2000年代のカーナビ革命
購入したクルマに、自分好みのカーナビやオーディオを装着してカスタマイズする人は多い。いわゆる「アフターパーツ」だ。クルマ同様、アフターパーツにも流行があり、日々進化している。近年・過去の流行を見てみよう。
【画像】えっ…! これが自動車ディーラーの「年収」です(計12枚)
カーナビが主流になったのは、筆者(宇野源一、元自動車ディーラー)がディーラーで働き始める前の2000年代頃だったと記憶している。その頃と今とでどう変わったかを振り返ってみると、大きなポイントがあることに気づく。
それは、高性能モデルが売られ、人気があったことだ。クルマで聴く音楽がカセットテープからCDやMDなどさまざまな録音メディアに変わり、持ち運ぶものが増えたことで、カーナビ本体に録音できるモデルが一世を風靡(ふうび)した。当時はハードディスクドライブ(HDD)を搭載し、数千曲の録音機能を売りにしたモデルもあった。
このほか、車内で映像を見るためのDVD再生や、地上デジタル放送に対応したモデルもあった。まさに欲しい機能が満載だったのである。機能が増えるにつれてカーナビ本体の価格も上がり、高性能モデルでは20~30万円を超えることもあった。メーカー内には、
「機能を増やせば増やすほど売れる」
という方程式があったのだろう。
音楽のデジタルシフト
オーディオ(画像:写真AC)
元号も令和に移り変わるなかで、アフターパーツとしてのカーナビやオーディオを取り巻く環境は大きく変わった。極端な例かもしれないが、現在販売されている製品を例に見てみたい。
●音楽の聴き方の変化
CDやMDをクルマに持ち込んで音楽を聴く時代は終わりつつある。いわゆるサブスクリプション型の音楽配信サービスが増えたことで、音楽を買う(あるいは借りる)ことから、契約して聴くことに変わってきた。スマートフォンで音楽を聴くことに抵抗がなくなり、カーオーディオに対する考え方が変わってきた。
かつて、カーナビやオーディオにはブルートゥースで接続できるモデルがあり、この機能さえ搭載していれば、録音メディアがなくても自由に音楽を聴くことができた。そこで、カーナビやオーディオでは、CDを読み込むトレーをなくしたモデルも登場している。
●車内エンターテインメントの変化
映像を楽しむ行為も大きく変わった。音楽と同様、DVDやブルーレイがなくても、スマートフォンさえあれば、定額制の動画配信サービスで自由に視聴できるようになった。カーナビにスマートフォン連携機能が付いていれば、スマートフォン経由の動画をカーナビやオーディオのディスプレーで視聴することも可能になった。であれば、不要な機能を省き、スマートフォンとの連携に特化すればいいだけの話である。
車内エンタメの多様化に対応
ディスプレーオーディオ。「DAF11Z」デリカミニ装着イメージ(画像:アルパインマーケティング)
前述のとおり、エンターテインメントを楽しむ利便性が向上し、スマートフォンで完結できるようになった。それにともない、カーナビに搭載されていた機能が廃止され、必要最小限の機能に特化した機種が増えている。ここでは、どのような機能が削減されたのかを確認したい。
●テレビ機能のオプション化
「カーナビ = テレビが見られる」というのは先入観かもしれない。現在でもテレビチューナー内蔵のカーナビは販売されているが、オプションでテレビチューナーを搭載しているモデルもある。車内でテレビを見ない人はもちろんのこと、自宅にテレビがない世帯にも一定の需要があるのかもしれない(NHKは、テレビを受信できる設備を持つ世帯に契約義務を課している)。
●ディスクトレーの廃止
小さな子どもがいる家庭にとって、車内で退屈しのぎにビデオを見られるのは大きなメリットだが、前述のようにサブスクリプションサービスを利用すれば、DVDを持ち歩く必要すらなくなる。音楽を含め“ディスクを読む文化”が失われつつあるなか、カーナビやオーディオではディスクトレーそのものをなくそうという動きがある。
●ディスプレーオーディオの登場
●製品の低価格化
エンターテインメント機能もそうだが、カーナビ機能までなくなるとどうなるかというと、商品そのものの販売価格が下がる。カーナビ機能がなくなることで、地図作製費やライセンス料も削減され、販売価格に転嫁できる。購入するユーザーにとっては、より買いやすい価格となり、Win-Winの関係だ。
1DIN規格機種の出現
カーナビを操作する人のイメージ(画像:写真AC)
余分な機能が省かれることで、これまでカーナビやオーディオを装着できなかったクルマにも恩恵がある。
DIN規格はカーナビとオーディオに採用される規格で、高性能なカーナビは基本的に2DINと呼ばれる比較的大きな設置スペースが必要となる。
特に古いクルマでは、カーナビの半分のスペースである1DINのオーディオシステムしか設置できないケースもあり、オーディオシステムを装着したくてもできないのだ。
しかし、1DINサイズの高性能・大画面ディスプレーオーディオが登場したことで、古いクルマでも最新機能を搭載できるようになった。お気に入りのクルマを長く乗り続けたいが、高性能なオーディオやカーナビはない……という人にピッタリのラインアップだ。