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使い勝手は悪い!?「3ドアSUV」公道での印象は? ランドローバーの希少派“ショートボディ仕様の「ディフェンダー90」”を選ぶ価値とは?

3タイプの全長を設定するランドローバー「ディフェンダー」

 昨今のSUVは、5ドアのロングボディが販売の主流となっています。しかし、その先輩たちが“ヨンク”とか“クロカン”なんて呼ばれていた時代には、3ドアのショートボディも人気を博していました。

使い勝手は悪い!?「3ドアsuv」公道での印象は? ランドローバーの希少派“ショートボディ仕様の「ディフェンダー90」”を選ぶ価値とは?

実用性の高い5ドアモデル「110」にはない、独特の魅力を備えた3ドア・ショート仕様のランドローバー「ディフェンダー90」

【画像】「えっ!…」これが“不便さを上回る魅力”を備えたランドローバーの3ドアSUVです(55枚)

 トヨタ「ランドクルーザー」や三菱「パジェロ」などは5ドアと3ドアを選べたほか、スズキ初代「エスクード」やトヨタ初代「RAV4」のそれぞれ初期モデル、そして当時のジープ「ラングラー」には、3ドアボディしかなかったほどです。今をときめくメルセデス・ベンツ「Gクラス」でも、3ドアのショートボディが選べたほどです。

 いまやSUVでも3ドアを設定しないモデルが大半を占める中、最新モデルでありながら3つの車体長を設定しているのがランドローバーの「ディフェンダー」。イギリスのSUV専門ブランドであるランドローバーにあって、「ディフェンダー」は最も悪路走破性の高いモデルです。

「ディフェンダー」が用意するのは、「90」と呼ばれる3ドアのショートボディ(全長4510mm)と、「110」と呼ばれる5ドアボディ(全長4945mm)、そして、「130」と呼ばれる5ドアボディロング仕様(全長5275mm)の3タイプ。いずれも魅力的なモデルですが、今回はなかでも最も短い希少なショートボディ「90」に試乗してみました。

「3ドアのショートボディだから、リアシートはきっと狭いはず」……そう思いながらリアシートに乗り込むと、きっと驚くことでしょう。「ディフェンダー90」のリアシートは全く狭くないからです。

 その広さは、ロングドライブも全く苦にならないレベルで、感覚的には、ボディが40cm以上も長い5ドアの「110」と同程度の空間が確保されているのですから不思議な気分です。

 その秘密は、リアシートの取りつけ位置にありました。リアタイヤの位置を基準に考えると、「110」や「130」に対し、「90」ではより後方にリアシートが位置しているのです。だからリアシートに座っても、ヒザ回りには十分な余裕があるというわけです。

 3ドア仕様でこうしたパッケージングを選択するSUVは極めて珍しく、居住性を考えると合理的なアイデアといえるでしょう。3ドアを所有する上でのネガをひとつ消してくれます。

 その代わりに、あまり広くないのがラゲッジスペース。「110」と比べると、リアタイヤに対するリアシートの位置が後方にズレているため、ラゲッジスペースの奥行き(リアシートの背もたれを起こした状態)が半分ほどに減っているのです。

 キャンプやウインタースポーツといったアクティブなレジャーにクルマを使おうというユーザーは、このラゲッジルームは違いを理解しておいた方がいいかもしれませんね。

 また、5ドアに対する3ドアのウィークポイントとして挙げられるのが、リアシートへのアクセス性。リアドアがないため、リアシートへのアクセス時はフロントドアから乗り降りする必要があるので少し窮屈です。

 また、フロントドア自体も5ドアより長いので、フロントシートの乗員も狭い場所での乗り降りに気をつかう必要があるでしょう。

●本格的にオフロードを走るなら迷わずに「90」一択

 一方、3ドアの5ドアモデルに対する最大のアドバンテージは、悪路走破性が高まることです。

 アプローチアングルやデパーチャーアングルは「90」も「110」も共通ですが、「90」はホイールベースが短いため、こぶや岩などを乗り越える際に車体下部との接触のしづらさを示すブレイクオーバーアングルが「110」の22.2~27.8度に対し、24.2~30.7度とひと回る上のスペックとなっています。

 本格的にオフロードを走るのであれば、これは大きな違い。極悪路を走ることがあるのなら、迷うことなく「90」一択となるでしょう。

 とはいえ、より大きなブレイクオーバーアングルを求めて「90」を選ぶ人は少数派でしょう。なぜなら「110」でも十分な性能を備えているからです。

あえて3ドアの「ディフェンダー90」を選ぶ理由

 では、3ドア・ショートボディの「ディフェンダー90」を選ぶ理由はどこにあるのか? それは「自由と個性」ではないでしょうか。

使い勝手は悪い!?「3ドアsuv」公道での印象は? ランドローバーの希少派“ショートボディ仕様の「ディフェンダー90」”を選ぶ価値とは?

 かつて日本でも、お洒落な雰囲気を求めてクーペが好まれた時代がありました。「ディフェンダー90」は、いうなれば“イマドキのクーペ”といえる存在なのです。

 クーペはセダンや、ミニバンに比べると後席が狭いとか、乗り降りがしにくいといった実用性でのマイナス点があります。でも、おしゃれはガマン、ではないですが、そういう部分を犠牲にしてでも、美しさやカッコよさを求める風潮がかつての日本にはあったのです。

 同様に、昨今のSUV選びは、実用性重視が主流。だから5ドアがウケるのですね。その中で、普通であれば5ドアの「ディフェンダー110」となるところを、あえて3ドアの「ディフェンダー90」を選ぶ理由。それは、かつてのクーペを選んでいたセンスに通じるものがあるととらえればいいでしょう。

 リアドアがないとリアシートに人を乗せづらいとか、荷物を出し入れしにくいといった実用性の犠牲はあるけれど、やっぱりクーペはカッコいい……「ディフェンダー90」はそんな気持ちで選びたいモデルなのです。ただし「ディフェンダー90」の場合、かつてのクーペに比べれば十分、実用的ですけどね。

●「スカイラインGT-R」のような高性能仕様も設定

 かつてのクーペには、走りが魅力的なモデルもたくさんありました。その点は「ディフェンダー90」も同様。「110」や「130」に比べるとスイスイ曲がる感覚が気持ちいいのです。これも短いホイールベースの恩恵でしょう。

 そして、パワートレインの選択肢が多いのも「ディフェンダー90」の魅力です。

 今回、試乗した6気筒ディーゼルエンジンを搭載する仕様の「D300」は、なめらかさと高回転域での盛り上がりがディーゼルエンジンとは思えないほどの完成度。「ディーゼルはつまらない」ではなく、エモーショナルでエンジンの気持ちよさを語れる、あえて選びたい希有なディーゼルであることに感動しました。

 より手が届きやすい「ディフェンダー90」を望むならば、4気筒のガソリンターボを積んだ仕様「P300」もあります。しかし、上質感においては、やはり6気筒ディーゼルがイチオシです。

 さらに過激さを求めるのであれば、5リッターV8ガソリンエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせ、525psを誇る仕様「P525」も選択可能です。このエンジンはスポーツカーにも積まれるもので、音や高回転域での刺激などはSUVとは思えない過激な味つけ。クルマ好きにはたまりません。

 なかでもショートボディである「ディフェンダー90」の「P525」は、いうなればクーペの「スカイラインGT」というベースモデルに対し、強力なエンジンを詰め込んだ超高性能車「スカイラインGT-R」のような存在だといえばイメージしやすいかもしれません。クルマ好きならきっと、純粋に運転の楽しさにおぼれてしまいそうになることでしょう。

* * *

 今回「ディフェンダー90」を試乗してみて、こういう王道を外したクルマ選びもアリなんじゃないかと感じました。

 きっと多くの人は、つぶしの効く無難な「110」を選ぶはず。でもあえて、脱定番の「ディフェンダー90」を選ぶのも、ハズシの楽しさを味わえるのではないかと思ったのです。

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