◆EV萎え下流ライターも思わず嗚咽する、メルセデス・ベンツ最高級EVの実力
下流自動車ライターでスバルMT車を3台所有するマリオ高野です。今回はメルセデス・ベンツ様の試乗会ということで、スバリスト御用達のSTIドライビングジャケット&ドライビングシャツ、ドライビングシューズに、ファッション市場・サンキで買った激安ジーパン、そして長渕剛モデルの帽子で臨みました! 当初の目当てはSLでしたが……
MERCEDES BENZ
マリオ高野=文 Text by Mario Takano
雪岡直樹=写真 Photographs by Yukioka Naoki
◆カネはないけど買うならSLよりもEVだ!
世界の超高級車を乗り回すために自動車メディアに潜り込んだ自動車ライター・マリオ高野です。この仕事に就いてまず衝撃を受けたのが、ドイツ系高性能車の味わい。若いころは、超合金のように硬いボディや官能的なエンジンサウンドに脳髄がトロけ、鼻水を垂らして嗚咽を漏らすほど感激しておりました。大好きなスバル車を手元に置きながら、いつかはドイツ製のスポーツモデルを増車することを夢見てきたのです。
しかし、10年ぐらい前から高性能なドイツ車に乗っても、以前ほど感激しなくなりました(ポルシェ911を除く)。一応感動はするのですが、昔のように感涙にむせび泣くほどではありません。
洗練度の高さや乗りやすさは秀逸ながら、「ベンツSL」の威厳はやや物足りない
その原因は、自分の感受性の老化もあるでしょうが、スバルをはじめとする国産車の出来が良くなったことで格差が縮まり、ドイツ車にかつてのような特別感をあまり感じなくなったからでしょう。
◆新型のAMG SL43も…
あと、内心ではアホらしいと思っているEV化への流れが欧州で加速しているのも萎えた理由の一つ。スーパースポーツ系も小排気量化と少気筒化が著しく、性能に感心はするものの、死ぬほど無理をしてまで買いたくなるような欲望はかき立てられません。
今回試乗した新型のAMG SL43も、まさにそんな感じでした。性能や質感には文句のつけようがなく、見た目は70年近いベンツSLの伝統を見事に継承。成功者であることを万民に知らしめる効果は絶大な雰囲気にて大変素晴らしいと思いましたが、やはりエンジンが2リッターの4気筒ハイブリッドでは威厳が足りなさすぎます。
◆昔のV12やV8ターボとは違い…
同じエンジンながらよりハイパワーで野蛮なサウンドで吼えるセダンのAMG C43のほうが少し古典的な味わいにて、猛烈にお金をかけたWRXのようで欲しくなりました
十分にパワフルだし、電動化されたターボは反応が鋭く実際よりも大排気量に感じるものの、昔のV12やV8ターボのように畏怖の念を抱くには程遠い薄味。今もエンジンには組み立てた職人の名前が刻まれていますが、「AMGのエンジン職人も昔ほど誇らしく感じてないのでは?」と勝手に想像します。
同じ電気自動車とは思えない! AMG版EVでEV萎えが吹き飛びました
そんななかで度肝を抜かれたのが100%電動車、EQSのAMG版でした。
前後モーターのトルクは950Nmもあり、約2.7tの車体が停止から時速100㎞まで3.8秒で到達する加速力を発揮。EVの超絶大トルクの加速は、ガソリン車には真似のできないほど圧倒的なものの、加速力以外は実に味気なく、2~3回も試せばすぐに飽きるものなのですが、EQS53のフル加速は、何度試しても飽きませんでした。
ハリウッド映画に出てくる悪役の宇宙船のような不気味系サウンドの演出と、最大で9度も曲がる後輪操舵(4WS)により、地球の重力を無視してかっ飛ばせるかのような異次元のハンドリングに嗚咽が漏れました。これぞまさに人類の叡智。かつてのV12エンジン搭載車の代わりになり得ると思えたことに、自分でもビックリです。
欧米の都合に振り回されてる感のあるEV化の推進も、ここまで畏怖の念を抱かせてくれる雲上カーが存在するのなら、イヤイヤながらついていくのも悪くないと思ったのでありました。敬礼!
◆【結論!】
守旧派クルマヲタクをしても、メルセデスの頂点EVには平伏するしかなく、逆にガソリン車の薄味化に落胆したのであります。欧州車の電動化の流れは、止められないようであります!
2300万円もしますが、電気自動車の楽しさと官能性、航続距離の長さ、EVで良いと思える魅力は価格に比例するようです(涙)
AMG EQS 53 4MATIC+
生意気言ってすいません……。泣く子も黙るSLの威厳が足りない!
AMG SL43