(ブルームバーグ): 年初から好調に推移する日本の自動車株。背景には円安や企業業績のみならず、電気自動車(EV)を敵視するドナルド・トランプ氏が米国の大統領に返り咲いた場合、日本の自動車メーカーの追い風になるとの思惑も渦巻く。
Donald Trump Campaigns In Nevada
理由は簡単だ。トランプ氏が当選すれば現職のジョー・バイデン大統領が注力するEV普及を後押しする政策が大幅に修正され、結果的にトヨタ自動車など現時点でハイブリッド車(HV)やガソリン車、ディーゼル車への依存が大きいメーカーにとってはプラスに働くというものだ。
電動化で後れを取った日本の自動車産業は近年、投資家から将来性に疑問を投げかけられ、株価は低いバリュエーションに甘んじてきた。4年連続で世界最大の自動車メーカーの地位を確保したトヨタですら、EV大手の米テスラの6倍もの台数を売りながら、時価総額はテスラの約6割にとどまっている。
しかし、今年に入りトヨタ株は21%上昇(6日時点)したのに対し、テスラ株は26%下落。日本の自動車メーカーは全般的に強い動きを見せ、ホンダも15%高、マツダも22%高と東証株価指数(TOPIX)の7.3%高をアウトパフォームしている。
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トヨタと米テスラの時価総額推移
24年11月の米大統領選挙の本戦に向け、現在行われている共和党予備選では、序盤からトランプ氏が圧倒的優勢に立っている。多くの投資家は、トランプ氏の政策はさまざまな面で予測が不可能と見るが、バイデン大統領の環境政策が撤回されるという点についてはコンセンサスになりつつある。
第一生命経済研究所の藤代宏一シニアエコノミストは「既にトランプ氏が勝利すると考えている人もいる」とし、「市場はトランプ氏の当選を5分5分、あるいは6割くらいの確率で織り込んでおり、電気自動車政策が転換されることが意識されている」と指摘した。
良好なファンダメンタルズも最近の日本の自動車株の買い材料となっている。EV需要が市場の想定以下となる半面、従来型の高燃費車、特にHVへの消費者の需要は引き続き堅調だ。米大手自動車メーカーのゼネラル・モーターズとフォード・モーターは昨年、EVの需要が目標に届いていないため、数十億ドルを投じた電動化計画の縮小を余儀なくされた。
EV需要鈍化で巨額投資にブレーキ、テスラ含めメーカーに再考迫る
トヨタは6日、半導体不足の解消を受けた販売台数の伸びや為替の円安進行の効果から今期(24年3月期)の営業利益計画を従来の4兆5000億円から4兆9000億円に上方修正すると発表。同日の株価は一時3148円と上場来高値を更新し、時価総額は初めて50兆円を突破した。
トヨタ株最高値更新で時価総額50兆円超え-今期業績予想上方修正
投資家の間では、今から9カ月先の選挙結果を予測して取引するのは時期尚早だとみる向きもある。さらに、選挙結果に市場がどう反応するかも不透明だ。実際、トランプ氏が当選した16年も多くの市場関係者はそもそも同氏の勝利を予想せず、トランプ氏勝利の場合もリスク回避の動きから株価が下落するとの見方が大半だった。しかし、選挙後は減税政策への期待から世界的に株価は急上昇した。
とはいえ、ドル建てで見た東証輸送用機器指数は1月にテスラ株を34%上回り、相対パフォーマンスはテスラが上場した2010年以降で最高となった。記録的な両社の値動きを見る限り、米大統領選が既に市場を動かす材料となっていることは確かなようだ。
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–取材協力:高橋ニコラス.
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