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カーマニアなら当然知ってる? イタリアのクラシックカー認定制度「マセラティ・クラシケ・プログラム」とは何か

20年経過したモデルが対象

 歴史ある自動車メーカーにとって、数十年前に生産し販売した後、現在もユーザーの下で稼働しているクルマ、すなわち動体で保存されている車両は、何物にも代え難い宝石のような存在と表現しても過言ではない。

【画像】「マセラティ・クラシケ・プログラム」で認定された美しい「ギブリ4.7クーペ」の画像を見る(6枚)

 現在、世界各国で開催されているクラシックカーを扱ったコンクールデレガンス(優雅さや美しさを基準とした車のコンクール)やオークションなどは、そういったクルマにとっての、ひのき舞台である。しかしその一方で、「クラシックカー」に該当するためには何が必須なのかという根源的な条件となると、イベントやその主催者によっては曖昧という問題もある。そうした中、イタリアの伝統ある自動車メーカーであるマセラティは、企業として自社が認定する「クラシックカー」について明確な指標を示している。

 2021年12月、マセラティは、クラシックカー公式認定プログラムをスタートさせた。「マセラティ・クラシケ・プログラム」と呼ばれるこのプログラムは、これまでに生産販売されたマセラティ車の中で、発売から20年を経過したモデルについての保護と保存、そしてクラシックカーとしてのマセラティを文化財として活用する上での活動をサポートすることを目的としたものであり、プログラムの認定第1号車として、イタリアで保存されている1969年型マセラティ・ミストラル3700が認定を受けている。

 そして、2022年9月13日、このプログラムにおける、日本で保存されている車両の第1号として、1968年製のマセラティ・ギブリ4.7クーペが正式な認定を受け、「サーティフィケーション・オブ・オリジナリティ(Certification of Originality)」を取得した。

イタリアに実車送って査定

カーマニアなら当然知ってる? イタリアのクラシックカー認定制度「マセラティ・クラシケ・プログラム」とは何か

細部にわたってチェックする(画像:マセラティジャパン)

 この認定を得るためには、多くの過程を経なければいけない。まず日本のヘッドクオーターに申し込みを行い、そこで車両所有者を交えて、車両に関する詳細な内容確認履歴書類を作成することから始まる。ここをクリアして認定を得る可能性があると判断されると、車両はイタリアのマセラティ本社に送られ、そこでは事前に作成した内容確認履歴書類と照らし合わせながら、詳細な査定が実施される。

 ここをクリアすると、次に控えているのは実車の検査であり、マセラティ・クラシケ・プログラム専用のワークショップ内で、熟練のスタッフによって車両のコンディション、消耗度、オリジナル度等が詳細に検査される。ここで実施されるのは、オリジナルの図面や製造当時の写真、製造者ならではの貴重な資料を活用した極めて精密な検査であり、細部に至るまで製造当時に忠実なオリジナルであると確認された車両は、メカニックの手で完璧な状態にチューニングされた上で、「サーティフィケーション・オブ・オリジナリティ」として認証されるというわけである。

 ちなみに、日本で初認定を受けたマセラティ・ギブリ4.7クーペは、1966年のトリノ・モーターショーで発表された後、1967年に市販が始まった。1960年代のマセラティを代表する重要なアイコン的モデルであり、1973年に初代モデルの生産が中止されるまで、世界的に高い人気を誇った重量級の大排気量グランツーリスモでもあった。

 主要スペックは、310hpを発生する4.7リッターDOHC V型8気筒エンジンをフロントに搭載、0-100km/h加速は約6.5秒、最高速度は270km/h。ボディーデザインは、イタリアで最も有名な自動車ボディーデザインスタジオ「カロッツェリア・ギア」によるものであり、実際にデザインしたのは、当時ギアに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロである。

 マセラティ・ギブリは生産が中止されるまでに、ルーフをソフトトップとしたスパイダーや高性能型のSSを加えた。その間、一貫してマセラティのフラッグシップであったことは言うまでもない。

「生産当時の姿」にこだわる

 ちなみにギブリが生産されていた時期は、後にわが国で巻き起こる、いわゆる「スーパーカーブーム」とは数年間のずれがあったことから、スーパーカーブームの真っただ中でも、その存在はごく一部の熱心なマニアに知られていただけだった。

 スーパーカーブームの中でのマセラティといえば、それはミッドシップのボーラやメラクSSであり、ギブリはまさに知る人ぞ知る存在だった。スーパーカーにはさまざまな魅力があるが、その中でもこうした「あまり知られていないこと」もまた重要な要素であるというのは、あながち的外れではあるまい。

 なお、マセラティ・クラシケは、クラシックモデルの認定の他に、そうしたクラシックモデルの補修に必要なスペアパーツの再生産も担っている。いずれも生産当時のオリジナル設計に忠実に再生産された純正パーツであることは当然であり、加えてこれらの再生産パーツを使ったさまざまなレベルでのレストアも可能となっている。

 オリジナルを生産したメーカーによるレストアこそは、あらゆる条件を鑑みて、最も理想的なプログラムであり、今後はこうしたサービスを経て新たなサーティフィケーション・オブ・オリジナリティの認定を受けたマセラティのクラシックモデルが続々と登場してくることが期待できるだろう。そしてその中には、わが日本で保存されている車両もきっとあるに違いない。

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