農具小屋がスポーツカーのガレージに大変身! マクラーレン720SスパイダーとアルピーヌA110Sアセンション、2台のスポーツカーに出会ったオーナーの人生も大変身!!
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『エンジン』の人気企画、「2台持つとクルマはもっと楽しい」。マクラーレンとアルピーヌ、いずれも走るためだけに生まれたようなスーパーカーとスポーツカーの2台を洒落たガレージに納める向井豊さん。かつてはバイクで全国を走り回っていたが、この2台で向かうのはサーキットだ。
クルマのための空間
「一期一会」という言葉があるが、それは何も人との出会いに限ったことではない。クルマとの出会いも、時として世界を広げ、人生を豊かにしてくれることがある。
大型の電動シャッターを備えた広い間口と、フラットなアプローチというまさにスーパーカーにはうってつけのガレージに、20年型のマクラーレン720Sスパイダーと22年型のアルピーヌA110Sアセンションを並べる向井さんもそんな経験をもつ一人である。
向井さんがこの場所をガレージに改装したのは一昨年のこと。当初はシャッターが1カ所だけだったのだが、フェラーリ・ポルトフィーノを手に入れたことをきっかけにもう1カ所増設したのだそうだ。
「18年の5月に注文してから2年掛かりで納車されたんです。そこでさらに良くしようと、建築家に頼んで大々的にリノベーションして、ようやくこの9月に完成したところなんですよ。断熱材もエアコンも入れ、換気扇をつけて空気が流れるようにしてあるので、クルマを保管する環境はちゃんとしていると思います」
ガレージ内の片面の壁が赤く塗られ、良いアクセントになっているのはフェラーリを意識してのことだという。しかしながらその間にマクラーレンが増車され、ポルトフィーノがA110に入れ替えられることとなった。果たしてそこにどんな経緯があったのだろうか?
免許を取って以降、ホンダ・プレリュード、ユーノス・ロードスター、ボルボなど色々なクルマを乗り継いできた向井さんだが、これまでもっぱら趣味の対象だったのは、スキー、ダイビング、オートバイ、そしてカメラなどアクティブなものばかりだったそうだ。
「スキーもカメラもスクールに通って勉強してね。そういうところに行かないと上手くならないし、結構好きなんですよ。バイクも最初は中型だったけど物足りなくなって大型を取ってBMW R1200STを買ったりしてね。スキーもバイクも、行った先々で風景写真が撮れるでしょ。バイクでは九州から北海道までいろんなところに行ったけど、どこの店が美味いということよりも、綺麗なとこと、走って面白いところは沢山知っています(笑)」
これがアドレナリンか!
そんな向井さんの趣味の世界を一変させたのがコロナ禍だった。
「どこかに行かないとできない趣味でしょ。お金持ちの皆さんが旅行に行けないから、クルマを買おう、時計を買おうという気持ちがよくわかります。そんな時に友達に誘われてマクラーレンを見に行ったんです。うわ~カッコいいと一目惚れでしたね。スパイダーだし、白と黒という色も良かった。スーパーカーなんて2度と買わないかもしれないから行っておこうと即決しました」
そしてこの内外装に多数のカーボンパーツをあしらったオプションのカーボンファイバー・エクステリア・アップグレード・パックを装着した720Sスパイダーを買ったことが、向井さんに新たな趣味の世界を切り開くこととなった。
「21年の2月頃に納車されて、5月に富士スピードウェイでトラックデイがあるからって、グランツーリスモでサーキットを覚えて行きましたよ。実は以前、中古のポルシェ991カレラを買ってドライビング・レッスンに通ったことがあったのですが、怖くて友達に売っちゃったんです。でもマクラーレンで走ったらめちゃくちゃ面白い。同じ富士でも全然違う。僕でも楽しめる。これがアドレナリンか! って思いましたね」
それからというもの、鈴鹿サーキット、岡山国際サーキットと、機会があれば積極的にサーキット走行に出向くようになったという向井さん。いつしかそのためにレーシング・スーツやヘルメットも新調し、ガレージのリノベーションにあわせて作ったプライベートルームには、本格的なドライビング・シミュレーターDRiVe-Xを設置し、トレーニングに興じるまでになった。
また向井さんが日々DRiVe-Xでトレーニングを積むプライベート・ルームは、遮音もしっかりとしている(クロスはサンゲツとコラボのランボルギーニ製!)うえに、屋根裏にストレージも完備するなど機能的な設計となっていた。いずれにしろ部屋の中から2台の愛車を眺めるのは、至福の時間に違いない。
「シミュレーターなら怪我しないので、大阪の心斎橋にあるお店に行って教えてもらったりしながら、練習しています」
さらにマクラーレンを通じて、様々な交友関係が広がるとともに、最近では現代アートなど、趣味の世界もさらに広がっているそうだ。
こうしたマクラーレンとの生活で、サーキット走行の面白さにのめり込んでいくうちに、こういう想いも出てくるようになったという。
「マクラーレンは速すぎるけど、すごく安定している。カーボンモノコックだから万が一の時も安全ではありますが、昔のGT500より直線が速いですからね。こんなのでいつまでも走っていたら危ない。もう少し身の丈で楽しめるものが欲しい……と思っていたところで出会ったのがこれでした」
それがもう1台の愛車、アルピーヌA110Sアセンションだ。
日本市場ではわずか30台限定で販売されたA110Sアセンション。足まわりはシャシー・スポール、カーボン製のリア・スポイラー、ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2を履いた鍛造ホイール、カーボン・ルーフ、サベルト製モノコック・バケットシートなど、サーキットを走るための装備をインストールした、まさに向井さんにうってつけの1台だ。
「マクラーレンは奥目というか。ライトの中に手が入ってしまうようなデザインが面白いけど、A110は初代と似ていて目がいいんですよ。4灯のね。僕は元々クルマはプラモデルから入ったんです。タミヤの年間カタログに色々なクルマの模型が載っていて。マクラーレンの存在もそこで知り、セナの時代には海外まで観戦に出かけました。そういう意味ではA110もモンテカルロのラリーカーに憧れたプラモデルの印象が強く残っているんですよね」
7月には入荷していたものの、ガレージの完成を待って納車してもらったというA110の走行距離はまだ2800kmほど。しかし、取材の前日に鈴鹿サーキット南コースを走るなど、早速楽しんでいる様子だ。
「タイヤも重量も違うけど、僕にはこのくらいがちょうどいい。実はフェラーリ・ローマをオーダーしてあって、マクラーレンと入れ替える予定なのですが、A110に関してはずっと持っていてもいいかな? と思っています」
この2台のほかに、普段使いのメルセデス・ベンツGクラス、さらに北海道のセカンド・ハウスにアウディQ5、沖縄のセカンド・ハウスにラングラー・アンリミテッドを置いているという向井さん。それぞれのシチュエーションに最適なクルマとの生活には、これからもさらなる化学反応が期待できそうだ。
文=藤原よしお 写真=望月浩彦
(ENGINE2023年2・3月号)