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90年代「軽ワゴン」はなぜ中年男子を魅了するのか? 遊び心満載&使い勝手最高、スチャダラBoseも「今パーフェクトなチョイス」と大絶賛

インスタグラムで購入車披露

 9月の終わり頃、インスタグラムでラップグループ「スチャダラパー」のBose氏が興味深い投稿をしていた。何でもこのたび1995年型のダイハツ・アトレー・ワゴンを購入したという。4WDのターボ仕様。トランスミッションは5速マニュアル。ガラスサンルーフ付。スペックだけを並べると、まるで同年代のスペシャルティカーの様にも思えるユニークな1台である。

【画像】えっ…! これがBose氏購入の「95年ダイハツアトレー」です(計8枚)

 Bose氏いわく、

「90年代の軽ワゴンは、クルマ好きの中年男子にとって、今パーフェクトなチョイスなんじゃないか?」

というもの。このことについて、氏の世代に近い筆者(矢吹明紀、フリーランスモータージャーナリスト)なりにこうした考えに至った理由を考察してみたい。

 さて、まずはスチャダラパーの公式ウェブサイトでBose氏のプロフィルを確認してみた。1969(昭和44)年1月生まれの54歳。運転免許を取得したのがいつ頃だったのかはわからなかったが、仮に18歳になった時点ですぐに取得していたとしたら、1987年頃ということになる。

 時代はまさにバブル前夜。日本国内で販売されていたクルマは、どんなモデルでもどんどん充実装備となり、特にそれは軽自動車で顕著だった。軽自動車のワンボックスバンは、登録上は軽貨物車でありながら、

「装備は乗用車レベル」

というモデルが続々と登場していた。

 この当時、運転免許を取得した人にとってみれば、実家にたまたまあった1台だったとかバイト先にあったとか、偶然とはいえ最初に運転したクルマが軽のワンボックスだったという人も少なくないだろう。

 筆者はこの時点で、既に自動車雑誌業界で仕事をしていた。そこで運転する軽ワンボックスは、小さいながらもさまざまな機械的要素が凝縮されていた。小さなサイズに盛り込まれた多彩な機能。男はこうした凝縮されたものに弱い。

クルマは「趣味の対象」

90年代「軽ワゴン」はなぜ中年男子を魅了するのか? 遊び心満載&使い勝手最高、スチャダラboseも「今パーフェクトなチョイス」と大絶賛

90年代のイメージ(画像:写真AC)

 そして1990(平成2)年、軽自動車はそれまでの550ccから660ccへと最大排気量が拡大される。

 このタイミングで従来の2気筒エンジンを3気筒にグレードアップしたモデルも多く、ターボ仕様が完全に根付いたこともあって走行性能の向上は著しかった。加えて、内装は豪華という程ではなかったものの乗用車モデルに匹敵するクオリティーのものが当たり前となった。

 バブル期のワンボックスワゴンは、その車体の大小を問わず、シートアレンジを変えることができるのは当然の仕様となり、サンルーフやエアコン、クオリティーの高いカーステレオなども選べるようになっていた。

 今回、Bose氏が入手した1995年型のダイハツ・アトレーはバブル崩壊後の1994年に発売された3代目の初期型というモデルだ。装備やデザインはバブル時代の名残を感じることができるものでもある。いい換えれば、現在のトールワゴンスタイルに移行する前の世代の軽ワンボックスとしては、見事に完成されたものだったといっても過言ではない。

 ここまでホメちぎると、「いや、そこまでいうほどのクルマじゃないでしょ」という声も聞こえてきそうだが、今あえてクローズアップするのにはほかにも理由がある。それは、クルマとは実用品であると同時に

「趣味の対象」

でもあるということ。一口に趣味といってもそれは千差万別である。そのなかで、シンプルに「オモチャ」としていじり倒す対象としてはまさにぴったりだということなのだ。

 Bose氏がこのタイミングで1990年代の軽ワンボックスに引かれたというのも、まさしくこの

「遊び道具としての使い勝手の良さ」

があるからだろう。こうした感覚は、筆者も同じ中年男子としてまさしく肌感覚で理解できるのである。

遊び感覚があった90年代

90年代「軽ワゴン」はなぜ中年男子を魅了するのか? 遊び心満載&使い勝手最高、スチャダラboseも「今パーフェクトなチョイス」と大絶賛

 小型軽量で四輪駆動。エンジンはターボ付でマニュアルトランスミッション。

「使い方を間違えなければ、どこでも行けちゃうよね」

と思わせてくれる走るオモチャ。そして何よりも価格がリーズナブル。

 数年前よりは上昇傾向とはいえ、中古車情報サイトでの検索で出て来た近い年式のアトレーは、支払総額

「40万円」

ほど。問題は1990年代となるとさすがにタマ数が少ない点だが、丹念に探せばそれなりにコンディションが良い状態の個体はまだまだ残っている。

 Bose氏は投稿の最後で、米国でのアトレーオーナーの写真を何点かリンクして紹介している。そう、実はこの年代の日本製軽ワンボックスは、米国での人気が高まっている。いわゆる25年ルールを経て安全基準が緩和されたことで、米国内登録が可能となった軽自動車は、かわいらしくも実用性が高い趣味の1台なのである。

 大柄な米国人が小さな日本の軽自動車のどこに引かれているのか。素朴な疑問として抱いている人も多いことだろう。

 実は米国のクルマ好きの多くは車体の大きさや室内の広さなどにさほどこだわりがあるわけではない。西海岸などで行われている日本車を対象としたカーショーなどでは、古い軽自動車に大人4人がフル乗車。それでも楽しそうにしているなどという景色はもはやおなじみである。

 どんなクルマでもそうなのだが、

「コイツを買ったら何か楽しそうなことができるかも」

と思わせることは、商品戦略としても極めて重要なポイントである。どうも昨今のトールボディの軽自動車はユーティリティー(実用性)を追求する余り、こうした遊び感覚が欠けている様に思える。

 今後、Bose氏が愛車とともにどんな楽しいことをするか。注視して行きたい。

まだある遊べるクルマ

90年代「軽ワゴン」はなぜ中年男子を魅了するのか? 遊び心満載&使い勝手最高、スチャダラboseも「今パーフェクトなチョイス」と大絶賛

スバル・ドミンゴ2代目(画像:Tennen-Gas)

 さて、古い軽ワンボックスが楽しそうなのはわかった。だができれば

「もう少し余裕があるクルマ」

が欲しい――こんな感想を抱いた人もいるのではないだろうか。

 大丈夫、そういう人にはスバル・ドミンゴがある。発売されていたのは1983(昭和58)年から1998(平成10)年まで。

 軽ワンボックスのサンバーの車体サイズを少々拡大。初期型では1000cc、モデルチェンジ後は1200ccのエンジンを積んでいた、まさしくちょっと余裕があるモデルだった。1990年代の遊べるクルマ。探せばまだまだある。

 最後にBose氏の原文を貼っておく。

「90年代の軽ワゴンが、車好きの中年男子にとって、今パーフェクトなチョイスなんじゃないかと思い、95年式ダイハツアトレーを購入しました! 5速マニュアルの4WDターボで走りは軽快、イイ感じに未来っぽい絶妙なデザイン、コスミックルーフで屋根が空いたり、大胆な発想のシートアレンジも楽しく、まだまだ景気が良かった時代の贅沢な仕様も嬉しい。もちろん荷物はめちゃくちゃ載るし、都会の狭い路地から高速道路まで余裕の走りにも大満足! そして、安い!笑 インスタで探すと、国内よりも海外の人たちの方が、その魅力にビンビン来てるみたいですね。ボディカラー、タイヤ、ホイールなんかを変えたり、この先のカスタムも無限の可能性あるし、とにかく最高です」

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