ケータハム新型「コンセプトV」日本初公開
ケータハムは東京オートサロン2024で、新型「コンセプトV」を日本初公開しました。同モデルのデザイナーに、話を聞きました。
日本では初公開となった「プロジェクトV」
日本では初公開となった「プロジェクトV」
ケータハムは2021年以来、日本の自動車ディーラーグループのひとつであるVTホールディングスが所有しています。
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そのケータハムは、ロータスが1960年代から70年代まで製造していたセブンの製造販売権などを譲り受け、スーパーセブンを製造販売し今に至ります。
2023年に創立50周年を迎えたケータハムは、2023年7月のグッドウッドフェスティバルオブスピードでEVクーペのコンセプトカーを世界初公開しました。それが新型コンセプトVだったのです。
コンセプトVは、2025年後半から2026年前半に投入予定の軽量のEVクーペで、リヤアクスルに搭載された200kW(272PS)のシングルモーターを動力源とするパワートレインを採用。
新型プロジェクトVの0-62m/h(100km/h)加速は4.5秒未満、推定最高速度は143m/h(230km/h)、WLTP航続距離は249マイル(400km)となる予定です。
また、新型プロジェクトVのデザイン哲学はスーパーセブンと同様に軽量でシンプルであることが謳われ、革新的なカーボンファイバーとアルミニウムの複合シャシーを採用することで、車両重量1190kg(2+1シートレイアウト仕様)を目標としています。
EVをデザインしたのではなくスポーツカーをデザインした
このデザインを主導したのは、ケータハムのチーフデザイナー、アンソニー・ジャナレリ氏です。
彼は大学を卒業した後ジュエリーデザイナーを経て、自分の欲しいクルマを作りたいとドバイで起業。1960年代のデザインの雰囲気を醸し出すデザインを持ったクルマを製造した経験を持つ人物です。
そもそもプロジェクトVは、VTホールディングスの社長である高橋和夫氏が温めていて構想からスタートしました。
氏は、昔からロータスエランのようなデザインテイストを持つ2+2クーペを作りたかったそうです。一方でこれからヨーロッパやイギリスではZEVになっていくことを踏まえ、このタイミングだからこそEVクーペを作ろうと決意したようです。
そうしてこのプロジェクトVが生まれたのです。
そのデザインからはEVというイメージは感じられません。ジャナレリさんによると、「EVをデザインしたのではなく、スポーツカーをデザインしたのです。たまたまそれがEVだったと。EVになるとパッションやエモーションがなくなってしまうと思われがちですが、私は自動車が大好きですから、“ペトロールヘッド(クルマに熱中している人の意)”でもEVに乗りたくなるクルマを作りたくてプロジェクトVをデザインしました」と説明します。
スーパーセブンとの共通点とは?
そのデザインの特徴はシンプリシティであり、シンメトリーがキーワードです。人間はシンメトリーなものを見ると美しく感じることから、その思考をプロジェクトVにも取り入れられました。
デザインの特徴はシンプリシティであり、シンメトリー
デザインの特徴はシンプリシティであり、シンメトリー
例えばサイドから見てみましょう。クルマを真ん中から左右半分に分けてみると、前後のホイールアーチがシンメトリーになっていることに気付きます。
さらに、前後のフェンダーの上部のラインと下部のラインをたどっていくと、どちらもドア中央に集まってくるようにデザインされています。またAピラーとCピラーの角度やフロントエンドとリアエンドの角度も同じようになっているのです。
そうしながらもジャナレリさんは、「1960年代のクルマが大好きなのです。その時代は女性のようなシルエットを纏わせた美しいクルマが多かったのですが、最近のクルマではあまり見かけなくなってしまいました。そこでぜひ再現したかったのです」とコメント。
一方でデザイナーとしては、新たなトライもしたくなるもの。
その点についてジャナレリさんは、「プロジェクトVのデザインは大きく3つに分かれています。まず下側の黒い部分は、エアロダイナミクスを意識したもの。真ん中はウルトラモダンなデザインで、ロボット的な印象も与えています。例えばドアの下回りの造形でそう感じるでしょう。そして上は非常に柔らかいルーフラインで、オーガニックでありながらこれまでのスポーツカー的なシンプルな形となっているのです」と説明し、「ケータハムのデザインはシンプリシティですが、シンプル過ぎるとつまらなくなります。ですので、そのシンプリシティとちょっとモダンなアグレッシブさを混ぜることで完成させたのです」と話しました。
低いシートポジション
インテリアに目を移すと、非常に低いシートポジションが目に留まります。
これは床面全体ではなくシートを挟んだ前後にバッテリーを配した結果、シート位置を下げることに成功したからです。
そこまでしてシート位置を下げたかったのも、スーパーセブンに近づけたかったからでしょう。
メーター周りはデジタルでありながら、クラシカルなデザインを施し、左右に広がるインパネは平面で、こちらもクラシカルな印象を強調しています。
しかし、中央のスクリーンはナビやエアコンの操作ができるようになっており、使いやすさも考慮されていました。
リアに目を移すとちょうど真ん中にシートがレイアウトされました。ここは一人乗り、それも子供用ほどのサイズです。
「子供がそこに座ると、真ん中から真正面を見ることができるので、クルマを運転しているフィーリングをドライバーと一緒に感じることができるでしょう」とジャナレリさんはコメントしていました。
ケータハムにボディをかぶせて
一見スーパーセブンとの共通性は見いだせないかもしれません。
しかしケータハムのファミリーの共通性も持たせてあるのです。そもそも新型コンセプトVのデザインを始める際にはスーパーセブンをもとに四輪をフェンダーで覆い、キャビンを新たに設けるイメージで進められたといいます。
従ってノーズの先端部分などは、ケータハムスーパーセブンのフロントグリルと同じようなイメージを持たせています。そして、シンプルでクリーンなボリュームで4輪をカバーしていったということなのです。
今回のモデルはコンセプトで、それを作成したのはイタルデザインでした。
カーデザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロが興した会社で、現在はVW傘下のもとで活動。カーデザインだけでなくコンセプトモデルの作成なども手掛けており、このモデルもその一環で、ジャナレリさんさんのデザインやBEVの要件等を盛り込みながら作られたようです。
従って実際の製造は、ケータハム自身で行われる可能性が高いと思われます。
BEVとして非常に軽量に仕上げられるであろうコンセプトV。どのような走りが楽しめるのか、今から楽しみです。