「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、メルセデス・ベンツ SL(6代目)だ。
メルセデス・ベンツ SLクラス(2012年:6代目フルモデルチェンジ)
フロントフェンダーのエアアウトレットや、ドアからリアフェンダーへ流れるラインが、初代の300SLを彷彿とさせる。
新開発のフルアルミボディに新世代エンジンを搭載して、第6世代に生まれ変わったメルセデスのフラッグシップ ロードスター「SL」。その優雅なスタイルと十分なパフォーマンスは、誰にも垂涎の的となってしまう。
6代目にフルモデルチェンジされた今回のSLで、いちばんのトピックとなるのが新開発のフルアルミモノコックボディだろう。これによりV6の3.5L 直噴エンジンを搭載するSL350で140kg、V8の4.7L 直噴ツインターボエンジンを搭載するSL550で120kgも軽量化されている。おとな約2名分の重さと考えると、かなりの重量差といえる。
ちなみに、SL350は従来型に比べて最高出力こそ10psおさえられたものの、最大トルクは10Nmほど向上。SL550にいたっては+48psと+170Nmと、どちらもアップされている。なお、両車ともアイドリングストップ機構も備わり、7速ATと組み合わされ燃費も良好だ。特にSL350のJC08モード燃費は12.8km/Lで、エコカー減税対応となっている。このクラスでは減税うんぬんはあまり関係ないかもしれないが、オープンカーであっても環境性能が高いのはやはり嬉しい。
SL350は3.5Lの直噴V6を搭載。ノンターボなので最近のメルセデス車としては珍しく?車名と排気量が一致している。
アルミボディによる軽量化の効果は大きい
ウインドディフレクターを上げてオープンエアモータリングを楽しめば、高速走行でも髪の毛はほとんど乱れない。
今回試乗したSL350はAMGパッケージ装着モデルだったので、V8ツインターボのSL550に標準装着となるABC(アクティブ ボディ コントロール)も備わっていた。路面の状況を瞬時に捉え、高速道路、ワインディングロード、街中と、どんなシチュエーションでも安定して適度なしなやかさを保つ。しかも余分なロールはおさえ、もう見事と言うしかない乗り味だ。多少路面の悪い場所でも、コツンといった突き上げは一度も感じられなかった。
ハンドリング的にも変なクセはなく、大きさを感じずに取り回すことができる。言うまでもなく、鼻先の軽いSL350のほうが全体的に軽快なフィーリングだが、SL550の豪快なV8サウンドを響かせながら、トルクたっぷりにクルージングするという楽しみも捨てがたい。いつもは試乗した際に、どのグレードがいいか迷うことは少ないのだが、今回はまるで購入するので悩むような、どちらもそれぞれに魅力的だった。
今回試乗したSL350のハンドル位置は左右とも選べるが、SL550は左のみ。SL350でも装備にまったく不満はない。
●全長×全幅×全高:4615×1875×1315mm
●ホイールベース:2585mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:V6 DOHC
●総排気量:3497cc
●最大トルク:370Nm(37.7㎏m)/3500ー5250rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・75L
●JC08モード燃費:12.8km/L
●タイヤサイズ:前255/40R18、後285/35R18
●当時の車両価格(税込):1190万円