ついに日本でも発売される新型「GX」は魅力満載
「ザ・プレミアムオフローダー」をコンセプトに生まれ変わったレクサス新型「GX」の試乗の舞台となったのは、アメリカ南西部に位置するアリゾナです。
【画像】「えっ!…」悪路も舗装路も快適性抜群! まもなく日本発売!! レクサス新型「GX」を写真で見る(70枚)
今回、オフローダーらしいテイストを強め、ボクシーなデザインをまとって登場した新型GXのデザインは、まぶしい陽光、そして砂漠のイメージが強い彼の地に、まさにぴったりだなというのが、現地で改めて出合っての第一印象でした。
ボディ・オン・フレーム構造の車体やリアリジッドサスペンションなど、オフローダーの定番要素を備えた基本骨格は、実はレクサス「LX」と同じGA-Fプラットフォームを用いています。従来、LXとGXは骨格から分けられていましたが、ひとつにまとめてベストなものをつくろうというのが、今世代の開発方針だったそうです。
おかげで車体サイズは全長5005mm、全幅1980mmと、LXに対して95mm短く10mm狭いものの、もはやほぼ同等にまで大きくなっています。ただし、見た目の印象は全くの別物です。
直線基調で前後左右のウインドウが立てられたフォルムは、ディテールとクオリティで上質さを醸し出す一方で、これまでのレクサス車にはなかったアクティブな雰囲気、道具的な感覚を漂わせています。トヨタ「ランドクルーザー250」と共通の部分も散見されますが、実際に両車は企画まではいっしょに進められていたのだそうです。
●プレミアムオフローダーだけに不満を感じる箇所も
インテリアも、やはり機能性が強調されています。水平基調のダッシュボードは車体の傾きが分かりやすいように。角度の立てられたフロントウインドウに、前端までよく見え、かつ中央部分が凹まされたフロントフード、低いベルトラインに縦型でボディマウントとされたドアミラー等々のおかげで、視界も素晴らしく開けています。取り回しやすい、駐車しやすいなどメリットは大きいですが、なんといっても過酷なオフロードで、これらは大いに役立つに違いありません。
ちなみに後席もスペース的には十分。着座姿勢はやや立ち気味で、つま先が前席下に収まることもあり、快適に過ごすことができます。荷室も容量は十分。必要とあらば後席の背もたれを前に倒し、座面ごと前方に持ち上げることで、広大なスペースを稼ぎ出すことも可能です。
一方で残念なのが、荷室のトリムがハード樹脂製で、引いたトノカバーの固定がこの樹脂部分に設けられた凹みに引っかけるだけの構造とされていることです。これだと、使っていて割とすぐに、荷物や引いたトノカバーでトリムを傷つけてしまいそうだと懸念してしまいました。それこそランドクルーザー250ならいいのかもしれませんが、プレミアムオフローダーというならば、カーペット張りのトリム、レール式のトノカバーなどはあっていいはずでしょう。個人的に、最大の不満がコレです。
ハードウェアを見てみましょう。まず登場した「GX550」が積むエンジンは、3.5リッターのV型6気筒ツインターボユニット。「LX600」にも積まれているエンジンですが、ターボチャージャーをレスポンス重視の小径タイプとしたため、最高出力は415psから354psに抑えられています。最大トルクは同じ650Nmです。トランスミッションは10速ATで、ローレンジを備えたフルタイム4WDシステムを組み合わせています。
快適性の高さで度肝を抜くイメージリーダー
初日にまず試した「GX550“オーバートレイル+”」は、その快適性の高さで度肝を抜きました。ボディ・オン・フレーム構造につき物のブルブルとした微振動はほとんど感じられず、サスペンションはしなやか。タイヤもトレッド面にはややゴロゴロ感があるものの、入力をやわらかくいなしてくれるといった具合です。
好印象の要因のひとつが、電子制御ダンパーのAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)に加えて搭載されたE-KDSS(エレクトロニック・キネティック・ダイナミック・サスペンション・システム)、つまりは電子制御式可変アンチロールバーでしょう。
普段は効きをゆるめて快適な乗り心地、豊かなサスペンションストロークをもたらす一方、必要なときには姿勢変化を引き締めるこのアイテム、以前、クローズドのオフロードで試した際にもその効果を実感していましたが、普段の乗り心地にもここまで効果的だとは思いませんでした。
ローレンジやセンターデフロックは全車に標準。さらにGX550“オーバートレイル+”には路面状況に応じて最適なブレーキ制御をおこなうマルチテレインセレクト、リアデフロックなども備わり、まさに路面を選ばずレクサスらしい走りを可能にしてくれるシャシーに仕上がっています。
動力性能、走破性も秀逸ですが、それ以上に感心させられたのが速度コントロールのしやすさです。微低速域からまさに意のままのリニアな加速を実現。一方で「スポーツ S」、「スポーツ S+」の両モードではサウンドの演出も加わり、小気味よさを倍加させています。
同様に、ハードもソフトも刷新したブレーキも非常に操作しやすくなっています。これらもオフロード走破性への配慮が、日常域のドライバビリティ向上につながっているのです。
●エントリーグレードで基本性能の高さを実感
続いて試したのは「GX550“ラグジュアリー+”」。22インチのオールシーズンタイヤとAVSを標準とするこのモデルは、オンロードのハンドリングがさらにリニアで切れ味のあるものになっていました。
3グレードあるうちのエントリーに当たる「GX550“プレミアム+”」は、いわば素のGX。AVSなしのコンベンショナルなダンパーに、20インチの比較的扁平率低めのオールシーズンタイヤを組み合わせます。
こちらの乗り心地は想像よりもしなやかで、そして軽やか。フットワークもスッキリとしていて、正直、期待以上でした。これは新型GXの基本性能の高さの賜物でしょう。正直、カナリ気に入ってしまいました。
ちなみにGX550“オーバートレイル+”では、オフロード特設コースも走ることができました。驚かされたのは、そのサスペンションストロークの長さと路面追従性です。
車体が大きく傾くような場面で執拗に足を伸ばして路面をとらえる様には感心させられるばかり。車体が転がるんじゃないかというくらい角度がついても、実際にはクルマは余裕なことには恐れ入りました。
しかも、浮き上がった車体が着地する際には衝撃をきれいに丸め、快適さを失わないのですから、いやはやまさにプレミアムオフローダーを標榜するだけのことはあると実感した次第です。
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実はレクサス新型GX、個人的には2023年6月の発表時点から、とりわけそのデザインにほれて、楽しみにしていたモデルでした。そして今回、じっくりと走りを確かめて、さらに気に入ってしまった次第。
まだ日本仕様の概要や発売時期などは明らかにされていませんが、アリゾナではなく見慣れた日本の風景の中でどう見えるのか、早く確かめてみたいところですね。