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6代目ステップワゴン、待望の快作なのに惜しい訳 デザイン良好、室内空間快適、走りも見事なのに

6代目ステップワゴン、待望の快作なのに惜しい訳 デザイン良好、室内空間快適、走りも見事なのに

AIR(左)とSPADAの2タイプで展開する6代目ステップワゴン(写真:Honda Media Website)

ホンダは今年春、6代目となる新型「ステップワゴン」を発売した。1996年に発売された初代モデル以来、ファミリー層を中心に根強い支持を受けているホンダ主力車種のひとつだが、先代モデルは販売面で近年苦戦していた。 『間違いだらけのクルマ選び』は、この新型車をどう見るか。著者・島下泰久氏が最新版『2023年版 間違いだらけのクルマ選び』につづったステップワゴン評をお読みいただきたい。

初代~2代目辺りを彷彿とさせる直線基調

ステップワゴンが帰ってきた。そんな風に感じた人も少なくないのではないだろうか。フルモデルチェンジを受けて6代目となったホンダ・ステップワゴンは、まさに初代〜2代目辺りを彷彿とさせる直線基調のシンプルなデザインで登場した。

【写真】ここでおさらい!6代目「ステップワゴン」の2つの顔

新たにAIR(エア)と名付けられたベースモデルと、精悍な仕立てのSPADA(スパーダ)が用意されるが、らしいのはやはりAIRの方だろう。外観はクリーンにまとめられ、インテリアは明るい色調で温もり感を演出している。

いずれも先代で採用したわくわくゲートの設定は無し。さほど重宝されなかったというだけでなく、左右非対称のリアビューが嫌われたそうだ。ユーザーの気持ちというのは、本当に難しい。

オデッセイが販売終了となった分をカバーする意味もあってか、ボディは大幅に拡大された。全長は短い方のAIRでも4800㎜に達し、全幅も1750㎜まで広げられた。その分、室内空間は大幅に拡大されていて、実際にホンダ史上最大の広さを実現したと謳われている。しかしながら運転席に座ると、良い意味でさほど大きさを感じないで済むのは、取り回し性が悪くなったと敬遠されないよう、視界の確保が徹底的に行われたからだろう。

サイドウインドウ下端のいわゆるベルトラインを前下がりにせず水平にして、フロントウインドウ下端のラインと繋げることで車両感覚を掴みやすくしているし、フードもちゃんと視界に入る。また、フロントピラーは手前に寄せられ形状も変更。ドアミラーをピラーではなく外板に取り付けるなどして、死角を徹底的に排除しているのだ。とにかく実際に乗り込んでみれば、心地よい開放感と、四隅の把握のしやすさ、すぐに感じられるのは間違いない。

2列目キャプテンシート仕様にはロングスライド機構が備わるが、今回新たに左右スライドも追加された。そう、ノア/ヴォクシーがヤメた機構を、こちらは新たに追加してきたのである。操作が煩雑にならないようにという配慮だろう。左右も前後もひとつのレバーで操作できるようになっているが、これ自体が若干使いにくい感はなきにしもあらず。どちらがユーザーに響くかは興味深い。

尚、SPADAでは2列目にオットマンが標準装備とされる。また、2列目ベンチシートの8人乗りはプレミアムライン以外の設定となる。

全長の余裕を活かして3列目の居住性にも力が入れられている。左右分割してフロア下に収納できるのは従来通りだが、クッションは厚みが足され、背もたれは肉厚にされるとともに高さも増やされた。

それだけではない。今回は1列目から2列目、2列目から3列目のシートの高さの差をより拡大して、全席優れた視界を確保している。これが水平にされたベルトラインと相まって乗り物酔いの防止にも繋がっているのだそうだ。視界が悪いと姿勢が乱れ、頭部をしっかり支えられなくなるというわけである。

車体剛性は高く、走りっぷりも見事

車体の基本骨格は先代からの継続使用となるが、サイドシル断面の大型化、開口部周辺への構造用接着剤の塗布などによりボディ剛性を強化し、サスペンションのストロークを伸ばすなど、かなり広範囲に手が加えられている。その恩恵は明らかで、車体の剛性感はとても高い。大入力にもハコが歪む感じがまったくしない終始カチッとした印象で、良いモノ感に満ちている。サスペンションはソフトな設定だが、シャシーがしっかりしているおかげでフラフラしたりせず、気持ち良く走ることが可能だ。

しかも今回、例えばリアシートを収納するフロア下の遮音、吸音を徹底するなど、静粛性にも相当配慮されている。2列目、3列目はフロアのブルブルも無く、静かでとても快適。洗練度は図抜けている。

パワートレインは1.5Lターボエンジンと、2モーターハイブリッドのe:HEV。4WDは前者のみの設定である。前者は、エンジンは内部まで手が入れられて発生する音量を5dBも下げたということもあり軽快によく走る。無論、より力強くスムーズなのは後者。車体の良さと引き立てあって、このセグメントでは図抜けた乗り味を実現している。但し敢えて言うならば、ライバルと比較すると燃費はもう少し頑張る余地がありそうだ。

先に記した通り、プラットフォームは先代からの継承だが、それだけに良い所も要改善の箇所も、よく把握できていたというのが、この質高い走りを実現できた要因だという。新しければすべて良いというわけではないのである。

そんな風に室内空間の快適さに配慮が行き届き、走りっぷりも見事な新型ステップワゴン。惜しいのはグレードと装備の関係性だ。個人的には、AIRのたたずまいに惹かれるが、装備を見るとステアリングはウレタン巻きだし、エアコンはSPADAの3ゾーンに対して左右調整式。シートヒーターもパワーバックドアも、全列USB端子もブラインドスポットインフォメーションも備わらない。しかもAIRにはオプション設定すら無いのだ。

新しい機能やおもてなし、選ぶ楽しみが手薄

AIRのデザインでSPADAの中身なら……そんな声もちらほら聞こえてくる。AIRにもプレミアムラインを作ればいいと思うのだが、せめてセットオプションくらい用意してもいいだろう。先代が不振だったので、バリエーションを広げたくないという営業的理由は分かるが、これでは興味を持った人も離れかねないのではと心配になる。

また、ノア/ヴォクシーが新型で採用してきたリモートパーキングだったり、ハンズオフまで可能なACCのようなものも用意は無い。価格も、同じ装備レベルで見れば決して高くはないが、グレードを絞って廉価版を設定していないだけに、なんとなく高く見えてしまっている。

総じて見るに、クルマとしての基本性能、ミニバンとしての基本性能を大幅に引き上げてきた一方で、ユーザーにとっては実は同じかそれ以上に重要な、新しい機能やおもてなし、更には選ぶ楽しみといった要素が、ステップワゴンは手薄なのだ。クルマ自体の実力というよりは、その辺りの拙さこそがライバルの後塵を拝してしまう一番の要因ではないかと思う。迅速なリカバーを期待したい。

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