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「あの人は今」状態からの脱却に向けe-tronが進化 名前も新たに遅れを取り戻す大幅改良の中身

「あの人は今」状態からの脱却に向けe-tronが進化 名前も新たに遅れを取り戻す大幅改良の中身

1099万円~で販売されるQ8 e-tron。写真はなだらかなルーフラインを持つSportback(写真:アウディ・ジャパン)

BEVはつらいよ……、なんてことを思い浮かべてしまったのは、アウディジャパンが2023年3月に日本導入を発表し、11月にようやく路上を走りだした「Q8 e-tron(イートロン)」を運転したときだ。

【写真】アウディらしいけれど、たしかに新しい。Q8 e-tronのデザインは新鮮гЃ

Q8 e-tronとは、アウディのラインナップにおいて、SUVタイプでは、2022年に日本で発売された「Q4 e-tron」の上に位置するモデル。このあとドイツでは、「Q6 e-tron」の導入も予定されている。

成り立ちは、2019年にヨーロッパで販売開始された「e-tron」のアップデート版。BEVすべてに「e-tron」のサブネームを冠する方針の中で、1台だけ「まんまe-tronじゃまずかろう」と思っていたら、案の定「Q8」が付与された。

車名をみても、4よりも6よりも大きな8だけあって、全長4915mmの車体を、2930mmのロングホイールベースを持つシャシーに搭載している(Q4 e-tronは全長4590mm)。

パワートレインは、2つ。250kWの最高出力と664Nmの最大トルクを発揮し、95kWhバッテリーを搭載する仕様(50 e-tron quattro)と、300kWの最高出力(最大トルクは同一)で114kWhバッテリーの仕様(55 e-tron quattro)。

「e-tronの後継モデル」をうたうQ8 e-tronでは、性能をさらに向上させた。具体的には、バッテリーの正味エネルギー容量を増加させるとともに、空力特性やモーターの効率アップを図っている。

「あの人は今」状態からの脱却に向けe-tronが進化 名前も新たに遅れを取り戻す大幅改良の中身

Sportbackは前後長の短いルーフラインが美しい(写真:アウディ・ジャパン)

バッテリー容量は、「50」で24kWh、「55」で19kWhのアップ。ともにバッテリーの隙間を極力なくし、エネルギー密度向上を実現したという。

アウディが砂漠で試乗会を行う意図

私はe-tron日本導入前の2019年、アブダビの砂漠で行われた国際試乗会に参加している。

このときは、2トンを超える車重をものともしないパワーとともに、カメラをアウトサイドミラーの代わりに使う「バーチャルミラー」や、3つも液晶パネルを配したインストルメントパネルなど、多くのデジタライズされた機能やデザインに驚かされた。

砂漠を試乗の場所に選んだのは、全輪駆動システム「quattro:クワトロ」がBEVでも有効なコンセプトだと証明したかったからだろう。

イメージ的にも、アウディはクワトロと砂漠を結びつけるのが好きなようで、2005年に登場した「Q7」の国際試乗会もドバイの砂漠だった。

それはさておき、e-tronは、便利さ(それとあえての違和感)を含めて、新時代の乗り物としてのBEVのありかたを提示してくれて、印象深いモデルだった。

冒頭で「BEVはつらいよ」としたのは、実はいい意味でのこと。

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日本にはスポーツ仕様の「S line」のみが導入される(写真:アウディ・ジャパン)

今回、マイナーチェンジを受けて車名も変わったQ8 e-tronに乗ってみて、初期モデルで感じた硬い足まわりや、加速性能とハンドリングのミスマッチといった違和感が払拭されていたことを確認したからだ。

BEVがかぎりなくICE(エンジン車)的に洗練されていくトレンドに合わせて、つねに改良を施していくアウディのエンジニアの努力に感心するとともに、「大変だったろうなぁ」と感じ入ってしまった。

「つらかったんじゃないか」と勝手に私が思ったのは、アウディジャパンが「大幅にアップデート」という言葉で表したとおりの改良が、並大抵のことでなかっただろうと思ったからだ。

デザインはエンブレムも新たに

Q8 e-tronには2種類のボディタイプがあり、1つはそのまま「Q8 e-tron」というSUV、もう1つはアウディお得意のクーペライクなボディを持つ「Q8 Sportback (スポーツバック)e-tron」。

ちなみに、Q8のネーミングになる前のオリジナルのe-tronにおいては、スポーツバックの設定は2020年だった。

先に触れた2つのパワートレインは、50が両ボディに、55はスポーツバックのみに組み合わされる。共通するのは、外観の一部変更だ。

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フロントグリルの意匠が変更されたのが新しい。アウディのエンブレムは2次元的表現に変わった(写真:アウディ・ジャパン)

特に目立つのは、「シングルフレームグリル」というアウディ車のアイコン的グリルを継続採用しつつ、ブラックのマスクで囲んだ新しい意匠。

アウディの「4リングス」というエンブレムも、立体的なデザインから2次元的表現に改められた。Bピラーの外側には、モデル名が入る。

内装で目新しいのは、シート地。ペットボトル由来のリサイクル原料を使用する「ダイナミカ」なる素材を使う。

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レザーフリー化が進むインテリア。後席もスペースはたっぷりしている(写真:アウディ・ジャパン)

最近ではペットボトル由来の素材が増えているので体験済みの方もいるだろうが、アウディの素材も、滑りにくいうえに手触りがなかなかよく、好印象だ。

「いいところはそのまま継承する」というコンセプトにより、まるで近代建築のように重層的な立体を組み合わせたダッシュボードはe-tronから受け継いだ。このデザインコンセプトは他に類がなく、本当に美しいと私は思う。

「あの人は今」状態からの脱却に向けe-tronが進化 名前も新たに遅れを取り戻す大幅改良の中身

センターには2つのタッチパネルを設置してデザインと操作性を両立させる(写真:アウディ・ジャパン)

もう1つ継続されてよかったのが、シフターだ。親指と手首の動きだけでギアポジションが選べる形状で機能的、かつ金属的な質感がよくて、“使う喜び”を感じさせてくれる。

「あの人は今」状態からの脱却に向けe-tronが進化 名前も新たに遅れを取り戻す大幅改良の中身

扱いやすいデザインかつ操作感のよいシフター(写真:アウディ・ジャパン)

アウディは、1980年代から素材感にことさら凝りまくってきたメーカーだ。その“よき伝統”が、Q8 e-tronなる次世代(BEV)乗用車にもちゃんと残っている。

伝統を感じる一方で、ハンドリング性能は現代的な水準に追いついていた。アウディが「フラッグシップ電動SUV」とうたうモデルだけある。

フラッグシップがQ8 e-tron全般のことなのかスポーツバックのことなのか、そこははっきりしないが、私が乗ったQ8 Sportback 55 e-tron quattro S line(長い車名だなあ)の操縦感覚は、上質だった。

以前のe-tronは、アウディ初の量産型BEVとあってかモーター独自のトルク感がことさら強調されていた一方、操舵感は重めだった。

車重を意識させつつ、それを大きなトルクでカバーする走行感に、ちょっとマッチポンプ的なところを感じたものだ。

それが、Q8 e-tronではぐっとスムーズでナチュラルな操縦性になっていた。「まったく別モノ」といっていい仕上がりである。他社のBEVと互角の操縦性を得て、私は嬉しくなってしまった。

発進加速は、エンジン車のようにトルクが徐々に積み増されていくような感覚になったし、ハンドルと車体との動きは一体感がしっかりある。2600kgもの車重は、まったく意識させない。足まわりはしなやかに動き、高い静粛性とともに高速域でも快適だ。

「あの人は今」からの脱却

e-tronは、2019年に発売されたときこそ大きな話題を呼んだものの、その後、各社からBEVのSUVが次々に発売され、若干“あの人は今”状態になっていたのは事実。

それが今回の大幅改良で、しっかりトレンドをキャッチアップしたモデルになったといえる。存在感も取り戻せるだろう。

会話型のボイスコントロールなどは、はっきりいって使いにくいけれど、クルマとしての本質的な部分はとてもよくできている。アウディのエンジニアに、改めて敬意を表しておこうと思う。

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