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16代目クラウンの大変身「あるべき姿」に戻った訳 第1弾クロスオーバーに乗ってわかった挑戦と革新

16代目クラウンの大変身「あるべき姿」に戻った訳 第1弾クロスオーバーに乗ってわかった挑戦と革新

「これがクラウン?」と思い切ったスタイルで登場したクラウン・クロスオーバー(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

トヨタ自動車は今年7月、16代目となる新型「クラウン」を発表した。事前に自動車業界でささやかれていたのは「次期クラウンはSUVになる」という噂。確かにクロスオーバーと呼ばれるタイプが披露されたが、同時にセダン、エステート、スポーツの3タイプも発表され、どれもが予想されていなかったサプライズで、大きな話題となった。 『間違いだらけのクルマ選び』は、この新型車をどう見るか。著者・島下泰久氏が最新版『2023年版 間違いだらけのクルマ選び』につづったクラウン・クロスオーバー評をお読みいただきたい。

「いつかはクラウン」ともてはやされたのも今は昔

振り返ればクラウンは、この何十年ずっと悩みの中に居たのかもしれない。「いつかはクラウン」ともてはやされたのも今は昔。セルシオが発売された1989年以降、トヨタの最上級車という立ち位置はあやふやになり、試行錯誤を続けるものの殻を破ることができないまま、ここに至った。

【写真】何とも大胆な変身を遂げた16代目クラウン クロスオーバー、セダン、スポーツ、エステ―トなども!

そんなクラウンが16代目となる新型で大変革を遂げた。新たに登場したのはクラウン・クロスオーバー。今後、全4車型で展開されることが明らかにされており、実はセダンも後に登場予定だが、まず世に問われたのはリフトアップされ大径ホイールを履き、バイトーンのボディカラーをまとった、今まで誰も想像したことのないクラウンだったのである。

大胆な変化のきっかけは、ルーティンの内外装の手直し案が社長に退けられたことだったというが、実はクロスオーバーのアイディアは、次世代のセダンのかたちとして検討の俎上に上がっていたという。SUVの乗り降りのしやすさやラフに使える良さを採り入れたセダンならば、新しいユーザーにもアピールできる。若手中心のデザイナー達の間で描かれていた案が、新しいクラウンとして世に出たのだ。

そのデザインは、これが仮にクラウンじゃなかったとしても刺激的なものだ。クーペライクな低いフォルムはボリュームある力強い立体で構成されていて、サイズ以上の存在感がある。このカタチを具現化するのは簡単ではなかったというが、そこはさすがにクラウン。設計や開発、生産部門まで一丸となって突き進んだそうである。

中身も一新された。長く続いたエンジン縦置きFRから脱却して、実績のあるGA-Kプラットフォームの最新版を採用。エンジン横置き、後輪は電気モーター駆動というレイアウトに刷新されたのだ。

その一番の理由は広い室内空間を確保するため。ドライバー含む乗員全員を大事にするのがクラウンの本来の姿であり、それならパッケージング効率の良いGA-Kを使おうというのも至極納得である。守るべきは形態ではなく精神だろうという話だ。

しかも今の時代、後輪はモーター駆動が使える。実際、高出力モーターを使ったE-Fourアドバンスト、そしてFFベースとしては奢った新開発のリアマルチリンクサスペンションなどがあってこそ、この大変革が実現できたのは間違いない。

では室内はと言えば、空間は広々していて、特に後席は足元も頭上も十分に余裕がある。ドアトリムがやや平板で素っ気ない感じもするが、全幅を1840㎜に留めながらも最大限に居住性を稼ぎ出そうとしているわけだから、贅沢を言っちゃいけない。華美なイルミネーションなども備わらないが、それもリラックスして過ごしたい自宅をそうやって飾り立てたりしないよねという話である。

クラウンが若返った

パワートレインは2種類。ひとつはこのE-Fourアドバンストを使ったもので、前輪を直列4気筒2・4Lターボエンジンと1基の電気モーター、6速ATという組み合わせで、そして後輪を高出力モーターで駆動するデュアルブートハイブリッド。もうひとつは2.5Lエンジンを使った2モーターハイブリッドのTHSⅡにE-Fourという、トヨタでは定番のものである。

前者のパワートレインのRSで感じたのは、まさしくクラウンが若返ったということだった。無理に若ぶってスポーティに振る舞うというのではなく、身も心も鍛え直してシャキッとした、そんな感じだ。

実際にボディは剛性感高いけれど決して重々しくはなく、まさにカチッとした良いモノ感をたたえている。ステアリングフィールがしっとり饒舌なのもそんな好印象を倍加しているのは間違いない。

コーナリングも、FFベースなんてことは関係無く快感に満ちている。ニュートラルな旋回感覚には標準装備の後輪操舵も効いていて、修正少なくピタッと狙ったラインに乗せていける。新しいリアサスペンションのおかげだろう、ピタッとした位置決め、高出力のリアモーターを活かした緻密な駆動力制御も大きな役割を果たしているはずだが、何か刺激的というのではなく普通のレベルが際立って高い。そんな自然で、かつ高次元のフットワークである。

乗り心地も非常に良い。とは言ってもフワフワしているわけではなく、しっかりとしたボディを土台にサスペンションが正確に仕事をしている感覚で、動きの質は高い。これを225サイズの21インチという細身・大径のタイヤで実現しているのだからなかなかのものだ。余計な雑味の無い高い静粛性も相まって、寛げる室内空間となっている。

それはリアシートも同様で、リフトアップの分、目線が高くなって視界が良く感じられるし、クッションは肉厚だしポジションも適切。静粛性も高く、背は高いのに目線の上下左右へのブレが少ないので、心地よく過ごすことができるのだ。

挑戦し、革新してきた

エンジン音とパワー感がリンクした一体感のある加速が味わえる新しいハイブリッドシステムも上々の感触。アクセル踏み始めのレスポンスの良さはまさに電気モーターの恩恵で、これまた小気味良い。更に、アクセルを強く踏み込むとエンジンと前後の電気モーターがフルに働いて、力強く速度が高まっていく。動力性能だけの話ではなく、打てば響くレスポンスという意味でもスポーティで良い。

THSⅡ+E-Fourのモデルも基本的な走りの上質感は変わらない。全体にもう少し穏やかになるが、これはこれでアリ。特に19インチタイヤ仕様は、従来のクラウンのユーザーも満足に違いない。

新しいクラウンは見た目、大胆に変わった。しかしその哲学は、案外昔とそう違わないのかもしれないなとも思う。対米輸出を敢行したり、新しい技術を真っ先に採り入れたり、昔のクラウンは間違いなく挑戦し、革新してきたクルマだ。確かに内装も豪華だったりしただろうが、何よりもその精神こそがブランド力を押し上げ、プレミアムな存在にした。そう言っていい。

その精神に立ち返り、そして新しい表現で描き出したプレミアムカーが新型クラウンである。そう思ったら、すべてが腑に落ちた。時間はかかったが、クラウンはあるべき場所に戻ってきたのである。

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