ベストカー本誌で丸30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。第3回目はメガーヌ ルノースポール試乗です!(2019年6月26日号より)
写真/西尾タクト
【画像ギャラリー】メガーヌ ルノースポールはクルマ界のライザップなのはなぜなのだ!!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】(14枚)
■エンジンルームに部品がぎっしりと詰まっている!
私がイメージしているフランス車とは大きく異なるのがルノーメガーヌR.S.гЃ
ルノーのエンブレムを隠したら、日本車、ドイツ車、あるいは韓国車と言われても信じてしまいそうだ。私がイメージするフランス車とは大きく異なる。
フランス車とは、ルノーでいえばトゥインゴやカングーのようなクルマで、古くは5(サンク)などはど真ん中のストライクだったし、シトロエン2CVもそうだった。そんな印象を持っている人が多いのではないだろうか。
一方、外国人が抱く国のイメージは、だいたいが現実とは違うものだ。日本もいまだにサムライやニンジャの国と思っている外国人はいるし、結局のところ、メガーヌR.S.は「今のフランス」をリアルに表現しているということなのだろう。とはいえ、クルマの個性がどんどん世界共通化されていくのは寂しい気もする。
実車は幅が広いこともあって、想像していたよりも大きい印象。ボンネットを開けてエンジンルームを見ると、部品がいっぱい詰まっているのに驚く。最近のクルマにしては珍しくカバーで覆われていないので、いかにも「これぞエンジン!」という眺めなのだ。このメカメカしさが新鮮である。
ヘッドカバーがないエンジンルームはメカメカしさがいい。私が大好きなアルピーヌA110と同じエンジンと聞いて、とてつもなく気分が盛り上がった!
ただし、価格は440万円もするという。このクラスでその価格はかなり高い。ライバルのシビックタイプRは約450万円だそうで、今やこの手のクルマはこのへんの価格が標準的なのかと思うとめまいがしそうだ。
私は「300万円以上のクルマは買わない」と強く決意している。「いいクルマは中古車で!」というスローガンを掲げて生きているのだ。そんなことをページ担当者と話しながら「では、そろそろ試乗に出ましょうか」ということになった。
■しょぼくれたお父さんが山Pに変身した!
「これはヤバい」と走り始めてすぐに気が付いたというテリーさん
走り始めてすぐに、このクルマがただものではないことに気がついた。「これはいい」「これは凄い」「これはやばい」とうわごとのように呟きながらの運転。正直に言って、走る前の段階では「いいね」(←わりと冷静)くらいだったのだが、走りは想像を絶するよさだったのだ!
新橋の焼鳥屋で愚痴っているしょぼくれたお父さんが、山P(山下智久)に変身するようなものではないか。これは魔法といっても過言ではない。
また、足回りも絶妙である。4コントロールという後ろのタイヤも前輪と同位相、逆位相に動かす機構が付いているらしいが、その仕組みはよくわからないものの、結果的に「ただものではない走り」を生んでいるのだから効果絶大ということなのだろう。足は硬いのに乗り心地は悪くなく、そのバランスが絶妙なのだ。
そう考えると440万円は安いとも思えてくる。そのうちの300万円くらいは「走り」にお金をかけているのではないか。まさに「走りオタク」のためのクルマである。
ニュートラルモードでも気持ちいいが、スポーツモードにすると迫力が倍増する! 「ずっと乗っていたい」と思えるクルマだった
今の時代、走りにこだわるユーザーは減少の一途を辿っているが、だからといって、そんな自分を恥ずかしいと思う必要はないし、逆に少数派だからこその利点を考えるべきだ。メガーヌR.S.のようなクルマは世の中にたくさん出てこない。その希少性をありがたがるべきなのだ。
平成から令和に変わり、そのあたりにも変化が訪れるのではないかと思っている。令和の子どもが免許を取る令和20年頃、メガーヌR.S.は「最後のガソリンターボスポーツ」ということで、新車価格よりも高値で取り引きされている様子が私の水晶玉に映っている。
かつて、R34型のスカイラインGT-Rが登場した時、私はこの連載で「格好はおもちゃみたいだが、走りは素晴らしい!」とコメントした。こんなに気持ちいい走りをするとはさすがGT-Rだと唸り、本気で欲しいと思った。そして、GT-Rは今、とんでもない価格で中古車が売られている。
メガーヌR.S.は、あのGT-Rと同じ匂いがする。440万円はけっこうなお値段だが、20年間置いておくつもりなら、絶対に損はしない。私の水晶玉が、そんな未来を予言している。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)