イタリア在住の私は思います、日本車はすばらしいです。走り、耐久性、燃費、パッケージング、どれも全体的にクオリティが非常に高く、安心感があります。筆者が暮らすイタリアでもたくさんの日本車が街中を走っていますし、信頼性が求められるタクシーで採用されていることも多いです。
ただ、イタリアでは販売されていない日本車もあり、「このクルマがこっちでも乗れたらなぁ」なんて思うこともあります。今回はそんなモデルをいくつかご紹介しましょう。
■ミニバンのイメージを覆してくれた 日産「セレナ」
イタリアだけでなくヨーロッパ全体でいえることですが、セレナのような箱形ミニバンはハイヤーやホテルの送迎用として、また仕事で使う商用車のようなイメージがあります。実際、セレナやノア/ヴォクシー、アルファードなど、日本では乗用車として大人気ですが、ヨーロッパでは販売されていません。
Yahoo! 配信用パラグラフ分割 日産「セレナe-POWER」。こんな快適なファミリーカー、イタリアではお目にかかれない
ただ昨年、日本に一時帰国した際に新型セレナに乗り、その素晴らしさに感動しました。e-POWERの滑らかでスムーズな加速、静粛性、ミニバンとは思えないスポーティなハンドリング、考え抜かれたユーティリティや機能。多人数の移動手段としてここまで快適なクルマがはたしてヨーロッパにあるだろうか……と思わずうなってしまうほどのものでした。
イタリアでは箱形ミニバンを個人で所有する人はほとんどいませんが、ここまで家族のために考え抜かれた快適なクルマがあれば、家族を愛するイタリア人ならきっと受け入れてくれるようにも思えます。
■高齢化社会のイタリアでも重宝されるはず!! ホンダ「N-BOX」
2023年に日本で一番売れたクルマである、ホンダの「N-BOX」。その販売台数は23万1385台とダントツの1位でした。軽自動車という日本独特の規格でありながら、広々とした室内空間やスライドドアの利便性、快適なユーティリティなどで安定した人気を保っています。
Yahoo! 配信用パラグラフ分割 ホンダN-BOXカスタム。軽自動車規格でありながら快適な室内空間、高齢者でも乗り降りしやすいスライドドアの乗降性など、パッケージングが秀逸でユーティリティも文句なし
ヨーロッパで小さいクルマといえば、「Aセグメント」とよばれるカテゴリになりますが、日本の軽自動車ほど小さいクルマ(特に全幅)はありません。たしかに高速道路でのアベレージスピードが高いヨーロッパでは、コンパクトカーでも安定したハンドリング性能が求められますので、全幅が広いのは理にかなってはいるのですが、シティコミューターとして市街地のみ走るのであればもっと全幅が狭くても問題ないと思います。
日本車の柔らかい乗り心地は、ヨーロッパに多い石畳や荒れた路面でも快適でしょうし、狭い駐車スペースに入れるのもラクラク。N-BOXの空間効率の高さやスライドドアの乗降性の高さも大きな魅力となります。高齢者(イタリアはヨーロッパで第1位の高齢化社会)や小さな子供の乗り降りにも便利なN-BOXは重宝されるはずですが、そういうクルマはイタリアにはなく、あったら便利だろうな、と考えます。
■ヨーロッパでは貴重なGTカー 日産「フェアレディZ」
2022年に発売された日産の新型「フェアレディZ」。型式は先代モデル(Z34)を踏襲するRZ34ですが、ほとんどの部品が新たに開発された紛れもない新型モデルです。ハイブリッドやBEVがどんどんリリースされるこの時代に、純ガソリンスポーツカーがリリースされること自体非常に嬉しいことなのですが、残念ながらヨーロッパにはこの新型Zが導入される予定はないようです。
ヨーロッパの騒音規制や欧州グリーンディール政策など、数々の規制の影響もあるでしょうが、もともとヨーロッパにおけるフェアレディZの販売数はかなり限定的で、筆者もイタリアではZを一度も見たことがありません。
ヨーロッパでは、クルマに対する考え方が、日本とはちょっと違っていて、どちらかというと移動のための道具という感覚が強い傾向にあります。クルマが好きでスポーツカーに乗っている人はポルシェやマセラティ、フェラーリといった高価なスーパーカーが中心で、フェアレディZのようなGTカーや軽量FRスポーツカーはあまり見かけないのです。
新型フェアレディZはエモーショナルな楽しさを持つ高性能さと、過去のモデルをオマージュしたカッコ良すぎるデザインを持ち、GTカーとしての魅力を十二分に備えたモデル。これをいまの時代に買うことができる日本は、はっきり言って羨ましすぎます。
■まとめ
自動車メーカーは、仕向け地それぞれの嗜好や法律、道路事情など様々な要素にあわせてラインアップを用意しています。コストを削減することや厳しい環境規制への対応など、難しい対応が迫られる昨今ですが、海外で日本車の魅力がより一層広まるといいなと感じます。
Text:Tachibana Kazunori,MMM-Production
Edit:Takashi Ogiyama