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起死回生!? 再起不能!? 「背水の陣」で挑んだクルマたちのその後

 一度見放されたクルマが成功するも失敗するも、すべてはフルモデルチェンジにかかっている。当たるも八卦当たらぬも八卦……ではないけれど、ここではその成功例と失敗例を4つのモデルを題材に紹介していきたい。

文/FK、写真/スバル、日産、マツダ

■内田体制初の新型車=日産キックスがもたらした日産の復活劇と快進撃

起死回生!? 再起不能!? 「背水の陣」で挑んだクルマたちのその後

起死回生!? 再起不能!? 背水の陣で挑んだクルマたちのその後

新世代のSUVとしてデビューしたキックスは、日産車であることを主張する精悍なダブルVモーショングリルや躍動感のある先進的なLEDヘッドランプでスタイリッシュさを表現

 長らく続く業績不振のなか、2019年12月に日産自動車代表執行役社長兼最高経営責任者に就任した内田誠氏。その体制が敷かれて初めて発売された新型車が、2020年6月に販売終了したジュークの後を受けて同年同月に発表されたキックスだ。

 ガソリンエンジンで発電して電気モーターで走る日産独自のe-POWERや運転支援技術のプロパイロットを搭載した次世代のSUVとして大きな話題を集めたキックス。

 エクステリアは日産車の象徴である精悍なダブルVモーショングリルや特徴的なフローティングルーフなどで力強さとスタイリッシュさを表現するとともに、躍動感のある先進的なLEDヘッドランプを採用。

 まさにニッサンインテリジェント モビリティを体現した1台ともいえるキックスは2020年度のグッドデザイン賞をはじめ、RJCカー オブザイヤー 6ベスト、e-POWERがRJCテクノロジーオブザイヤーを受賞するなど高い評価も獲得した。

 デビューから2年後の2022年7月にはマイナーチェンジを実施。

 力強さ、なめらかさ、静かさを大きく進化させた第2世代e-POWERを搭載するとともに、モーターならではの高速・高精度な駆動力制御によって意のままの走りを実現する4WDモデルも追加された。

 加えて、深みのある落ち着いたブラウンの内装などが特徴となるスタイルエディションを設定し、従来はふたつだったグレード構成も2WDと4WDで各々4つに拡大。

 外装もリアコンビランプ一体型フィニッシャーやダーククローム調のグリルフィニッシャーを取り入れ、内装も落ち着きのある深いブラウンを基調とした装いを施すなどワンランク上のミドルクラスSUVといったシックな仕上がりへと昇華した。

 キックスがデビューした後に日産が展開した快進撃はクルマ好きなら知るところだと思うが、その快進撃の起爆剤となったのはキックスだった……というのは少々褒めすぎだろうか?

■いまなお進化を止めない4代目マツダロードスターの“原点回帰”は大成功!

起死回生!? 再起不能!? 「背水の陣」で挑んだクルマたちのその後2005年に登場した3代目NC型ロードスター。2Lエンジン搭載など車格がアップした印象だった

 今や希少なライトウェイトオープンスポーツカーとして絶大な人気を獲得するロードスター。

 そのイメージは爆発的ヒットによって一時代を築いた初代、今ひとつ地味な存在に終始した正常進化モデルの2代目、すべてを刷新したものの人気も評価も今ひとつの3代目、原点に回帰して再び人気を取り戻した4代目といったところだろうか? 

 そう考えると、3代目から4代目へのフルモデルチェンジはロードスター史において大きな分岐点となったことは間違いない。

 3ナンバーボディとなり、新開発の2Lエンジンを採用するなど、それまでのロードスター=ライトウェイトスポーツカーという印象を一変するようなフルモデルチェンジとなった3代目。

 実際には2代目と同等の軽量なボディを実現したにもかかわらず、3ナンバーサイズボディになったがためにライトウェイトオープンスポーツカーのイメージを損なうこととなった。結果、セールスは伸び悩み、2015年4月に4代目に後を託すことに。 

 その4代目はマツダのSKYACTIV技術とデザインテーマの魂動を採用した新世代商品第6弾として登場。

 人がクルマを楽しむ感覚をかつてないほど気持ちいいものにするべく、アルミや高張力鋼板、超高張力鋼板の使用比率を71%に高めるとともに剛性を確保しながら軽量な構造を追求し、先代モデル比100kg以上の軽量化も実現することで見事に原点回帰を果たした。

 その後も毎年のように商品改良を繰り返して熟成を重ね、直近では2023年10月にはマツダ・レーダー・クルーズ・コントロールとスマート・ブレーキ・サポートの新採用やマツダコネクトの進化など、最新の先進安全技術やコネクティッド技術を搭載する大幅な商品改良を実施。

 デビューから9年が経過したロングセラーにして、2022年に過去最高の販売台数を記録したという4代目ロードスターにもはや死角は見当たらない。

■スバルレガシィB4は海外市場を見据えたフルモデルチェンジが日本では仇になった!? 

起死回生!? 再起不能!? 「背水の陣」で挑んだクルマたちのその後2014年10月に発売された、国内におけるレガシィB4の最終モデルは、スバルのフラッグシップモデルにふさわしい質感と機能性をバランスの取れた美しいデザインで表現

 “何よりも気持ちのいい走りができるクルマ”を理想とし、エンジンや車体をゼロベースで開発したレガシィの初代モデルがデビューしたのは1989年2月。

 その後、1993年10月のフルモデルチェンジを受けた2代目とともにセダンは設定されていたが、BOXERと4WDの頭文字を組み合わせたB4の車名がセダンに与えられたのは1998年12月に登場した3代目から。

 4WDロードスポーツをコンセプトに、スバル独自のコアメカニズムを採用して走りのクォリティと操る楽しさを先代から飛躍的に向上させて登場したB4。

 セダンに求められる居住性&快適性と走行性能を高いレベルで融合した高剛性エアロダイナミックボディに、縦置きの水平対向4気筒エンジン+左右シンメトリーのフルタイム4WDシステムを組み合わせてレガシィ特有の優れたハンドリング性能と走行安定性を実現。

 また、一部のモデルには電子制御により瞬時に前後のトルク配分を最適制御するVTD-4WDシステムを搭載した新開発のスポーツシフト(E-4AT)を採用するなど見どころも満点。

 その後に発売されたRS type B、ブリッツェン、RS30、リミテッドII、Sエディションなどの派生モデルとともに人気を博した。2003年5月に登場した4代目も2003-2004日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高い評価を獲得したが……

 2009年5月登場の5代目は従来型に対して室内長、室内幅、室内高を拡大した大きめなサイズに変更され、続く6代目ではターボエンジンがラインナップから消えるとともにボディサイズが先代から全長が50mm、全幅が60mm拡大するなど、北米を中心とした海外市場を見据えたモデルに進化。

 これが完全に裏目に出たことに加え、国内のセダン市場規模縮小もあって2020年に販売が終了。5代目で“B4らしさ”を失ったことから人気を落とし、背水の陣で臨んだ6代目でも復権を果たすことはできなかった。

■S15型日産シルビアは人気復活こそ果たしたものの販売台数が伸び悩んだ悲運の1台

起死回生!? 再起不能!? 「背水の陣」で挑んだクルマたちのその後歴代最終となる7代目シルビア

 史上空前の大ヒットを記録したS13型の後を受けて、1993年5月に鳴り物入りで登場した6代目シルビアのS14型。曲面を多用したスタイリングやK’s、Q’s、J’sの3つからなるグレード構成はS13型を継承したものの、3ナンバーボディへの移行が災いしてデビュー早々からセールスは伸び悩んだ。

 1996年6月のマイナーチェンジではシャープなイメージを前面に打ち出したビジュアルに一新されたものの功を奏さず、後継のS15型にバトンタッチした。

 通算7代目となるS15型が登場したのは1999年1月。S14型の肥大化した大柄な3ナンバーボディはS13型と同様に5ナンバーサイズに回帰してスリム化を図ると同時に、足回りやボディ剛性の強化もしっかりと行われたS15型。

 グレード構成も従来の3つから、ターボエンジンを搭載したスペックRと自然吸気エンジンを搭載したスペックSのふたつに変更された。そのなかでも圧倒的な支持を集めたのがMT車で250ps、AT車で225psを発生した2L直4DOHCターボエンジンを搭載したスペックRだった。

 走行性能の高さを物語る装備も充実そのもので、例えばクロスレシオ化や1~3速にトリプルコーンシンクロを適用した6MT、後輪を操舵させてレーンチェンジや旋回時の車両安定性を高める電動スーパーハイキャスパッケージ、直進安定性と旋回性のバランスに優れるヘリカルLSDなどはその最たるものだった。

 そんなS15型は人気復活を印象づけたが、当時はスポーツカーが衰退しつつあるのと同時にRVブーム真っただ中だった時代。そのため、販売台数は想像以上に少なく、販売期間の差はあれどS14型にも遠く及ばなかった。

 2002年に生産は終了となったS15型だが、FRのピュアスポーツが絶滅の危機に瀕する現代においては驚くほど人気は高く、中古車市場での平均価格も300万円を下らないほどだ。

【画像ギャラリー】再起を賭けたフルモデルチェンジを敢行したクルマたち(14枚)

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