広い後席と荷室は拡大されたボディによる恩恵
2010年の登場以来、「ミニ・カントリーマン」はファーストカーたり得る居住性や積載力を備えたSUV調のミニとして、多くの支持を得てきました。
2024年登場の新型は3代目となりますが、日本ではまず車名がちょっとしたニュースです。
【画像】「えっ!…」走りも居住性も大幅に進化! これが新しい「ミニ・カントリーマン」です(46枚)
プラットフォームもパワートレインも内外装デザインも一新され、使い勝手や走り味が格段に進化した新型「ミニ・カントリーマン」
商標の関係で、過去2代にわたって「ミニ・クロスオーバー」を名乗っていたわけですが、今回、BMWにその商標が譲渡されたことで、正式に他国と同じ「カントリーマン」を名乗ることができるようになりました。
プラットフォームやメカニズムの多くをBMWの「X1」や「X2」と共用しているのは2代目と同じ。それもあって、新型「カントリーマン」の車格はひと回り大きくなっています。
でもその分、室内は確実に広くなっています。特に感じるのはホイールベースの延伸分がリアシートのレッグスペースに活かされていることで、181cmの筆者(渡辺敏史)がドラポジを合わせた上で後席に座っても、ヒザ回りにまずまず余裕を感じるほど。そして背後のラゲッジスペースも、505リットルの容量を確保しています。
プレミアム系CセグメントのSUV市場をガチで戦う「X1」が元ネタなわけですから、その素養はきっちり受け継いでいるというわけです。
そんな新型「ミニ・カントリーマン」の内装は、先代よりも一段とポップでクリーンな印象になりました。ダッシュボードやドアインナートリムには再生ポリエステルを貼り込んで、デジタルガジェットのような雰囲気を醸しています。
ミニの内面側の象徴ともいえるセンターメーターは新型にも継承されていますが、こちらはインフォテインメントモニターも兼ねる9.45インチのOLED(有機EL)ディスプレイに刷新。機能設定の多くをタッチパネルコントロールとすることで、スイッチ類が整理されセンターコンソール回りがかなりすっきりした印象になりました。
物理ボタンが減ることへの賛否はあるでしょうが、このクルマの場合はデザインとのトレードオフということで辛抱できそうではあります。
日本仕様の新型「ミニ・カントリーマン」が展開するグレードは6つ。うち、そのうち4つはエンジン車になります。
ベースモデルに相当するのが、1.5リッター3気筒ガソリンターボの「C」、そして2リッター4気筒ディーゼルターボの「D」、さらに2リッター4気筒ガソリンの「S」と、同じエンジンのハイチューン版ともいえる「ジョンクーパーワークス」は、駆動方式も“ALL4”=4駆となります。
●エンジン車の高性能モデルと肩を並べるEV版のダッシュ力
一方、新型「ミニ・カントリーマン」の大きなトピックといえるのが、EV(電気自動車)モデルが用意されていることです。
EV版のグレードは、1モーター前輪駆動の「E」と、2モーター4輪駆動の「SE」というふたつ。「SE」は0-100km/h加速で5.6秒をマークするなど、エンジン車の「ジョンクーパーワークス」にほぼ肩を並べるダッシュ力を有しています。
しかもこの「SE」、ガソリンエンジンならば5リッター級となる494Nmという最大トルクが発進時から全解放されるわけですから、その速さもむべなるかなという感じです。
ゴーカートフィールはやや大人の味つけに
今回試乗したのは、EV版の「SE」とエンジン車の「ジョンクーパーワークス」でしたが、ともに乗り心地はすこぶる洗練されており、快適性は先代のそれを大きく上回ります。
EVゆえの低重心と高剛性もあって、「SE」の側でその傾向が強いのかな? と思いきや、実はこれまで硬派で鳴らしてきた「ジョンクーパーワークス」も乗り心地のよさはかなりのもの。20インチの大径タイヤを軽やかに履きこなすあたりはミニの新境地を感じさせます。
ゴリゴリのゴーカートフィールは間もなく市場投入される3ドアの側に担わせて、多用途性をウリにする「ミニ・カントリーマン」はちょっと落ち着いた仕立てにしようという思惑なのでしょうか。それはそれで合点のいく話です。
さりとて、BMW「X1」あたりに比べると明確に快活さは上なので、棲み分けはうまくいっているものと思います。
●EV版のフットワークは運転の楽しみを高める
EVの「SE」は重量もかさむ分、ややどっしり&ねっとりした動きが感じられますが、後軸をしっかり使いながら積極的に曲がっていく振る舞いは運転の楽しみを高めてくれます。
対すれば、「ジョンクーパーワークス」は明らかに軽快さが先に立ちながらも、地面をしっかり捉えながら踏ん張っていく粘り強さも持ち合わせています。
運動性能においてはどちらも甲乙つけがたし。でも、EVにして個性が際立つ「SE」のコスパはなかなかのものだと思います。
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気の利いたファミリーカーとしても週末の趣味のお伴としても、かけがえのないひとときを彩ってくれる新型「ミニ・カントリーマン」。その特別な存在感は、おそらくこの新型でも変わらず支持されるのではないでしょうか。