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【電気自動車開発】テスラやアップルも追い落とす中国企業の競争力 参入から間もない企業がなぜ価格競争で一歩リードできるのか

【電気自動車開発】テスラやアップルも追い落とす中国企業の競争力 参入から間もない企業がなぜ価格競争で一歩リードできるのか

テスラは低価格モデル車の開発を中止すると報じている(イーロン・マスクCEO。Getty Images)

 テスラですら中国企業との競争に苦戦している。株価の動きをみると、過去最高値(場中ベース)は2021年11月4日に記録した414.42ドル(修正株価)。その後下落トレンドを形成しており、4月8日は172.98ドルで引けている。株価が下落した要因として、イーロン・マスクCEOのX(旧ツイッター)買収をはじめとした行動が投資家に評価されていない側面もあるが、やはり、本業での利益率低下、成長期待の修正などによる影響の方が大きいのではなかろうか。

【写真】シャオミが4月3日より発売を開始した電気自動車「SU7」

 米中メディア(ロイター、金融界など)は日本時間4月6日、消息筋からの情報として、テスラは低価格モデル車の開発を中止すると報じている。

 マスク氏は創業間もない2006年、大衆が購入できるEV自動車の開発を長期的な発展目標として掲げていた。現時点で最も安い車種は「モデル3」で、米国での小売価格は3万9000ドル(585万円)だが、さらに安い2万5000ドル(375万円)での販売を目指し「モデル2」の開発を進めていた。しかし、中国のライバル企業がグローバルで1万ドル(150万円)を下回る価格のEV自動車を販売しているといった状況で、撤退を余儀なくされた。

 小型車プラットフォームでは完全自動運転車「ロボタクシー」の開発を続けると宣言しており、8月8日にはそれを公開する予定だというが、タクシー向けにはそれこそ2万5000ドル(375万円)を下回るような低価格車が必要となる。コストダウンを進められない現状をみる限り、こちらの開発も一筋縄ではいかないだろう。

電気自動車開発から撤退するアップルと対象的な小米集団

 中国との競争に苦戦しているのはテスラだけではない。米国メディア(2月28日、ブルームバーグ)によれば、アップルは2月27日、2014年から開発を続けていた電気自動車の開発から撤退する。開発に携わってきた従業員の内、一部は別の部署に異動させるが、600人余りがレイオフされるようだ。AI開発に資源を集中させる方針だが、もう少し早く決断が下せたのではないかといった見方をする市場関係者も少なくない。

 アップルとは対照的なのが、中国の同業企業・小米集団(シャオミ)だ。同社は3月28日、テスラモデル3、ポルシェタイカンを意識して開発を進めてきた電気自動車「SU7」の発表会を開き、4月3日より正式に発売を開始した。車種は標準版、Pro、Maxの3種で、価格は順に21万5900元(431万8000円、1元=20円で計算、以下同様)、24万5900元(491万8000円)、29万990元(599万8000円)である。

 同社が電気自動車の製造に参入すると公表したのは2021年3月。自動車部門の立ち上げ(会社設立)は2021年9月である。その後、2022年8月には自動運転技術に関する映像を公開、2023年12月には技術に関するデータを公表しており、この時点で、目標とした2社の車種を凌駕する性能であることを示している。

先行する米国企業を必死に追いかけた中国企業

 自動車をパソコンやスマホと同じようにOSで管理し、そのOSを支配すれば、そこにいろいろなアプリケーションを載せることによって高収益のプラットフォームビジネスを展開できる。アップルも、小米集団も、ビジネスの広がりに大きなチャンスをかぎ取ったのは同じはずだ。

 自動運転を含め、化石燃料自動車から電気自動車に転換することによるビジネスの飛躍的な広がりをいち早くかぎ取ったのは、テスラ、アップル、グーグルをはじめとする米国勢であり、それを必死に追いかけたのが中国勢だ。

 BYDのように1995年設立といった歴史のある企業もあるが、生産量で大手の一角に食い込む理想汽車、蔚来集団、小鵬汽車などは2014、2015年にゼロから創業している。投資決定にしても、設備投資にしても、生産から販売に至るまでの体制造りにしても、とにかく中国企業は迅速だ。

 アニマルスピリットに富み、知的水準の高い(潜在的な)経営者の数、直接、間接金融を最大限に利用した資金調達力、優秀な研究者、技術者を集める能力といった点で米国企業が中国企業に劣るとは思えない。

 違いがあるとすれば、自国市場の大きさ、製造業全般、特に自動車周辺産業の広がり、質、厚み、安全面を含め開発速度に影響するだろう規制による制約の少なさ(当局さえ認めれば既存の規制に縛られないで事業を展開できる社会システムの柔軟さ)、国家が重点産業として認めることによる総合的な事業環境の良さなどではなかろうか。

 こうした違いは、イノベーションを牽引する産業全般について当てはまる。中国を封じ込めるのは容易ではない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログも発信中。

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