう。

 IoTやAI以外にも、自動車に大きな変化をもたらすといわれている技術に拡張現実(AR)や仮想現実(VR)、そしてメタバースがある。ここではそれらが自動車にもたらす変化や、すでに実用化されている例などを紹介していく。

 まず、ARやVR、メタバースについて、かんたんに振り返っておこう。

 ARとは現実世界に対し、仮想の視覚情報を加えるものだ。ベースが現実にあるのがポイントである。例えばスマートフォンのGoogle検索では、いくつかの動物をARオブジェクトとして表示できる。今目の前にある現実の世界に、検索した動物がいたらどのように見えるのかを、スマートフォンのカメラを通して見ることができるのだ。

 続いてVRとは、仮想の空間をリアルに体感するためのものだ。ARとは異なり、ベースが仮想空間になる。コントローラーで身体の動きを検知して遊ぶゲームなどがVRに分類される。

 最後にメタバースだが、メタバースもまた仮想空間をベースにしたものだ。VRにも似ているが、アバターを用いたコミュニケーションや、ビジネス機能を持つことなど、VRよりも多くの機能が要求されている。

自動車に組み込まれるAR

microsoft, 自動車産業をメタバースがけん引? 開発とデザインが革新されるワケ

VRゴーグルをつけた女性(画像:写真AC)

 これらのなかでもARは、すでに比較的多くの自動車に導入されている技術である。

 一部の高級自動車ではヘッドアップディスプレー上に、衝突の危険のある歩行者の表示が可能だ。またナビゲーションシステムにおいて、あらかじめ用意されたCG画像ではなく、車載カメラで実際に撮影された映像に対し、進行方向を矢印で表示するものもある。

 このように紹介すると、自動車におけるARはまだまだ一部の自動車にしか搭載されていないように感じるが、実はそうではない。

 例えばバックモニターに表示される、自動車との距離を示す赤や黄色のライン、ハンドルの回し具合に合わせて表示される進行方向予測の線。これらもいわばARの一部である。さらに、自動車周囲の死角を自動車上部から見ているかのように表示するバードビューもARといっていいだろう。

 自動車の運転は現実世界で行われるものであり、そこに視覚的な情報を追加できるARは非常に相性のいいテクノロジーであるといえる。したがってARは、今後もさまざまな形で自動車に組み込まれ、運転手へのサポートとして活用されていくだろう。

安全教育やディーラーで活用されるVR

microsoft, 自動車産業をメタバースがけん引? 開発とデザインが革新されるワケ

ARのイメージ(画像:写真AC)

 一方でVRは仮想世界がベースとなるため、ARとは異なり運転をサポートするという意味では活用が難しい。VRが活用されるのは、教習所における安全教育やディーラーなど、運転以外の場面が多くなる。

 自動車運転の安全教育においては、危険な状況の再現し体験させるなど、すでにVRが活用されている。また一部のディーラーでは、車内オプションを搭載した際や、外観オプションによる見た目の変化を、VRを使って顧客にイメージさせる試みも行われている。

 VRは仮想世界を映すものではあるが、紙面やフラットなモニター上で映像を見るのとは異なり、まるでその場にいるかのような没入感があるため、そこにはないものを体感してもらうのに適している。

 したがってVRが自動車そのものに搭載されて活用される可能性は、今後もあまり高まることはないだろう。しかし安全教育やサービス面ではさらに活用が広まり、ディーラーなどで触れる機会もきっと出てくるに違いない。

 最後にメタバースについてだが、日産自動車がバーチャルギャラリーにメタバースを利用した例はある。車の情報に併せ、映像コンテンツも展開し、参加者を楽しませたそうだ。しかし少なくとも2023年の段階においては、メタバースが自動車の一般利用者に大きな変化をもたらす兆しは、まだ見えていない。

 またメタバースもVRと同様に仮想空間をベースとするため、活用が進むとしても、運転サポートよりは安全教育やサービスの現場で扱われることになるはずだ。

製造、開発現場にも影響

microsoft, 自動車産業をメタバースがけん引? 開発とデザインが革新されるワケ

メタバース空間のイメージ(画像:写真AC))

 ここまでは自動車のユーザーに対してARやVR、メタバースが及ぼす変化について述べてきたが、製造や開発、メンテナンスの現場における変化も紹介しておきたい。

 例えばトヨタ自動車では、販売店で整備作業を行う作業員に向け、すでにARグラスを導入している。ARグラスを使用すれば、車両情報や作業項目が現実空間に重ねて表示され、書類やパソコン画面を振り返りながら作業する必要がなくなる。またVRは、製造やメンテナンスに携わる作業員に対する安全教育にも使われており、今後もさらに活用は増えていくだろう。

 開発現場を今後大きく変える可能性を秘めているのがメタバースである。オンラインでのデザイン会議などで、参加者全員が同時に仮想モデルに触れ、その場でモデルを操作しながら話し合いを行うような使い方が予想されている。

 実際にすでに「Mesh for Microsoft Teams」のように、メタバース会議が可能なサービスも存在している。コロナ禍によってウェブ会議が当たり前になった今ならば、このようなサービスの浸透速度もさらに加速すると考えていいだろう。

 以上をまとめると、ARは自動車の運転を、VRは自動車の購入を、メタバースは自動車の開発を変えていくと期待されている。新しい車に触れるとき、そこにどのような新しいテクノロジーがあるのか、楽しみにしたい。

アルピナD3ビターボはどんなセダン&クーペだったのか? これぞ最高の3シリーズ! 4気筒ディーゼルは5リッター級ガソリンV8ユニットに匹敵するトルクを発揮する感動エンジン!!

アルピナD3ビターボはどんなセダン&クーペだったのか? これぞ最高の3シリーズ! 4気筒ディーゼルは5リッター級ガソリンV8ユニットに匹敵するトルクを発揮する感動エンジン!!

ランボルギーニ ウルス SEは、なぜBEVではなくPHEVを選択したのか?

ランボルギーニ ウルス SEは、なぜBEVではなくPHEVを選択したのか?

“6速MT”もある新型「トルネオ」!? SUV風デザインが超カッコイイ! 日本でも”最高にちょうどいい“「コンパクトミニバン」とは

“6速MT”もある新型「トルネオ」!? SUV風デザインが超カッコイイ! 日本でも”最高にちょうどいい“「コンパクトミニバン」とは

横浜ゴム「GEOLANDAR X-CV」「GEOLANDAR A/T G31」がトヨタ 新型「ランドクルーザー250」に新車装着

横浜ゴム「GEOLANDAR X-CV」「GEOLANDAR A/T G31」がトヨタ 新型「ランドクルーザー250」に新車装着

ママ友の送迎車が「ヴェルファイア」で羨ましいです。かなりの収入がある証拠でしょうか?

ママ友の送迎車が「ヴェルファイア」で羨ましいです。かなりの収入がある証拠でしょうか?

【コラム】400ccクラスの輸入車がいま面白い! ハーレー、トライアンフが新規参入、KTM、ハスク、ロイヤルエンフィールドもあり

【コラム】400ccクラスの輸入車がいま面白い! ハーレー、トライアンフが新規参入、KTM、ハスク、ロイヤルエンフィールドもあり

6速MT搭載! マツダ「小さな高級コンパクト」あった!? クラス超え“上質内装”×めちゃスポーティデザイン採用! 登場期待された「斬新モデル」とは

6速MT搭載! マツダ「小さな高級コンパクト」あった!? クラス超え“上質内装”×めちゃスポーティデザイン採用! 登場期待された「斬新モデル」とは

ヤフオク7万円で買ったシトロエンのオーナー、エンジン編集部ウエダが、フランスの聖地で出会ったとびきりレアなクルマ、その1【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#36】

ヤフオク7万円で買ったシトロエンのオーナー、エンジン編集部ウエダが、フランスの聖地で出会ったとびきりレアなクルマ、その1【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#36】

マツダ ルーチェ・ロータリークーペ(昭和44/1969年10月発売・RX87型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト055】

マツダ ルーチェ・ロータリークーペ(昭和44/1969年10月発売・RX87型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト055】

韓国の現代・起亜自動車、米「最高価値EV」1~3位を席巻…第1四半期の販売量も56%増加

韓国の現代・起亜自動車、米「最高価値EV」1~3位を席巻…第1四半期の販売量も56%増加

TOP STORIES

発見・体験、日本旅行に関する記事
Top List in the World