EV市場のジェンダーギャップ
2023年の上半期、米国において、電気自動車(EV)の購入者の67%が男性で、女性はわずか33%だった(2023年9月27日付、米サイト『エドマンズ(Edmunds)』)。
【画像】えっ…! これが60年前の「海老名SA」です(計16枚)
実際のオーナーではなく、次の車にEVを検討している人々の調査でも、
・男性:71%
・女性:34%
となった。自動車全体の購入者が
・男性:59%
・女性:41%
だったことと比べても差がある。米国では運転免許の構成比では“女性が多い”ので、本来ならば女性の購入者の方が多くなってもおかしくない。それを考慮に入れると、さらに違和感を覚えることだろう。
しかしこれは米国だけで起こっているのでない。英国と欧州の2065人のEVオーナーを調査した際 、女性は10人にひとり(11%)のみであった(2023年7月15日付、英サイト『ディスイズマネー(This is Money)』)。
6.3%が性別を回答せず、0.3%が「その他」を選択したことを考慮に入れても、男性のEVオーナーは
「82.4%」
男女の所得格差
EV(画像:写真AC)
まず考えられる理由のひとつが、
「男女の所得格差」
である。一般にEVは価格が高いので、収入が高くないと買うのが難しい。
独立系EV充電アプリのボネット(Bonnet)の調査では、収入が高い世帯ほどEVを所有する可能性がはるかに高く、ドライバー30.5%が
「年収8万1000ポンド(約1530万円)以上」
であったことを示している(同『ディスイズマネー(This is Money)』)。
オーストリアでも、一般に男性の方が収入が高く、その格差により女性にはEVが手に届きにくいと考えられている(2023年10月27日付、『ABC News』)。
EVを購入する動機、男女の違い
次に、EV購入の動機について、男女で差がある点を指摘したい。
前述のエドマンズの調査によれば、もっとも重要なEVの属性として、男性の回答で1番多かったのが
2番目が「航続距離」(28%)だった。女性は、1番目が
「航続距離」(41%)
であり、「ブランド」は22%だった。またEV購入を考えている、自身の特徴を挙げてもらうと、男女ともにEV購入の動機にまず「テクノロジー好き」(男性45%、女性36%)が挙がったのだが、その次に大きな差があった。男性は
「人より先に手に入れたいタイプ」(31%)
となり、女性は13%だった。
もしかしたら、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車を検討する男性はたった10%で、女性の24%より少ないのも、この新しもの好きな性格が影響しているのかもしれない。なお、女性は、「気候変動と戦おうとするタイプ」と答えた人が33%で、男性の14%と大きな差が出た。
これらの結果だけを見ると、男性が見えっ張りや新しもの好きで、女性が環境にやさしいように見えてしまうが、女性は、
・ガソリン価格の高騰を回避すること
・税額控除
・充電ステーション
・立ち往生した場合
のことなど、
のだという(同『ABC News』)。
安全性の問題
また、専門ウェブサイト「エレクトリファイイング・ドットコム(Electrifying.com)」の創設者であるジニー・バックリー氏は、女性が、公共の充電器を使用する際に、
「安全面に不安を感じている」
可能性を指摘している(同『ディスイズマネー(This is Money)』)。25%近くの人が公共の場で充電する際に危険を感じたことがあるという調査があるからだ。
セルフでガソリンを入れる際も、漏れ等、不安が感じる人がいるかと思うが、EVの場合は電気なので、感電や漏電の心配をする人もいるだろう。雨や雪のときでも感電や漏電のリスクは極めて少ないというが、感覚的に心配になるのかもしれない。
EVのジェンダーギャップを減らす方法
自動車ディーラー(画像:写真AC)
女性がEVを選ぶようにするには、どうしたらよいのか。
根本的に所得格差への対処も必要だが、中古市場が大きくなれば、金額的な面で手が届きやすくなるという面もある。
また、男性よりも現実的な視点を持って車を検討することがわかっているので、女性の持つ不安要素をつぶしていく必要があるだろう。
「女性は男性ほどEVに対して関心が高くない」
として、市場関係者も、女性をターゲットから外しがちである。日本でも、ディーラーはカップルの客の場合、男性に対して熱心に話しがちだと、SNSで女性の不満を目にする。
しかし車を含め、物を購入する決定権は女性が持っていることが多いことを忘れてはいけない。英国においても、自動車購入全般において、女性が決定の
「85%」
に直接影響を与えているというので(同『ディスイズマネー(This is Money)』)、これは世界共通なのだろう。