同じシリーズで特性の違う3モデルを用意するケースが増えている?
ドライバーの「飛ばし」は、ゴルフの醍醐味のひとつでしょう。「少しでも遠くに飛ばしたい」とは、すべてのゴルファーが抱く願望ではないでしょうか。
タイトリスト「TSR3」、PING「G430 MAX」、PRGR「RS」を打ち比べ。全てシリーズの中で真ん中の「ノーマルモデル」だが、どのような違いがあるのか
飛距離アップを実現する最も簡単な方法は、より高性能なドライバーを手に入れることです。ゴルフメーカー各社は熾烈な開発競争を行い、毎年のように魅力的な新製品を世に送り出しています。もし数年、ドライバーを買い替えていないのなら、新しいギアによるゴルフのレベルアップを考えてみても良いかもしれません。
とはいえ、新製品の数はあまりに多く、どのドライバーを選べばいいのか分からないと悩むゴルファーがほとんどでしょう。実際、同じシリーズであっても特性の違う複数のドライバーをラインナップしているゴルフメーカーは多いものです。
【画像】まずは試打結果! タイトリスト「TSR」、PING「G430」、PRGR「RS JUST」の詳細画像も
この「同じシリーズで出されているドライバー」は一般的に「兄弟モデル」などと呼ばれ、3種類ある場合は「3兄弟」などと表現されます。おおむねどのブランド、シリーズでも、汎用性が高く、幅広いゴルファーにマッチする「ノーマルモデル」を中心に、スピンを抑えることで強い弾道で飛ばせる「LS(ロースピン)モデル」と、つかまりを高めた「D(ドロー)モデル」をラインナップしていることが多いです。
しかし、ゴルフメーカーやシリーズによって対象とするゴルファー層に違いがあるため、あるゴルフメーカーの「ノーマルモデル」はやさしいけど、別のゴルフメーカーではハード……といったことは少なくありません。
テスターを務めたのは、メーカー向けのPRコンサルタントを行うIRONSHELL代表の甲斐哲平氏です。シングルハンデの腕前と、大手シャフトメーカー勤務時代に培った確かなクラブ知識を基に、試打をしてヘッドごとの性能を分析してもらいました。
今回は、「ノーマルモデル」について解説していきます。
タイトリスト「TSR3」は他社なら「ロースピンモデル」
まずは、タイトリストの「TSR」シリーズです。3兄弟の中で真ん中にあたる「TSR3 ドライバー」を試打しました。
男子プロの使用者も多い「TSR3」。「ノーマルモデル」の中ではハードで、叩ける仕様
「『ノーマルモデル』というと、オートマチックに安定して真っすぐなボールを打てるものが多いのですが、『TSR3』は少し違いますね。芯の広さなど、ミスヒットへの強さはしっかりありつつ、いわゆる洋梨型の形状で、ボールを操る感覚が強いヘッドです。スイングで球筋を作っていきたい上級者に好まれるモデルで、他のメーカーであればロースピンモデルになっていてもおかしくない性能ですね」(甲斐氏)
実際に、「TSR3」はPGAツアーの男子プロに使用者の多いヘッドで、やさしい「ノーマルモデル」と呼ぶには少々ハードな仕様になっています。やさしさよりも、構えた時の顔の良さや打感、打音に価値を見出すゴルファーにおすすめのモデルといえるでしょう。
「弾道計測器『トラックマン』を使った計測では、クラブスピード46.8m/sに対して、ボール初速68.7m/s、打ち出し角12.4度、スピン量が2545rpmで、ランを含めたトータル飛距離が281.5ヤードという結果でした。ボールはやや右に曲がるフェード。フェースの反発性能が高く、スピンもやや少なくなりますから、パワーのあるゴルファーが最大飛距離を伸ばせるドライバーになっています」(甲斐氏)
「トラックマン」で計測した「TSR3」の試打データ。やや右に曲がるフェードの強い球で281.5ヤードを記録した
「ノーマルモデル」の中では少しハードな「TSR3」ですが、ヘッド後方の可変ウェイトを動かすことで、自分に合わせたチューニングをすることも可能になっています。例えば、打点がヒール寄りにあたることが多ければ、ウェイトもヒール寄りに動かしてあげると、ボール初速が落ちにくくなるようです。
ボールを上げたいならPING「G430 MAX」
続いて、PING「G430」シリーズの「ノーマルモデル」に当たる「G430 MAX ドライバー」を試打しました。先に試打したタイトリスト「TSR3」とは、どのような違いがあるのでしょうか。
PINGの最新モデル「G430 MAX」は、ショットの方向性、そしてボールの上がりやすさに特長がある
「PINGの『G430 MAX』は、方向性の良さが特長のヘッドですね。ヘッドの慣性モーメントが高く、どう振っても真っすぐ当たる印象で、やさしくボールを飛ばすことができます。弾道データを見て特徴的なのは、打ち出し角の高さ。今回の試打クラブのロフトは10度もしくは10.5度のヘッドで試打をしていますが、『TSR3』の12.4度に対し、『G430 MAX』は15.5度を記録しました。ボールが上がらないと悩んでいるゴルファーは、キャリーを伸ばせる可能性が高いです」(甲斐氏)
同じようなロフトでも、打ち出し角には大きな差が。甲斐氏の場合は少し飛距離をロスしてしまったが、ボールの打ち出しが低いタイプの人はキャリーを伸ばせる可能性がある
「過去のモデルは少しフェースの打感が硬い印象でしたが、『G430 MAX』はソフトな打感になりつつも、爽快に弾く感覚があります。PINGらしいミスを補正する性能もしっかり備わっているので、アベレージゴルファーから中、上級者まで幅広く使えるモデルだといえます」(甲斐氏)
素直な振り心地でやさしさもあるPRGR「RS」
最後は、今回の試打で唯一の国産メーカーであるPRGRの「RS ドライバー」です。「驚初速」をキャッチフレーズに販売されている売れ筋のモデルとなっていますが、海外メーカー2社製品との違いはどのようなものなのでしょうか。
「ヘッドの造形がきれいで構えやすい」と甲斐氏。形状やフィーリングへの配慮は多くの国産メーカーに見られる特徴
「ほど良いつかまりで真っすぐなボールが打ちやすい性能は、PINGの『G430 MAX』と似ています。しかし、振り心地は全く別物で、ヘッドの主張が強く、振りそのものを矯正してくる『G430 MAX』に対し、『RS』は自分が振りたいように振らせてくれる感覚があります。結果に対して重視する海外メーカーと、ゴルファーの感性も重視する国産メーカーという違いがあるように感じました」(甲斐氏)
「RS」は、ヘッド内部の厚みを精密に調整することで、性能を高めたドライバーです。かなり重いウェイトをヘッド後方に配置している「G430 MAX」と比べて、ヘッドの挙動が落ち着いていて、コントロールもしやすいクラブに仕上がっています。
「特筆すべきは初速性能の高さです。以前までは海外メーカーの方がフェース反発など、飛距離性能という面で優位にある印象でしたが、『RS』は同じ条件でボール初速68.5m/sをマークしています。もう国産メーカーと海外メーカーの差は、ほぼなくなったといってよいかもしれません」(甲斐氏)
フェースの反発性能など、飛距離に関わる部分でも「RS」は高いレベルにあった
このように、同じ3兄弟の真ん中のモデルであっても、シリーズごとに特性は全く異なります。PING「G430」はとにかく真っすぐ打てるやさしさに特化していますし、一方でタイトリスト「TSR3」はパワーのある人に向いた操作性とハードさが備わっています。「RS」はちょうどその中間で、性能バランス的には一番「ノーマルモデル」らしいと考えることができます。
どのモデルも基本的な飛距離性能は高いレベルにあるので、振り心地や方向の出しやすさで選ぶと、自分に合ったモデルが見つかるかもしれません。
田辺直喜