大谷 達也:自動車ライター
フォルクスワーゲンの現在地として納得の出来栄え 新生「パサート」にニースで試乗
ティグアンとともに最新のVWに
新型パサートの国際試乗会は、先日リポートをお届けした新型ティグアンと同じフランス・ニース周辺で実施された。ふたつの国際試乗会がたまたまニースで行なわれたわけではない。パサートとティグアンの国際試乗会を、同じ場所で、同じ日程で開催したのだ。
画像ギャラリーへ
なるほど、2台に用いられている基本技術はほとんど同じで、たとえばプラットフォームにはMQBの進化版であるMQB evoを用い、パワートレインはミラーサイクル+48Vマイルドハイブリッドの1.5リッター・ガソリンエンジンを始めとする最新仕様を搭載。
サスペンションにはダンパーの伸び側と縮み側を個別に設定できるアダプティブシャシーコントロール“DCC pro”を新採用し、ハンドリングと乗り心地の双方を改善するという。さらには、これまで弱点と指摘されてきたインフォテイメント系も最新のMIB4に置き換えられ、最大15インチのタッチディスプレイを用いるなどして操作性が大幅に改善された。
プレミアムカーと見紛うばかりの精悍さ
デザインの変化も印象的だ。
前述した15インチ・ディスプレイが装備されたインテリアは、このディスプレイの存在感が強すぎてやや散漫な印象を与えかねないが、それでもダッシュボードやシートに用いられている素材の品質感は高く、こちらもクルマのセグメントがひとつ上がったように思えるほどだ。
パサートと言えば今はヴァリアント
話は前後するが、今回の国際試乗会はパサートがテーマでも、パサート・ヴァリアントと呼ばれるワゴンだけが用意されていた。当初、私は「これとは別に、追ってパサート・セダンの発表が行なわれるのだろうか?」と推測していたが、試乗会場で驚くべき話を耳にした。なんと、ドイツを始めとするヨーロッパの主要国では2022年からヴァリアントのみが販売されているというのだ。ちなみにEU圏内でセダンを販売しているのはトルコのみ。そしてグローバルでは中国のセダン需要が旺盛で、ここには専用開発モデルを投入しているとか。いっぽうで、私がパサートというよりもパサート・ヴァリアントの国際試乗会に招かれた事実から推測すれば、日本市場もヴァリアント一本となる公算が大きいとみるべきだろう。
いっぽう、「軽く弾むような乗り心地」は軽快なハンドリングを生み出すのにも役立っているようで、ハンドリングは正確でレスポンスも改善されている。もっとも、それは「従来のフォルクスワーゲンに比べれば」という注釈つきで、決して過敏な反応を示すわけではなく、高速道路ではフォルクスワーゲンらしい落ち着きも感じられることも付け加えておきたい。
プラグインハイブリッドも可能性アリ
エンジンは1.5リッター・マイルドハイブリッド・ガソリン、2.0リッター・ディーゼルともに十分に静かでスムーズ。低速回転域ではむろんディーゼルのほうが力強いが、静粛性や滑らかさではガソリンに軍配が上がる。また、ガソリン・エンジンと組み合わされるマイルドハイブリッド・システムは必要に応じてエンジンをサポートしてくれるものの、普段は控えめで不自然さを感じなかった。
ところで、パサートとティグアンには1.5リッター・ガソリンエンジンをベースとするプラグインハイブリッドも用意されているのだが、関係者の話を聞いていると、パサートに限ってはプラグインハイブリッド仕様が日本に導入される可能性も残されているようだ。こちらは一充電で最大120km(WLTP)のEV走行が可能なほか、パワフルなモーターを搭載している関係でガソリン・エンジンの滑らかさとディーゼル・エンジンの力強さを併せ持つ点も魅力のひとつといえる。
プラグインハイブリッドモデルのシステгѓ
走りの面でもデザイン面でも上質さが高まった新型パサートは、フォルクスワーゲンの主力モデルのひとつとして、同社のイメージを引き上げる役割を担っていくことだろう。