2022年11月28日、日産自動車はミドルクラスミニバン『セレナ』の新型を発表、同日より販売を開始する。まずはガソリン車から生産、ハイブリッドの「e-POWER」車は2023年春ごろより生産する計画だ。
新型セレナの売りは、刷新された内外装デザインと、新開発した発電専用エンジン、そしてモーター出力を向上したe-POWERだ。また、プロパイロット2.0を搭載した最上級グレードの「LXYON」(ルキシオン)も気になるところ。今回、新型セレナの事前試乗会へと参加し、ステアリングをいち早く握ることができた。新型セレナの全貌について、ご紹介していこう。
【日産 セレナ 新型】「家族のミニバン」進化は期待以上!? 最上級グレードの価格にも衝撃
◆歴代セレナのDNAを受け継ぎつつ、細かな改善を積み重ねた
先代セレナのメリットである広々した車内空間や多彩なシートアレンジはそのままに、マルチコンソールの使い勝手改善し、8人乗りe-POWERを設定(先代e-POWERは7人乗りのみだった)したほか、ヘッドアップディスプレイを装備し、プロパイロットパーキング、リモートパーキングも備え、極めつけはLUXIONにプロパイロット2.0を設定。プロパイロット2.0の設定は『スカイライン』、『アリア』に続く3モデル目だ。コネクティッドを介して「乗る前エアコン」も可能、室内の広さはそのままに、デュアルバックドアのサイズを修正するなど、使い勝手も大幅に改善されている。
商品企画本部商品企画部チーフプロダクトスペシャリストの伊藤潔氏によると、先代セレナでは、「技術」にまつわるイメージが飛躍的に向上した反面、従来のセレナが大切にしてきた「家族と楽しめる」イメージが低かったことが課題だったという。近年の家族は、「ママ中心」から「家族平等」にシフトしつつあり、両親は共働き、子供も習い事など、家族全員がとにかく忙しいため、限られた時間で最大限楽しめるよう、つくりこんだそうだ。
◆正常進化したエクステリア、期待以上の進化を遂げたインテリア
新型セレナは、先代セレナと同様に、2.0リットルガソリン車には2WDと4WD、e-POWERは2WDのみとなっている。グレード構成は、5ナンバー車の「X」と「XV」、3ナンバー車の「ハイウェイスター」「LXYON(ルキシオン)」だ。ボディサイズは全長4765mm×全幅1715mm×全高1885mmで、ホイールベースは2870mm、先代セレナとほぼ同じサイズ感だ。
インテリアも未来感に溢れている。『ノート/ノートオーラ』、アリアなど、昨今の日産車で採用されているメーターディスプレイとセンターディスプレイとを一体化した「モノリス」が採用されているほか、ボタン式の電制シフトを日産車として初採用。操作感はスマホやタッチパッドのようで非常に馴染みやすい。
今回のセレナは女性がターゲットユーザー。アンケート調査によって、女性はスイッチ類が多いことを敬遠しがちだと知り、インターフェイスのスイッチをできるだけ減らしたとのことだが、エアコンの温度操作ダイヤルは、物理ダイヤルが残されており、使い勝手と安全性もしっかり考慮されている。
◆ガソリンはハンドルが軽く滑らか!! LUXIONは「電動車そのもの」
続いて、e-POWERのLUXIONに。基本的には、e-POWERのハイウェイスターと同じだが、プロパイロット2.0の緻密な操舵制御に合わせて、ブリヂストン製のタイヤを装着している(e-POWER ハイウェイスターVはTOYOタイヤ)。
LUXIONのドライブフィールは電動車そのもの。e-POWER特有の、低速域から中速域までスムーズで滑らか、かつ低騒音、路面の上を滑るような加速を味わうことができる。先代比で、16%最大出力がアップしたe-POWER専用の新型1.4リットル直3エンジン(最高出力72kW/最大トルク123Nm)と、出力が20%アップ(120kW/315Nm)したEM57モーターによって、静粛性が高められているのが効いているようだ。
高速道路の合流をイメージした全開加速では、エンジン発電音は車内へと響き渡るが、それでも非常に静かな部類だ。LUXIONは、ドアガラスを遮音ガラスとするなど、ハイウェイスターからさらにノイズ対策が追加されており、2列目も前席以上に静かだ。気になったのは、走行中にバックドア付近で振動があるようで、車内の空気が震えるような印象を受けたこと。まだ量産手前の生産車ということなので、対策を期待したい。LUXIONの車内が異常に静かなので、そうした微小な振動すら気になってしまったのかもしれない。
◆最上級のLUXIONは479万円から!!
価格は、ガソリンのハイウェイスターVが税込326万円、e-POWER ハイウェイスターV が368万円、そしてLUXIONが479万円だ(エントリーグレードのXやXV、セレナAUTECHなどの価格は現時点では未公表)。販売比率はガソリンとe-POWERで6:4、ハイウェイスターは全体の80%、LUXIONはセレナ全体の8%を狙っているという。最量販としたいグレードは「e-POWERハイウェイスターV」だそうだ。
LUXIONが、e-POWER ハイウェイスターVから約100万円アップというのは驚かされるが、国産ミニバンで渋滞シーン以外での走行中の手放し運転可は、新型セレナが初となる(他社は渋滞時のみなどの条件付)。大きな目玉技術だが、安くないだけに、どれほど需要があるのかは未知数といえる。先代のセレナは、フルモデルチェンジ直前まで多く売れた優等生だった。はたして、新型は先代の勢いをそのまま受け継ぐことができるか!?? 今後の展開が非常に楽しみだ。