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スカイツリーと東京タワー、スズキの良心、ゴルフに追いつけない日本車に思うこと【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

 2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介したい。

 スズキ スプラッシュ、新しい政権、クラシックカーの文化、「なぜ日本車はゴルフ(VW)に追いつけないのか?」の声に……とりわけ国内のメーカーやクルマへの思いが滲む6本。

(本稿は『ベストカー』2013年3月10日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)

■スカイツリー人気に思う

スカイツリーと東京タワー、スズキの良心、ゴルフに追いつけない日本車に思うこと【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】スカイツリーが本当の意味で東京の新名所となるかは、ちょうど東京タワーがそうだったように、下町の由緒ある地名や名所と上手に折り合っていくことが重要と徳さんは語る(Photo by 神崎拓也@Adobestock)

 新しい年が始まり、1カ月がたった。

 ライトアップされている東京の新名所になっている東京スカイツリーが大人気らしい。634mもあって地上350mの展望デッキに行けるというが、私は行ったことがない。

 私にとって“トウキョウタワー”があれば充分なのだ。第一場所がいい。東京のまん中、皇居にも近い芝公園にある。スカイツリーは下町だ。もちろん下町が嫌いじゃないが、緑の中の芝公園とは比べ物にならないと思っている。

 まあ、人間は高いところが好きだから「登りたいならどうぞ」というところだ。

 ところでその東京タワーは私が大学1年生の時にできた。当時、毎日少しずつ高くなっていく東京タワーはいやでも目に入る存在だった。その時まだ見たことがなかったパリのエッフェル塔はどうなんだろう? と想像した。

 その後何度かエッフェル塔に行き知ったのだが、エッフェル塔にはレストランがあり、それもけっこううまいことを知った。新しいスカイツリーにもレストランがあるらしい。高いところでうまいものを食べさせれば、東京の想い出もいっそういいものになろう。

 ともかく、日本はスペース優先主義でいけばいいとなる。東京は“おのぼりさん”が多いからエレベーターの料金を払って登ればいいとなる。ラーメンでもカツ丼でもいいから、高いところでくわせたいものだ。

 エッフェル塔のレストランは古いタイプの料理だが、オニオングラチネスープはおいしい。フランス映画にもよく出てくるし、有名な犯罪小説『ファントマ』にも出てくる。

 タワー・エッフェルはパリのシンボルだから見えると“あっパリだ”となる。スカイツリーはそんな場所になるだろうか? 一時のはやりものではなく、シンボルになってほしい。私はあの辺りが好きだから、一度出かけてみようと思う。当然は“どぜう”など食ってということになる。浅草が近いのでうまいものを食わせるところは多いはずだ。どじょう、天ぷら、鰻、そば、トンカツなど日本の古典的なうまいものがあるだろう。私は浅草が好きだ。

 東京の下町は下町でいいところがたくさんある。スカイツリーの近くに言問(こととい)というところがあって、なかなか風情がある。うまいものも多い。昔、江戸っ子が“けとばし”といった馬肉のうまい店もある。私はこいつをすき焼き風にして食べる。

 ところが、クルマがなかなか止められない。下町は駐車場が少ないのだ。いっぽう銀座は駐車場がいたるところにある。好きな店の近くにクルマを止められる。

 駐車場問題さえなければ、あの辺りは散策するのが楽しい。業平橋、言問橋、清洲橋。厩橋、蔵前橋、駒形橋……etc。風情のある名橋をめぐるのもいい。

 ちなみに業平橋はもちろんだが、言問橋の言問も在原業平が詠んだ歌『名にし負はば いざ言問はん都鳥 わが思う人は ありやなしやと』からきている。

 残念なことに昨今の日本ではこういう由緒ある地名がどんどんなくなっている。大いに残念である。

■スズキを見直した

(スズキ スプラッシュを所有するユーザーから、スズキ車はなぜ欧州車に負けない乗り味を出せるのですか?と尋ねられて)

スカイツリーと東京タワー、スズキの良心、ゴルフに追いつけない日本車に思うこと【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】スズキ・スプラッシュ…スズキのハンガリー工場で生産され、国産モデルにはないしなやかな乗り味が自慢。販売面は好調とはいえないが、スズキの実力を知らしめる好モデルとしてジャーナリストの評価が高い

*   *   *

 スズキというメーカーは懐が深いですね。スズキは日本でこそ下位メーカーかもしれませんが、世界的に見れば立派なメーカーです。特に小型車作りにおいては、しっかりとヨーロッパで認められており、プジョウやVWがライバルとなっています。

 その特徴をひと言でいうと、「良心的」ということだと思います。使う側に立ってのクルマ作り、それが受け入れられている理由でしょう。

 スズキはもっともっと評価されていいメーカーだと思います。

■W123が元気です

(叔父がW123セダン〈メルセデスベンツ〉に乗っているという読者からの「徳さんディーゼルはやっぱりいいですね」という話題に触れて)

 当時のコンパクトはSクラスを基準にしたものでした。本来のメルセデスのコンパクトは190からでしょう。190Eが登場し、次にEクラスが生まれ、Sと合わせて、S、E、Cとメルセデスの基本ラインアップが固まりました。

 現在はSとCがメルセデスにとって重要でしょう。もっとも昨今はニューカー発表のタイミングでその重要性が決まりますが、必ずメルセデスらしさを感じさせてくれるのはSクラスだと思います。

 さて、1970年代から1980年代のこのメルセデスは当時の“ベンツ”らしさを色濃く残していますね。古いSクラスはアクセサリーが充実していて現在でも実用的で便利ですね。

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(政権が自民党へと移り、「徳大寺さんは新しい政権に何を期待されますか?」と尋ねられて)

 新しい政権に望むことは、自動車をもう少し重く考えてほしいということです。

 もちろん政治にとって自動車は大切で日本の産業のひとつでしょう。しかし、政治家のなかには自動車を重要と考える人が少なく、税金を取ることや単に大きな産業と考えているのではないでしょうか。

 彼らのアタマに自動車のことがないことは残念ですが、これが日本の現状なのです。自動車を考えると資源や交通などいろいろ広がるのですが、もう少し問題意識を持った政治家がいて、議論されてもいいと思いますがね……。

■名車の物納は?

 (読者からの「日本はクラシックカーの文化が育たないなあと嘆いてしまいます」というお便りに答えて)

 T型フォードは私にとってもあまりに古くこれといった想い出がありません。しかし、これを所有した方はその時代をよくご存じなのでしょう。

 確かにこういった貴重なクルマを保管する受け皿は必要で、各地の自動車博物館になるのでしょうが、国も売って少しでも国庫に入れなくてはなりませんから難しいところです。

 古いクルマを見るにつけ、私も70代になりましたから、これから私と同年代のクルマを所有することがあるかもしれません。ちなみに私は1939年生まれです。私にとって思い入れがあるのは、1950年代のアメ車で、特にクライスラー、デソート、ナッシュ、パッカードなどに懐かしさを感じますね。

 当時の日本車はダットサン、トヨペット、オオタ、プリンス、日本オートサンダルなどです。ダイハツもスズキもありましたが、スバル360を一番よく覚えています。

■なぜゴルフに追いつけない?

 (「なぜ日本車はゴルフ(VW)に追いつけないのか?」という読者からの疑問に答えて)

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 日本のクルマがVWゴルフに追いつけない理由のひとつが日本の自動車会社の体質にあると思います。例えばトヨタ自動車がVWゴルフのよさに気づいてしまって、それ以上を求めないのでしょう。みずからがオリジナルでVWゴルフ以上のクルマを求めていないのです。

 何よりトヨタはVWを競争相手に思っていないのでしょう。フィットやノートといった国内マーケットの強力なライバルに対しては、それ以上のクルマを、と考えているのでしょう。

 外国マーケットであってもドイツ以外も多く、北米そのほかの国ではVWゴルフがあまり必要ない国も多いのです。第一国内ではゴルフの販売台数はほかの国産車に比べれば多くありません。

 ゴルフのよさは見る人が見ればわかるし、トヨタ自身も理解しているのですが、問題は日本のユーザーに、ゴルフのよさをわかる人がまだ少ないということです。

■徳大寺有恒の「俺と疾れ!」リバイバル特集

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