20年経過したモデルが対象
歴史ある自動車メーカーにとって、数十年前に生産し販売した後、現在もユーザーの下で稼働しているクルマ、すなわち動体で保存されている車両は、何物にも代え難い宝石のような存在と表現しても過言ではない。
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現在、世界各国で開催されているクラシックカーを扱ったコンクールデレガンス(優雅さや美しさを基準とした車のコンクール)やオークションなどは、そういったクルマにとっての、ひのき舞台である。しかしその一方で、「クラシックカー」に該当するためには何が必須なのかという根源的な条件となると、イベントやその主催者によっては曖昧という問題もある。そうした中、イタリアの伝統ある自動車メーカーであるマセラティは、企業として自社が認定する「クラシックカー」について明確な指標を示している。
そして、2022年9月13日、このプログラムにおける、日本で保存されている車両の第1号として、1968年製のマセラティ・ギブリ4.7クーペが正式な認定を受け、「サーティフィケーション・オブ・オリジナリティ(Certification of Originality)」を取得した。
イタリアに実車送って査定
細部にわたってチェックする(画像:マセラティジャパン)
ここをクリアすると、次に控えているのは実車の検査であり、マセラティ・クラシケ・プログラム専用のワークショップ内で、熟練のスタッフによって車両のコンディション、消耗度、オリジナル度等が詳細に検査される。ここで実施されるのは、オリジナルの図面や製造当時の写真、製造者ならではの貴重な資料を活用した極めて精密な検査であり、細部に至るまで製造当時に忠実なオリジナルであると確認された車両は、メカニックの手で完璧な状態にチューニングされた上で、「サーティフィケーション・オブ・オリジナリティ」として認証されるというわけである。
ちなみに、日本で初認定を受けたマセラティ・ギブリ4.7クーペは、1966年のトリノ・モーターショーで発表された後、1967年に市販が始まった。1960年代のマセラティを代表する重要なアイコン的モデルであり、1973年に初代モデルの生産が中止されるまで、世界的に高い人気を誇った重量級の大排気量グランツーリスモでもあった。
主要スペックは、310hpを発生する4.7リッターDOHC V型8気筒エンジンをフロントに搭載、0-100km/h加速は約6.5秒、最高速度は270km/h。ボディーデザインは、イタリアで最も有名な自動車ボディーデザインスタジオ「カロッツェリア・ギア」によるものであり、実際にデザインしたのは、当時ギアに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロである。
「生産当時の姿」にこだわる
ちなみにギブリが生産されていた時期は、後にわが国で巻き起こる、いわゆる「スーパーカーブーム」とは数年間のずれがあったことから、スーパーカーブームの真っただ中でも、その存在はごく一部の熱心なマニアに知られていただけだった。
スーパーカーブームの中でのマセラティといえば、それはミッドシップのボーラやメラクSSであり、ギブリはまさに知る人ぞ知る存在だった。スーパーカーにはさまざまな魅力があるが、その中でもこうした「あまり知られていないこと」もまた重要な要素であるというのは、あながち的外れではあるまい。
なお、マセラティ・クラシケは、クラシックモデルの認定の他に、そうしたクラシックモデルの補修に必要なスペアパーツの再生産も担っている。いずれも生産当時のオリジナル設計に忠実に再生産された純正パーツであることは当然であり、加えてこれらの再生産パーツを使ったさまざまなレベルでのレストアも可能となっている。
オリジナルを生産したメーカーによるレストアこそは、あらゆる条件を鑑みて、最も理想的なプログラムであり、今後はこうしたサービスを経て新たなサーティフィケーション・オブ・オリジナリティの認定を受けたマセラティのクラシックモデルが続々と登場してくることが期待できるだろう。そしてその中には、わが日本で保存されている車両もきっとあるに違いない。