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「メガSUVブーム」欧州で大問題に! 車両の大型化で死亡リスク30%増の報告、パリではSUV規制を問う住民投票も

自動車幅拡大の波

 2024年1月のガーディアン紙の報道によると、欧州連合(EU)と英国で販売される自動車の全幅は毎年0.5cmずつ膨張し続けており、2023年にはEUで販売される新車の半数が全幅180cmを超えるというから驚きだ。

【画像】画面ちっさ! これが42年前の「カーナビ」です(計11枚)

 スポーツタイプ多目的車(SUV)ブームは続いており、近年はメガSUVといわれる車幅200cm前後の新車が相次ぎ販売されている。例えば、

・BMWX5(200.5~201.5cm)

・BMWX6(200.5~202.0cm)

・BMWX7(200cm)

・BMWXM(200.5cm)

・メルセデスベンツGLS(195.5~203.0cm)

・メルセデスベンツEQS(192.5~203.5cm)

・アウディQ8(199.5cm)

・ポルシェカイエン(198.3cm)

・ランドローバーディフェンダー(199.5cm)

・ランドローバーレンジローバースポーツ(200.5~202.5cm)

・VWトゥアレグ(198.4cm)

・ボルボEX90(196.4cm)

・起亜EV9(197.9cm)

・レクサスLX600(199.0cm)

などが代表例だ。

 欧州の路上駐車スペースの横幅は180cmが標準値である。メガSUVの台頭により駐車スペースに収まらない車両が増え続けており、一方で街路の幅員は変わらないことから、他の道路利用者のスペースが年々縮小していることが大きな話題だ。

 確かに、日本でも20年前に比べて細街路などで車両同士がすれ違う際には、一層の注意が必要になったと自分自身(牧村和彦、モビリティデザイナー)も感じるし、今やカローラが横幅170cmを超えた3ナンバーという時代だ。

フロントエンドと死亡リスクの関係

「メガsuvブーム」欧州で大問題に! 車両の大型化で死亡リスク30%増の報告、パリではsuv規制を問う住民投票も

メガSUVの台頭が他の移動手段の走行環境を脅かしている(画像:欧州交通環境連盟)

 車両が大型化していくことの弊害も報告され始めている。2024年1月19日に学術誌サイエンスダイレクトに掲載された米国の研究によると、歩行者が車にひかれて死亡するリスクは、車のサイズが大きくなるほど高まるという。

 ハワイ大学マノア校の経済学研究者ジャスティン・ティンダル氏によると、2016年から2021年の間に米国で発生した歩行者が巻き込まれた交通事故3400件のうち、308件が歩行者死亡につながったとされており、車両のサイズや重量、特に

「フロントエンドの高さ」

と密接な関係があったことを明らかにしている点で興味深い。彼の研究成果では、

「車の前部の高さが10cm高くなると、死亡リスクが22%増加する」

と指摘しており、女性、子ども、高齢者はさらにそのリスクが高かったそうだ。

 同様にベルギーの交通安全研究所では、2017年から2021年までのベルギーの衝突事故データから、車の前部の高さが10cm高くなることで、歩行者や自転車に衝突した際の死亡リスクが30%上昇することが報告されている。

SUVにノー! パリ市民が決断

「メガsuvブーム」欧州で大問題に! 車両の大型化で死亡リスク30%増の報告、パリではsuv規制を問う住民投票も

SUV是非を問う住民投票呼びかけのポスター(画像:パリ市)

 街路や都市の空間は変わらず、車両サイズや重量が増加し続けていくことに対して、行政も黙ってはいない。2024年2月4日の日曜日、パリ市では、SUVに対してイエスかノーかの判断を求める住民投票が行われたことは世界中で話題だ。

 具体的には、パリの一部地域では、重量1.6tを超えるすべてのディーゼル車、ガソリン車、ハイブリッド車と、重量2tを超えるすべての電気自動車の

「駐車料金を3倍とする」

ことの是非を問うものだ。可決されれば、日中は1時間あたり最大6ユーロ(960円)が18ユーロ(約2800円)の大幅値上げとなる。

 投票の結果は即日公表されており、賛成が54.55%で反対の45.45%を上回り、投票率は5.68%にとどまったものの、パリ市民はSUVにノンを突きつけた結果だ。

 アンネ・イダルゴ市長は4日夜、SUVに対する規制を9月1日から実施する意向を明らかにしており、パラリンピックの開催期間中(8月23日~9月8日)に実施されれば、世界で大きな話題になるかもしれない。今回の住民投票では、もちろん、

・居住者

・タクシー

・医療関係者

・障害のある運転手

などは適用除外されるそうだ。

カーゴEバイクの台頭

「メガsuvブーム」欧州で大問題に! 車両の大型化で死亡リスク30%増の報告、パリではsuv規制を問う住民投票も

路上の駐停車スペースが続々と小さい交通のスペースに転換されるパリ(画像:牧村和彦)

 パリだけではなく、フランス・リヨンでも数か月後には同様の住民投票を計画している。またロンドンのサディク・カーン市長も、パリの動向を注視していくと述べている。

 バッテリー式電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の普及が進む欧州では、電動化により車重の増加も続いている。一方で、脱炭素化を進めながら、都市部の移動体自体を小さく軽量化していく取り組みの勢いは止まらない。

 マイクロモビリティ(小さい交通)と呼ばれる、小型でエコな乗り物では、車両1台分のスペースに対して、5~10台のマイクロモビリティを収容することができるため、パリでは電動キックボードシェアリングのサービスが廃止された後も、路上の駐車スペースを次々とマイクロモビリティ用のスペースに転換してきている。

 さらに近年はディーゼルの商用車をカーゴEバイクに転換していく政策も加速しており、日中のパリ市内を歩けば、あちらこちらにて、個性あふれるカーゴEバイク車両で集配している様子がみられる。日本でもカーゴEバイクの普及が進めば、一気に都市内の運転手不足は解決しそうだ。

 膨張し続ける自動車と都市との戦いはこれからが本番ではないだろうか。

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