ビックリするほど乗り心地がいい! 中古車買うならオシャレなZ4なんてどうですか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/BMW篇】
中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年7月号に掲載された、アルミ製のルーフを持つリトラクタブル・ハードトップを採用して、グッとエレガントになったZ4の国内初試乗をお送りする。
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BMWの新しい2座ロードスターの車名は従来と同じくZ4である。でも、あの軽くて簡素だったZ3から重厚・高級・高性能にフルモデルチェンジしてZ4になった……という今までのロジックを継承するなら、新しいこれはどう見てもZ5と呼ぶべきだろうに……。
そう言いたくなるくらい、新型Z4はこれまでのZ4より、ケタちがいというか、クラスちがいに重厚・高級・高性能になった。まあ、これが5シリーズ級というのはさすが言いすぎだろうが。
35iはレザー内装と電動シートが標準装備。
写真ではインパクト薄なのが残念なインテリアも、実物はダッシュボードが丹念にレザー張りされて、少なくとも精緻感や手触りは正しく5シリーズなみに高級だ。100kgも重くなれば動力性能が心配だが、今回試乗した上級のsDrive35iの3リッター・ツインターボは先代のMを超える400Nmの最大トルクを持つ。それにギアボックスもダイレクトで高効率な7速ツインクラッチだから、高性能スポーツカーと呼んでまったく差支えないくらいには速い。
ビックリするほど乗り心地がいい
ちょっと以前の海外試乗記でも多くの先生方が書いていたが、新型Z4はビックリするほど乗り心地がいい。とにかく快適。乗り心地はたぶん現行3シリーズのどのモデルよりもいい。
この個体はオプションの大径18インチ(もちろんランフラット)を履いているのだからさらに驚きである。最近のBSランフラットは乗るごとに乗り心地が良くなっているが、それとともについに投入された電子制御リアルタイム可変ダンパー(BMWがいうところのアダプティブMサスペンション、単独装着なら20万1000円)によるところも大きいだろう。この可変ダンパーには3つのモード切り替えがあって、「ノーマル」、「スポーツ」、「スポーツ+」としていくにつれて、アシが締め上げられるだけでなく、パワステは重く、スロットル制御も早開けになっていく。
走って印象がいちばん良かったのはやはりノーマルだ。スポーツ+は明らかに演出過多。中間のスポーツはそれなりに反応が速まるが、重くなっただけでなくリアサスが明確に粘るようになった新型Z4のシャシーは、ゴリゴリと無理に振り回そうとするよりも、ふわりとスマートに走らせるほうが似合うし、なにより気持ちいい。
マニア的な意味でのスポーツカー風味、キレ味では、ハッキリいって先代より後退した。しかし、この当たりの柔らかさ、サスの正確で滑らかな作動、そして上屋の落ち着き……の3つが見事に両立した乗り心地は、スポーツカーうんぬんではなく、乗用車として絶品に近いデキといいたい。
ホイールベースなどから想像するに、これは先代と同じくE46系(=旧3シリーズ)のプラットフォーム設計だろうか。だとすれば、表面的なレスポンスではなく、フトコロの深さで勝負できるE46系シャシーは、やっぱり傑作だったんだなあ……とあらためて思う。いまのE90型3シリーズは基本的に硬いのがマッチするが、E46型は硬くても柔らかくても良かった。だから、コーナーでブイブイ言わせたい人は135iクーペか、Z4Mロードスターをどうぞ。新型Z4はそういうクルマではない。
文=佐野弘宗 写真=小野一秋
(ENGINE2009年7月号)